民事裁判と刑事裁判の違い!両方同時に起こすことは可能?

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この記事の執筆者

福谷 陽子(元弁護士)

「裁判」というと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?

自分が「原告」となって相手を訴える裁判でしょうか?

それとも、検察官が犯罪者(容疑者、被告人)を訴える裁判でしょうか?

実は、上記の2つの裁判は同じ「裁判」とはいえ、全く異なるものです。

裁判には「民事裁判」「刑事裁判」の2種類があります。

たとえば、名誉毀損のように「民事裁判」と「刑事裁判」の両方が起こりうる事件もあり、一般の方は混乱してしまいがちです。

今回は民事裁判と刑事裁判の違いや両方同時に行われることがあるのか、裁判を起こすためにはどうしたら良いのかなど、わかりやすく整理していきます。

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民事裁判と刑事裁判

そもそも民事裁判と刑事裁判はそれぞれどのようなものなのか、基本を確認しましょう。

民事裁判とは

民事裁判は、民間人同士で行われる裁判です。

民間人同士で私的な法律トラブルが発生したとき、裁判所に権利義務を判定してもらって解決するために裁判をします。

たとえば、相手が貸したお金を払ってくれない場合、家賃を支払わない場合、土地を不法占拠されている場合、契約違反行為をされた場合などには民事裁判を起こして権利を実現します。

民事裁判を起こす人を「原告」、起こされた人を「被告」と言います。

民事裁判では、原告と被告のどちらが正しいというものでもありません。

原告が無茶な主張をしているケースも多々あります。

原告が勝訴すれば、裁判所は被告に対して金銭の支払命令や土地の明け渡し命令、不動産登記を移転しなさいという命令など、さまざまな命令を下します。

原告が敗訴したら、裁判所は「請求棄却」の判決を下して民事裁判は終了します。

刑事裁判とは

刑事裁判は、犯罪者を裁くための裁判です。

犯罪が行われたと疑われるとき「本当に犯罪が行われたのか」「犯罪が行われたとしたらどの程度の刑罰を与えるべきか」を裁判で判断します。

訴えるのは「検察官」であり、民間人ではありません。

警察官すら訴える権利はなく、刑事裁判で訴える権利を持つのは検察官のみです。

訴えられるのは「被告人」です。

被告人とは、「罪を犯したと疑われている人」です。

一般には「容疑者」と言われることも多いでしょう。

なお、容疑者は法律用語ではなく、法律上は「被疑者」「被告人」と言います。

起訴前の逮捕勾留段階では「被疑者」、起訴されて刑事裁判になったら「被告人」になります。

このように、刑事裁判では登場人物をはじめ、民事裁判と全く異なります。

また、刑事裁判で裁判所が判断するのは「犯罪が行われたかどうか」「行われたとしたらどのくらいの罪を適用すべきか」です。

判決では、有罪か無罪かということと、有罪の場合の刑罰が決まります。

刑罰の内容には罰金や禁固、懲役刑や死刑などがありますし、懲役や禁固なら執行猶予がつけられる可能性もあります。

日本の刑事裁判は有罪率が99.9%以上ですが、中には無罪判決が出るケースもあります。

民事裁判と刑事裁判の違い


以下では、民事裁判と刑事裁判の違いを確認していきましょう。

訴える人と訴えられる人の違い

まずは「当事者」が大きく異なります。

民事裁判の場合
民事裁判の当事者は、訴える人も訴えられる人も両方「民間人」です。

訴える人を「原告」訴えられる人を「被告」と言います。

どちらが正しい、悪いというわけでもありません。

刑事裁判の場合
刑事裁判の場合、訴える人は常に「検察官」であり国家機関です。

一方、訴えられるのは常に「被告人」であり、犯罪行為をしたと疑われている人です。

マスコミなどが刑事裁判で訴えられている人を「被告」というので、「被告」と思っている方がいますが、「被告」は民事裁判で訴えられた人であり、刑事裁判で訴えられているのは「被告人」です。

これを機に正しく理解しておいて下さい。

目的の違い

民事裁判と刑事裁判では、目的も大きく異なります。

民事裁判の場合
民事裁判の目的は、民間人同士のトラブル解決です。

原告は自分の権利を実現するため(被告に義務を果たさせるため)に相手を訴えます。

被告が反論するのは、自分に義務がないことを証明するため(原告に権利がないことを証明するため)です。

「お金」や「土地建物の明け渡し」「契約解除の有効性」などが問題となります。

刑事裁判の場合
刑事裁判の目的は「犯罪者に適切な処罰を受けさせること」です。

検察官は被告人の罪を立証し、裁判官に適切な刑罰を与えることを主張します。

被告人側は、罪を認めている状態であれば「なるべく軽くしてほしい」とお願いしますし、罪を認めていなければ無罪を主張して、さまざまな立証を行います。

反訴の可否

民事裁判の場合
民事裁判の場合には「反訴」ができます。

反訴とは、訴えられた被告が逆に原告を訴え返す手続きです。

たとえば、原告が「お金を返せ」と訴えたとき、反対に被告の方から原告に対し「脅されて暴力を振るわれたから損害賠償請求」をして訴え返すことなどが可能です。

裁判所はどちらかの言い分のみ認めることもあれば、どちらの請求も棄却することもありますし、両方の言い分を部分的に認めるケースもあります。

刑事裁判の場合
刑事裁判には「反訴」はありません。

犯罪を行ったことで訴えられている被告人が、検察官を訴え返すことはあり得ません。

ただし、違法な取り調べなどを受けて精神的苦痛を被った場合、元の被告人が後に国家賠償請求などを行う可能性はあります。

この場合、刑事裁判とはまったく別の裁判となります。

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判決内容の違い

民事裁判と刑事裁判は、判決内容も大きく異なります。

民事裁判の場合
民事裁判の判決は「お金を〇〇円払え」「~の建物を明け渡せ」「不動産の登記をしろ」などの民間人の権利義務についての内容です。

刑事裁判の場合
刑事裁判の判決は「被告人を罰金〇〇円とする」「懲役〇年とする」「禁固〇年執行猶予〇年とする」「被告人を無罪とする」など、犯罪に対する刑罰についての内容となります。

犯罪被害に遭ったとき、被害者は「刑事告訴したい」「刑事裁判にしてほしい」などと考えることがよくありますが、実際に刑事裁判にしてもらっても相手に対する「刑罰」しか決まりません。

詐欺被害に遭ってお金を返してほしくても、刑事裁判では一円もお金を返してもらうことはできないのです。

「被害弁償」「慰謝料」などのお金の問題は刑事裁判では解決できないので、自分で相手に「民事裁判」を起こして解決する必要があります。

一般人が起こせるかどうかの違い

民事裁判の場合
民事裁判の場合、原告となって訴えるのは「民間人」です。

裁判を起こすのに、特に資格は要りません。

すべての人に裁判を起こす権利が保障されています。

つまり、一般の方が自由に裁判を起こすことが可能です。

刑事裁判の場合
刑事裁判を起こせるのは「検察官のみ」です。

犯罪に巻き込まれて犯人を処罰してほしいと思っても、民間の人が自分で犯罪者を訴えて刑事裁判にすることは不可能です。

犯罪被害者となったときに起こせるのは「民事裁判のみ」であり「刑事裁判」ではありません。

犯罪者を処罰してもらいたいときには、検察官や警察に「刑事告訴」を行い「犯人を処罰して下さい」と促す必要があります。

裁判員裁判について

みなさんは、裁判員裁判という制度についてご存知でしょうか。

これは、一定の重大犯罪について国民から選ばれた裁判員が裁判に参加して、被告人が有罪か無罪か、または、刑罰内容を決めるタイプの裁判です。

裁判員裁判についての取扱いも、民事裁判と刑事裁判で異なります。

民事裁判の場合
民事裁判では裁判員裁判制度は導入されていません。

国民から選ばれた裁判員が「原告の方が正しいんじゃないか」「被告の言っていることが正しい」などと判断してきてお金の支払いの是非を決められることはありません。

すべての事件で職業裁判官が判断します。

刑事裁判の場合
刑事裁判では、一定以上の重大犯罪のケースで裁判員裁判が導入されています。

ただし、すべての刑事裁判ではなく、殺人や放火、強制性交等罪などの重罪のみが対象です。

裁判員裁判では、裁判員が被告人に与えるべき刑罰内容や被告人が無罪かどうかなどを決めるので、被告人にとっても検察官にとっても「裁判員へのアピール方法」が裁判に勝つための重要ポイントとなります。

民間人が刑事裁判にしてほしい場合はどうしたら良いのか

民事裁判は民間人でも起こせますが、刑事裁判は民間人が起こすことはできません。

では、犯罪被害に遭った民間人が刑事裁判を望む場合には、どのようなことをすれば良いのでしょうか?

この場合、検察や警察官に「被害届」を提出したり「刑事告訴」したりするのが通常です。

被害届について

被害届とは「犯罪の被害に遭いました」という申告です。

通常は管轄の警察署に提出します。

被害届が提出されたら警察が捜査を行い、犯罪の疑いが濃厚になったときに被疑者を逮捕します。

その後取り調べなどが行われ、必要があれば検察官の判断によって被告人が「起訴」され、刑事裁判が開始されます。

刑事告訴について

刑事告訴とは、被害届よりも強く「必ず犯人を処罰して下さい」という意思表示です。

被害届よりも強い効果があり、警察は刑事告訴を受け付けたら、きちんと捜査を行って立件するのかどうかなどを決めなければなりません。

捜査の結果、犯罪事実が明らかになれば逮捕して取り調べを行い、検察官の判断によって「起訴」されるかどうかが決まります。

「被害届」の場合も「刑事告訴」の場合にも、民間人が「刑事裁判を起こす」ことは不可能です。

検察官が「起訴しない(不起訴)」の決定をしたら、実際に犯罪被害に遭っていても刑事裁判にならず、被害者が泣き寝入りする可能性も考えられます。

検察審査会について

検察官が不起訴処分をしたことを不服とする場合、被害者は「検察審査会」に申立をすることが可能です。

検察審査会とは、検察官による起訴不起訴の決定の妥当性を判断する機関です。

国民から選ばれた検察審査員が検察官による不起訴処分が妥当かどうかを判定します。

ただし、検察官は検察審査会の判断に拘束されないので、再度不起訴処分にすることも可能です。

すると、被害者は再度検察審査会に審査の申し立てが可能です。

こうして2回とも検察審査会が「起訴相当」と判断した場合には、検察官が起訴しなくても「強制起訴」されます。

強制起訴になった場合には、「起訴しない」と判断した検察官に刑事裁判を任せるのではなく、専門の弁護士が選ばれて検察官の代わりに刑事裁判を起こして、被告人を追及することとなります。

民事裁判と刑事裁判の両方の裁判が起こる典型的なケース

以上のように、裁判には「民事裁判」と「刑事裁判」の2種類がありますが、事件によっては「両方の裁判が起こる」ことがあります。

それは「被害者のいる犯罪」です。

犯罪の被害が発生したら、当然犯罪者を裁くための「刑事裁判」が行われます。

一方で、被害者が相手に慰謝料や治療費、騙しとられたお金や盗まれたお金、壊されたものの弁償金支払などを払ってもらうには「民事裁判」を行う必要があります。

これらの2つは別々の手続きとなるので、両方の裁判が行われるのです。

以下で民事裁判と刑事裁判の両方が行われるパターンをいくつかご紹介します。

名誉毀損

名誉毀損が行われたら、犯人には「名誉毀損罪」という犯罪が成立します。

被害者が刑事告訴をすると捜査が行われ、犯人は刑事事件になる可能性があります。

一方、名誉毀損された被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、相手を民事裁判で訴えて「慰謝料請求」することが可能です。

このようにして民事裁判と刑事裁判の両方が行われます。

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痴漢、強制わいせつ

痴漢や強制わいせつなどの行為は犯罪行為です。

犯行が発覚したら、検察官や警察官が捜査を進め証拠が揃ったら、犯人は起訴されて刑事裁判になります。

一方、被害者は相手の犯罪によって大きな精神的苦痛を受けるので、犯人に対して民事裁判を起こして慰謝料請求できます。

窃盗や詐欺、横領

窃盗や詐欺、横領や恐喝などの財産犯(お金に対する侵害の犯罪)でも、犯行が行われたら検察官や警察官は捜査を行って犯人を起訴し、刑事裁判にします。

ただ、刑事裁判ではお金を返してもらうことはできないので、被害者が被害金や被害品を取り戻すためには自分で民事裁判を起こさなければいけません。

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このようにして刑事裁判と民事裁判の両方が起こります。

傷害や放火など

傷害事件や放火事件などが起こったら、警察は捜査を開始して被疑者を逮捕し、証拠を集めた上、検察官が「起訴」して刑事裁判にします。

ただ、刑事裁判では慰謝料や治療費、燃やされた家の弁償金などを払ってもらえないので、被害者本人が民事裁判で弁償金や慰謝料などの金銭請求を行う必要があります。

こうして刑事裁判と民事裁判の両方が起こります。

交通事故

身近な例としては、交通事故でも刑事裁判と民事裁判の両方があります。

交通事故の中でも人身事故を起こすと「過失運転致死傷罪」「危険運転致死傷罪」という犯罪が成立します。

また、ひき逃げや飲酒運転を行った場合にも道路交通法違反の罪が成立します。

このような場合、検察官が加害者を起訴して刑事裁判が始まります。

また、交通事故の場合、多くは加害者の保険会社と被害者が「示談交渉」をして賠償金を決定しますが、示談が決裂するケースがありますし、加害者が保険に入っていないケースもあります。

その場合、被害者は加害者や加害者の保険会社を相手取って民事裁判を起こし、治療費や休業損害、慰謝料などを請求する必要があります。

このような理由で交通事故には「刑事裁判」と「民事裁判」の2種類があります。

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刑事裁判のみが行われる場合

上記のように刑事裁判と民事裁判の両方が行われるケースもありますが、刑事裁判しか行われない場合もあります。

それは「被害者のいない犯罪」のケースです。

被害者がいないので被害者が加害者に民事裁判を起こすことがなく、刑事裁判のみとなります。

典型的な犯罪が「薬物犯罪」です。

覚せい剤や大麻、麻薬などを所持使用して逮捕されると、ほとんどのケースで起訴されて刑事裁判になりますが、被害者がいないので誰にも民事裁判を起こされることはありません。

民事裁判のみが行われる場合

民事裁判しか行われないケースもあります。

それは「犯罪にならない民間トラブル」です。

世の中での法律トラブルがすべて犯罪になるわけではありません。

たとえば、貸したお金を返してもらえない場合、家賃を払ってもらえない場合、賃貸借契約の解除後に賃借人に出ていってほしい場合、相手のペットに噛みつかれてけがをした場合、売買契約にもとづいて不動産の登記をしてほしい場合など、相手には「犯罪」は成立しません。

自分で「民事裁判」を行い、自分の権利を実現する必要があります。

法律トラブルが発生したときには、民事裁判と刑事裁判を状況によってうまく使い分けることが大切です。

両方の裁判を同時に起こせるのか

名誉毀損や痴漢、詐欺などで刑事裁判と民事裁判が両方行われる可能性がある場合、「両方の裁判を同時に起こせるのか?」と疑問に思われる方のために、以下ご説明します。

民間人が刑事裁判を起こすことはできない

先にも説明した通り、民間人が刑事裁判を起こすことは「そもそも不可能」です。

起訴するかどうかは検察官が決めますし、起訴できるのも検察官だけですし、起訴するタイミングも検察官が判断します。

そもそも「刑事裁判と民事裁判を両方同時に起こす」という判断は民間人にはできません。

刑事裁判中に民事裁判を起こすことは可能

ただし、検察官が刑事裁判を起こしたとき、刑事裁判中に被害者が民事裁判を起こすことは可能です。

たとえば、交通事故で加害者の刑事裁判が行われている最中に、被害者が加害者に対して慰謝料や治療費支払いを求めて民事裁判を起こす場合などです。

相手が勾留されて拘置所にいる状態でも民事裁判を起こすことは可能です。

ただし、相手が刑事裁判中だと民事裁判を起こしても相手はほとんど反応できないことが多く、実質的な審理が行われないまま判決が出る可能性が高くなります。

相手が任意に支払いをしない場合は、強制執行しなければならないでしょう。

また、刑事裁判中には、加害者の方から強く「示談」を希望してくることが多いので、わざわざ民事裁判をしなくても慰謝料を払ってもらえるケースが多いです。

刑事裁判終了後に民事裁判を起こすことも可能

刑事裁判が終わった後、民事裁判を起こすことももちろん可能です。

実際、刑事裁判中は、被告人は自分の刑事事件の対応に必死で民事裁判に対応しにくいものです。

また、刑事裁判中は被告人の方から積極的に慰謝料支払いを提示してくるので、被害者の方からわざわざ民事裁判をする必要がないケースが多数です。

そのような理由から、一般的には、刑事裁判が終了してから民事裁判が行われるケースの方が多くなっています。

どのタイミングで裁判を起こすのが良いのか

民間人が起こすことができるのは「民事裁判」ですが、刑事裁判との関係でどのタイミングで起こすのが良いのでしょうか?

刑事裁判前に民事裁判を起こす方法

民事裁判は刑事裁判と無関係に起こすことができますので、刑事裁判前に民事裁判を起こすことも可能です。

この場合、まずは相手に任意で慰謝料を請求し、払ってもらえないときに民事裁判を起こします。

そのとき、相手にプレッシャーをかけるために並行して刑事告訴などを行う戦略をとります。

これは、相手が刑事告訴を取り下げてもらうために慰謝料を払う気持ちになることを狙っています。

名誉毀損などの犯罪の場合、こうしたパターンが多いです。

たとえば、民事裁判を起こし、続いて刑事告訴を行って「刑事告訴の取り下げと引換に慰謝料を払う」という和解をするケースなどがあります。

刑事裁判中に民事裁判を起こす方法

刑事裁判中に民事裁判を起こすことも可能です。

ただし、刑事裁判の最中は、むしろ加害者の方から積極的に示談を求めてくることが大半です。

刑事裁判では被害者と示談が成立して被害弁償を行うと、被告人の情状が良くなって刑罰が軽くなるためです。

刑事裁判中は、被告人は何とか示談を成立させたいので、多少無理をしてでも慰謝料や賠償金を払おうとします。

刑事裁判中に示談に応じてしまえば、わざわざ民事裁判をしなくても損害賠償金を回収できます。

また、民事裁判を起こしても、相手が勾留されていたら裁判に出頭できず、実質的な審理ができませんし、判決が出ても相手は自分から支払をできないので強制執行しなければなりません。

個別の状況にもよりますが、刑事裁判中に民事裁判を起こしてもあまりメリットがないケースが多いでしょう。

刑事裁判後に民事裁判を起こす方法

刑事裁判中に被害弁償金を回収できなかった場合、被害者は加害者の刑事裁判が終了した後に請求をしなければなりません。

刑事裁判が終わると、相手は賠償金支払いに消極的になる

刑事裁判が終了すると加害者の刑が確定してしまい、示談してもメリットがなくなるため、相手は賠償金の支払いに消極的になります。

刑事裁判中であれば相手は借金したり、親族からお金をかき集めたりしてでも示談しようとするものですが、刑事裁判が終わったらそのような努力はしません。

被害者からの請求を完全に無視するケースも多々あります。

また、民事裁判を起こして相手に支払命令が出ても、相手が自分から判決に従った支払いをしなかったら、請求者である被害者が相手の財産を突き止めて「強制執行」しなければなりません。

財産がなかったり見つからなかったりしたら、強制執行する当てがなく、結局一円も回収できないという事態が起こりうるのです。

そのような理由から、「相手にお金がない場合」「相手がどこにお金を持っているかわからない場合」には、「刑事裁判後に民事裁判をする方法」は有効ではありません。

できるだけ刑事裁判中に示談してしまう方が確実に賠償金を回収できます。

刑事裁判後に民事裁判を起こして有効な場合とは

刑事裁判後の民事裁判がお勧めなのは「相手が明らかにお金を持っていてどこに資産があるのか判明しているケース」です。

たとえば、交通事故などのケースで裁判の相手方が保険会社なら、加害者の刑事裁判後に民事裁判を起こしても全く問題ありません。

実際、交通事故では加害者の刑事裁判が終わってから、示談や保険会社との裁判が行われるパターンが多数あります。

その他のケースでも、相手に地位や資産があって逃げ隠れできない場合、相手の不動産などの資産を特定できている場合などには刑事裁判後に民事裁判をする方法も有効です。

刑事裁判にかかる一般的な期間の目安

刑事裁判にはどのくらいの時間がかかるのか、一般的な目安を示します。

被害届もしくは刑事告訴してから刑事裁判が開かれるまで
→1か月~1年以上

刑事裁判が開かれてから判決が下るまで
→被告人が罪を認めていたら2~3か月、被告人が否認していたら半年~2年程度

合計すると、被害届もしくは刑事告訴から判決が出るまで、早くて3~4か月、長い場合には数年以上かかります。

示談すると相手の刑事裁判が有利になる

相手が刑事裁判になった場合、一般的には刑事裁判中に示談をした方が確実にお金を回収しやすいものです。

ただし、刑事裁判中に示談を成立させると、加害者に与えられる処分や刑罰が軽くなることに注意が必要です。

被害者としては、加害者に対してできるだけ重い処罰を与えてほしいと希望しているケースが多々あります。

そのようなとき、示談してしまって加害者が罰金で済んだり執行猶予となったり刑期が短くなってしまったりするのは不本意でしょう。

「お金よりも相手に重い処罰を与えてほしい」という目的があるなら、刑事裁判中には示談すべきではありません。

ただし、示談しなかったら賠償金を一切受け取れない可能性もあります。

刑事裁判後に民事裁判を起こしても確実にお金を回収できるわけではなく、相手が逃げてしまったり、相手にお金がなくて一円も回収できなかったりするリスクが発生します。

このように犯罪被害に遭った場合には「相手の刑が軽くなっても示談すべきか、お金は半分あきらめて示談を断るか」という難しい対応を迫られるケースが多いのです。

このようなとき、適切な判断をして被害者の権利を守るには弁護士によるサポートを受けることが大切です。

弁護士であれば、示談に応じた方が良いか断った方がよいかアドバイスをくれますし、示談交渉の代行もしてくれます。

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