集団訴訟とは?利用のメリットデメリット、費用の支払い方法や起こし方について徹底解説! | 弁護士費用保険の教科書

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集団訴訟とは?利用のメリットデメリット、費用の支払い方法や起こし方について徹底解説!

投稿日:2019年2月22日 更新日:



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この記事の執筆者

福谷 陽子(元弁護士)

悪徳業者に騙されて被害を受けても被害額が少額な場合、なかなか相手の法的な責任を追及するのが難しくなります。

そのような場合「集団訴訟」を利用すると、1人1人の負担を軽くして弁護士に依頼することができるので、メリットが大きくなります。

今回は、最近消費者門代を始めとしてさまざまな分野で注目されている「集団訴訟」について、解説します。

集団訴訟とは

そもそも集団訴訟とは何か

集団訴訟とは、同じ消費者被害などを受けた人が集まって相手企業や業者を訴える裁判です。

たとえば、ある悪徳業者が消費者を騙して粗悪品を買わせ、一人あたり5万円ずつ払わせたとします。

そのような場合、1人1人の被害額は5万円なので、弁護士に依頼すると足が出てしまう可能性が高くなります。

弁護士に裁判を依頼すると最低でも10万円はかかることが通常だからです。

そこで被害者が集団で弁護士に依頼して、まとめて訴訟を進めてもらいます。

これが弁護士受任の集団訴訟の典型です。

集団訴訟で依頼できること

集団訴訟を利用できるのは、以下のようなケースです。

集団訴訟が利用されやすいケース

・悪質な業者に騙されてお金を取られた
・商品代金を払ったのに商品を送ってもらえない
・投資詐欺に遭った
・仮想通貨のICO詐欺に遭った
・医療過誤で被害に遭った
・航空機事故やバスの事故で被害に遭った
・ある製品を使っていたら発火して被害に遭った

他にもさまざまな問題において、被害者が一定以上多数いれば、集団訴訟を利用できます。

弁護士に依頼する集団訴訟と消費者団体訴訟制度

ところで、日本の集団訴訟制度には「弁護士に依頼する場合」と「消費者団体訴訟を利用する場合」の2つのパターンがあります。

以下で何が違うのか、ご説明します。

弁護士に依頼する場合

弁護士に集団訴訟を依頼する場合には、個々の被害者がそれぞれ弁護士に訴訟を依頼します。

そして受任した弁護士が、すべての被害者の代理人となって裁判を提起し、相手業者の責任を追及します。

裁判の進み方は通常の裁判と同様で、法律上の要件(契約違反や不法行為など)を主張・立証し、裁判所に認めてもらうことによって相手に支払い命令を出してもらいます。

判決で勝訴して相手から支払いを受けられたら、そこから弁護士報酬を差し引いて個々の依頼者にお金が返されます。

集団訴訟とは言っても、全員が1人の弁護士あるいは弁護団に依頼するだけなので、原則通りのシンプルな手続きです。

消費者団体訴訟を利用する場合

●消費者団体訴訟とは
もう1つの集団訴訟として「消費者団体訴訟」があります。

これは、「適格消費者団体」に訴訟や返金の手続きを任せる方法で、次に説明するアメリカの「クラス・アクション制度」を模倣して導入されたものです。

本来、訴訟は自分で起こす方法か弁護士に依頼する方法しかありません。

弁護士以外の人に訴訟を委任すると、弁護士法違反となります。

消費者の代表者を決めてその人に訴訟を進めてもらうこともできませんし、弁護士以外の消費者保護団体などに任せることなども不可能です。

ただ、それでは少額の被害を受けた人が弁護士に依頼できず、泣き寝入りするケースが増えてしまいます。

そこで、集団訴訟をもっと利用しやすくするため、「適格消費者団体」として正式に国の認定を受けた消費者団体にのみ、訴訟を委任できるようになりました。

それが日本の消費者団体訴訟制度です。

消費者団体訴訟制度を利用できるのは、悪質業者によって消費者被害を受けた場合であり、相手に請求できるのは、契約の不履行にもとづく返金やそれにもとづく損害賠償請求金などです。

慰謝料や逸失利益などは請求できません。

弁護士に依頼する方法と消費者団体訴訟制度の違い

弁護士に集団訴訟を依頼するのと消費者団体訴訟制度を利用するのとでは、以下のような違いがあります。

●対象事件や請求内容が限定されない
まず相手に請求できる内容が異なります。

弁護士に集団訴訟を依頼する場合であれば、どのような事件も対象になります。

たとえば一般的な消費者被害で、悪徳商法にひっかかってお金をだまし取られたケースも対象になりますし、投資詐欺や個人情報漏えい、医療過誤事件なども対象になります。

また、不当利得返還請求権や契約義務の履行請求に限らず、慰謝料請求や逸失利益の請求なども可能です。

一方消費者団体訴訟制度の場合には、消費者契約に関する被害回復のための請求しかできません。

請求できるのは以下の4種類の費目です。

消費者団体訴訟制度で請求できるもの

・契約上の債務の履行の請求
・不当利得に係る請求
・契約上の債務の不履行による損害賠償の請求
・瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求

つまり契約の不履行にもとづく返金や損害賠償金についての請求はできても、慰謝料や逸失利益(相手の不履行によって得られなくなってしまった利益)まで請求することはできません。

弁護士に依頼すると、こういった損害まですべて請求できるので、回収できる金額が高額になる可能性が高まります。

●訴訟進行の違い
消費者団体制度と弁護士に依頼する場合には、訴訟の進行方法も異なります。

弁護士に依頼すると、勝訴の見込みがあれば弁護士が訴訟を起こしてくれて、通常の訴訟進行と同様に期日を何度か繰り返して争点整理を行い、整理ができたら必要な尋問を行って結審し、判決を言い渡します。

一方適格消費者団体の場合、そもそも訴訟を提起してもらえるかどうか明らかではありません。

被害を受けたら適格消費者団体に情報提供をしますが、ある程度情報が集まり実際に被害が発生している状況が明らかにならないと、訴訟提起してくれないからです。

実際に、訴訟が行われた例はまだありません。

また訴訟が提起された場合、まずは裁判所で「権利の存否」の確定を行います。

つまり消費者側の請求が正当かどうかを判断するのです。

権利があると確定されたら、その後被害者からインターネットなどで「債権届」を提出してもらい、それをもとにどこまで認められるかを判断します。

このような過程を経て、最終的に確定した金額について認定消費者団体を通じて被害者に返金が行われる制度となっています。

消費者団体訴訟は一般的な訴訟とはかなり異なる類型です。

特に強制力や確実性の点で弱いので、これだけでは被害回復に十分とは言えないでしょう。

●費用の違い
弁護士に依頼する場合と適格消費者団体に依頼する場合とでは、かかる費用もかわってきます。

弁護士に依頼すると、当然弁護士費用がかかりますが、団体消費者訴訟制度を利用するとそういった費用は不要です。

費用的には消費者訴訟の方が得になるでしょう。

ただ団体消費者訴訟では、必ずしも動いてもらえるとは限らないので、費用面だけではメリットデメリットを捉えられない面があります。

集団訴訟の由来

日本の集団訴訟は、もともとアメリカの「クラス・アクション」に由来します。

クラス・アクションは 一定の共通のくくりに属する人々(クラスClass)を代表した一人や数名が全員のために原告となり、相手を訴える裁判です。

アメリカの場合、特に対象事件に限定はなく、原告・被告の属性にも限定はありません。

典型的には、以下のようなケースで利用されています。

・消費者訴訟
・証券関連訴訟
・不法行為訴訟(航空機事故、火災事故などの大規模事故)
・製造物責任訴訟
・競争法関連訴訟
・労働関連訴訟
・市民権訴訟

日本の集団訴訟とアメリカのクラス・アクションの違い

日本の集団訴訟とアメリカのクラス・アクションの制度には大きな違いがあります。

以下でみてみましょう。

アメリカでは消費者自身が代表で提訴できる

まずアメリカでは、消費者自身が代表となって集団訴訟を起こすことができます。

たとえば100人の消費者が被害に遭ったとき、代表の1人や数名を定めてその人達が裁判を起こすことが可能です。

弁護士や適格消費者団体を利用する必要はありません。

弁護士の費用もかかりませんし、「適格消費者団体が訴訟をしてくれないかも」と心配する必要もなく訴訟を自由に起こせます。

アメリカでは対象事件や請求できる費目に限定がない

アメリカのクラス・アクションには、「消費者被害」という限定はありません。

一般的な訴訟類型として、上記のように労働関係や市民権、不法行為など、どのようなケースでも訴訟を起こすことが可能です。

また、契約不履行、損害賠償請求、不当利得返還請求、慰謝料、逸失利益の請求などどのような費目も請求可能です。

一方日本の消費者団体訴訟制度はアメリカのクラス・アクションを真似た制度ですが、消費者団体訴訟制度では、請求できる費目に制限があります。

契約不履行、不当利得返還請求、債務不履行にもとづく損害賠償請求、瑕疵担保責任にもとづく損害賠償請求しかできないので、慰謝料や逸失利益などは対象外です。

なお日本でも、弁護士に依頼したら費目の制限なく慰謝料や逸失利益を請求することもできます。

オプトインとオプトアウト

アメリカの集団訴訟では「オプトアウト方式」と言って、その「クラス」に属する人はすべて原告になったのと同じように権利が認められます。

たとえば「A社の〇〇という製品で被害を受けた人」がクラス・アクションを起こして勝訴すれば、実際には訴訟に参加しなくても「A社の〇〇で被害を受けた人」全員に賠償が行われます。

日本の場合にはこういった制度はなく「オプトイン方式」です。

つまり、自分と同種の被害を受けた人が訴訟を起こしていても、自分が原告にならなければ被害回復は行われません。

日本でも、集団訴訟のことを「クラスアクション」と呼ぶケースがありますが、実際にはアメリカの「クラス・アクション」と日本の集団訴訟はかなり異なります。

知識として覚えておいてください。

集団訴訟のメリット

消費者被害や不法行為の被害を受けたとき、集団訴訟を利用すると以下のようなメリットがあります。

弁護士費用の問題を解決できる

もっとも大きいのは、弁護士費用の問題を解決できることです。

一般に、消費者被害の1件1件の被害額は大きくはありません。

また悪質な業者の場合、逃げてしまったり資産を隠してしまったりして、取り立てができないケースもあります。

しかし弁護士に訴訟を依頼すると、最低でも10万円、一般的には数十万円の費用がかかってしまいます。

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そうなると高額な費用を払っても足が出る可能性があるので、訴訟に踏み切れない方が多くなります。

集団訴訟を利用すると、弁護士費用を多数の被害者が分担することになるので、1人1人の負担額は少額になります。

そうすれば、被害が5万円や10万円の被害者でも集団訴訟を利用できる可能性が出てきます。

悪質な相手に制裁を与えることができる

集団訴訟をできず、被害者が全員泣き寝入りしてしまったら、悪質業者はペナルティを受けないことになってしまいます。

刑事罰も与えられずそのまま営業するかもしれませんし、類似の悪質業者が出てくる可能性もあります。

このような悪質な相手に制裁を与えるためには、集団訴訟が有効です。

被害者が団体でまとめて請求をすると賠償金も大きくなり、業者に与えるダメージも大きくなりますし社会に与えるインパクトも大きく、類似の悪質業者が出てくる可能性なども低くなります。

このように、集団訴訟が社会全体に与えるインパクトも無視できないメリットです。

弁護士も動きやすくなる

消費者被害で個別の被害者から依頼を受けると、弁護士としては、足が出る可能性が高いのでどうしても高額な費用を請求しにくいものです。

また、1人1人の被害者は十分な証拠を持っていないことも多く、適切な訴訟活動が難しくなってしまうケースも多々あります。

集団訴訟であれば、多くの被害者から少しずつお金を払ってもらえるので、弁護士も十分な報酬を手にして動きをとりやすくなりますし、証拠についても被害者全体から集めることができるので、訴訟を有利に進めやすくなります。

証拠を共有できる

集団訴訟を利用すると、被害者が持っている証拠を全体に共有することが可能です。

つまり1人1人の持っている証拠が不十分でも、他の参加者が持っている証拠があれば、それを全員のために使うことができます。

このルールを「証拠共通」と言います。

たとえば1人の被害者が契約書を紛失していたとしても、他の被害者が契約書を持っていたら、それで訴訟を維持することが可能となります。

消費者被害では、個人が十分な証拠を持っている方がむしろ珍しいので、集団訴訟をするメリットはとても大きいです。

裁判所の負担も減らせる

訴訟を起こす一般の方はあまり意識されないのですが、裁判所の負担についても少し考えておきましょう。

裁判所は有限なので、あまりたくさんの細かい訴訟が起こりすぎると、対応できなくなってパンクしてしまいます。

そうなったら、本当に必要な訴訟進行も受け付けられなくなり、みなさんの権利が守られなくなって問題です。

消費者被害の事件で1人1人の被害者が訴訟を起こすと大変な件数となって簡易裁判所がパンクしてしまいますが、集団訴訟なら地方裁判所の数件で済むので、裁判所にとっても有益です。

集団訴訟のデメリット

一方集団訴訟にはデメリットもあるので、みていきましょう。

必ず自分の被害に関する案件があるとは限らない

集団訴訟の第1のデメリットは、必ずしも自分が困っている被害案件についての集団訴訟が行われているとは限らないことです。

全国各地でいろいろな消費者被害や不法行為が行われていますが、どのようなケースでも集団訴訟が行われているわけではありません。

情報提供者が少数であったり証拠が不十分だったりして提訴できていない案件もありますし、まだまったく世に知られていないトラブルもあります。

そのようなとき、集団訴訟に参加しようとしてもできないので諦めてしまう方がいます。

ただそういったケースでも、自分で呼びかけて集団訴訟を起こすきっかけ作りをしたり、少額訴訟や支払督促などの手続きを利用したりする方法があります。

それでも弁護士費用はかかる

集団訴訟をすると、個別に弁護士に依頼するよりは費用を抑えられますが、それでも弁護士費用はかかります。

訴訟提起前には、証拠集めや調査費用が発生することもありますが、そういった費用も被害者で分担することとなります。

金額が下がるとは言っても出費が発生することは、一定のデメリットと言わざるを得ません。

相手が倒産するリスクがある

集団訴訟を起こしても、相手が倒産したり逃げてしまったりしたら、回収できなくなってしまう可能性があります。

破産されたら極めて少額の配当金しか受けとれませんし、相手に資産が見当たらなければ強制執行も不可能です。

そうなると、集団訴訟のためにかけた時間も労力も弁護士費用もすべて無駄になってしまいます。

集団訴訟をしても「必ず勝てるわけではない」ことは覚えておきましょう。

集団訴訟の費用は誰が払うのか

集団訴訟を起こす場合、誰がどのような費用を払うのかという問題があります。

訴訟にかかる費用には、実費と弁護士費用があります。

実費

集団訴訟にかかる実費は、主に裁判所に支払う費用です。

●印紙代
印紙代は、提訴の際に裁判所に支払う手数料です。

収入印紙の形で支払うので印紙代と言います。

請求金額に応じて高額になるので、集団訴訟の場合、印紙代も高額になりやすいです。

●郵便切手代
当事者への連絡用の郵便切手です。

被告の人数によって異なりますが、1件6000~7000円程度です。

●謄写費用
調書などの記録をコピーするための費用です。

また、提訴前の事前調査費用や訴訟進行中の照会費用などの諸費用が発生するケースもあります。

こうした費用は、原告である被害者が、請求金額に応じて分担します。

総額ではそれなりの金額になっても、1人1人の負担額は小さくなります。

支払い方法は、弁護士が1人1人の負担額を割り出して請求するので、依頼者はそれに応じて支払いをします。

弁護士費用

弁護士費用には着手金と報酬金があります。

●着手金
着手金は、裁判を起こすときに発生するまとまった費用です。

一般的には請求金額に応じた金額となり、請求金額が大きくなると着手金額は上がります。

●報酬金
報酬金は、相手から請求金の支払を受けられたときに発生する費用です。

回収金額に応じた金額となり、多額のお金を取り立てることができればその分報酬金が上がります。

着手金や報酬金も被害者である個々の原告が負担しますが、特に報酬金については返ってきたお金からの清算となるケースが多いです。

その場合、依頼者が自腹で報酬金を用意して弁護士に支払う必要はありません。

集団訴訟が難しい場合の対処方法

消費者被害などを受けたても、自分の受けた被害事案の集団訴訟が起こっていない場合や、どうしても弁護士費用を負担したくない場合には集団訴訟を利用できません。

その場合、自分で「少額訴訟」や「支払督促」という手続きを利用する方法があるので、ご紹介します。

少額訴訟とは

少額訴訟とは、請求金額が60万円以下のケースで利用できる簡易な裁判手続きです。

通常の訴訟とは異なり、主張や立証の方法も簡易化されていて、すべての審理を1日で終え、その日に判決まで出してもらえます。

判決には、通常訴訟と同様に強制執行力があるので、相手が支払をしない場合には、相手の資産を差し押さえることが可能です。

自分一人でもだいたいの証拠を揃えられているのであれば、少額訴訟を利用すると良いでしょう。
ただし相手が少額訴訟に異議を出すと、通常訴訟に移行します。

そうなったら、厳格な主張や立証を要求されるので、弁護士に依頼せざるを得なくなる可能性が高まりますし、期間も労力もかかります。

また請求金額が60万円以内である必要があるので、被害額がそれを上回っているケースでは少額訴訟を利用できません。

少額訴訟の進め方

少額訴訟を起こしたいときには、訴状を作成して証拠を添附して、管轄の簡易裁判所に提出します。

印紙代と郵便切手を合わせても1万円程度に収まるケースも多いです。

その後裁判所から連絡が来るので、期日に向けて準備を行い、期日を開いて最後に裁判官によって判決が下されます。

少額訴訟では、途中で和解する事例もよくあります。

和解した場合にはその場で裁判が終了し、合意した内容に従って相手から返金を受けられます。

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支払督促とは

支払督促は、相手に対して支払督促の申し立てを送り、相手が期限内に異議を申し立てないときには相手の資産や債権を差し押さえる裁判手続きです。

支払督促を申し立てると、裁判所から相手に支払督促申立書が送られます。

相手が申立書を受けとってから2週間以内に異議申し立てをしない場合には、裁判所が仮執行宣言を出します。

そして申立人は、その仮執行宣言にもとづいて強制執行をすることが可能となります。

少額訴訟と違って請求金額に上限はなく、60万円以上の被害額の案件でも利用できます。

また特段の証拠も不要なので、手元の資料が不十分なケースでも有効ですし、費用も少額です。

ただ、相手が異議を申し立てた場合には通常訴訟に移行してしまうので、結局弁護士に依頼しなければならない可能性が高まります。

以上のように、集団訴訟を利用できない場合、一人で少額訴訟や支払督促を申し立てることも可能ですが、これらの場合、最終的に相手が異議申し立てをしたら通常訴訟に移行してしまうことに注意が必要です。

もしもあなたがお困りの案件で集団訴訟の募集があるならば、そちらに参加した方がメリットも大きくなるでしょう。

被害回復給付金制度について

被害回復給付金制度とは

集団訴訟と関連して、知っておくと役に立つ知識があります。

それは「被害回復給付金支給制度」です。

これは、オレオレ詐欺などの犯人や悪質業者が使っている銀行口座を凍結して、その口座内のお金を詐欺や犯罪被害者に分配する制度です。

闇金やネット通販詐欺、投資勧誘詐欺などのさまざまな詐欺に適用されます。

あなたの受けた被害に被害回復給付金制度が適用される場合には、給付金の申請をすることにより、被害金を返金してもらえる可能性があります。

こちらのページに返金が行われている事件の一覧があるので、該当するものがないか確認してみてください。

被害回復給付金支給制度:検察庁
被害回復給付金支給制度:検察庁

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犯罪被害に遭ってから給付金が支給されるまでの流れ

もしも犯罪被害に遭ってお金をだまし取られたら、まずは振込先の金融機関に連絡をして、被害の内容を告げましょう。

そして、警察に被害届を提出します。

受け付けた警察が犯罪が行われた可能性が高いと判断すると、捜査が始まって相手業者の刑事手続が開始します。

刑事裁判が終了して相手業者の有罪が確定すると、被害者に対する給付金の分配が始まります。

給付金を受けとる方法。

給付金の支給が始まったかどうかは、上記の検察庁のサイトから確認できます。

返金が開始されたら、すぐに検察庁に被害回復分配金申請書を提出しましょう。

すると、後日に振込送金などによって返金を受けられます。

ただ、凍結時に口座に被害金がそのまま残っているとは限らないので、必ずしも全額戻ってくるとは限りません。

また、被害者全員が同じ金額を受けとるのではなく、多額の被害を受けた被害者には大きく返金されますし、被害が少額だった被害者には少額の返金となります。

適用されるなら必ず申請を

被害回復給付金制度が適用される場合、何の費用負担もなくだまし取られたお金を取り戻すことができます。

適用されるケースは多くはありませんが、適用されるなら必ず申請をしてお金を受けとっておくべきです。

しかし実際には、この制度そのものを知らなかったり自分のケースに適用されることに気づかなかったりして返金請求しない方もいます。

また、いったん被害者への分配が終わってしまったら、その後に気づいた被害者が申請をしても分配金を受けとることはできません。

犯罪被害に遭われたなら、すぐに金融機関や警察に行って口座凍結を依頼し、もしもこういった制度が適用される状況であればすぐに申請をしましょう。

集団訴訟の起こす準備

集団訴訟を起こしたいときには、認定消費者団体を利用する方法と弁護士を利用する方法がありますが、ここでは弁護士に依頼する方法を中心に集団訴訟の起こし方や準備方法を解説していきます。

集団訴訟が起こっていないかどうか、確認

悪質商法に引っかかってお金をだまし取られたり、不動産や投資詐欺などに遭ったりした場合、すでに同じ被害に遭った方々が集団訴訟を起こしていたり、集団訴訟に向けた準備活動をしていたりする可能性があります。

その場合、そういった団体に参加させてもらうとスムーズに集団訴訟につなげられます。

たとえばネットで「〇〇社 被害者の会」「〇〇事件 集団訴訟」などのワードで検索して、何か動きが始まっていないか調べてみましょう。

集団訴訟プラットフォーム enjin
集団訴訟プラットフォーム enjin

“日本初”の集団訴訟の専門サイト。弁護士や弁護団への相談や訴訟依頼ができます。集団化することで被害者1人あたりの弁護士費用が抑えます。詐欺・消費者被害・労働問題・医療・製造物責任・フランチャイズ訴訟・ ...

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こちらのサイトには募集中の案件も含めて多くの集団訴訟案件が載っているので、一度チェックしてみましょう。

なお、世間的に有名になった詐欺事件では「被害者を狙った詐欺」が発生しやすいので注意が必要です。

「被害者の会」などと名乗って被害者を募り、さらにお金をだまし取るのです。

そういった詐欺団体かどうかを見極めるには、以下のような点に注目しましょう。

・実在の弁護士が関与している
・これまでの活動内容や今後の予定を明示している
・住所や電話番号など個人情報をやたらと要求しない
・高額な会費を要求しない

被害対策弁護団について

集団訴訟が起こっていなくても、「被害対策弁護団」に相談してみるのも1つの方法です。

こうした弁護団は、不当解雇などの労働問題や医療ミスなどの医療問題、消費者被害の悪質商法などの問題について、複数の弁護士が被害者の援助をしています。

頻繁に集団訴訟を行っているのでノウハウも蓄積していますし、相談してみるとすでに訴訟を起こしているかもしれません。

まだであっても話を聞いて問題意識を持ってくれれば、準備を進めて集団訴訟に発展させてくれる可能性があります。

自分で被害者団体を立ち上げる

現時点においてあなたの受けた被害についての被害者団体や弁護団などがない場合、あなた自身が発起人となって被害者団体を作ることも可能です。

発起人になると、サイトを構築したり会員同士のコミュニケーションをはかったり、弁護士に相談したりなどさまざまな事務をしなければなりませんが、会員が増えて大きな動きになってくれば、集団訴訟に発展させることも可能です。

先ほどご紹介した集団訴訟サイトの「enjin」では、登録申請さえすれば、簡単に被害者を募れるので、一度利用してみてください。

集団訴訟の流れ

集団訴訟を起こすと、以下のような流れとなります。

弁護士に相談

まずは被害内容について弁護士に相談し、どういった法律的問題があるのかや勝訴の見込みなどを検討してもらいます。

準備

訴訟をすると決めたら、証拠の収集、原告として参加する人としない人の整理などの準備を行います。

また、弁護士が裁判所に提出するための「訴状」を作成します。

提訴、争点整理や尋問など

提訴すると相手方にも訴状と証拠が送達されて、裁判が始まります。

相手からも反論があり、それぞれの言い分を整理していきます。

最終的に必要な人物の尋問などを行い結審します。

判決

その後、判決が言い渡されて相手に支払い命令が下ります。

強制執行

相手が任意に支払をしない場合には、相手の預貯金や不動産、売掛金などを差し押さえることが可能です。

返金

最終的に、弁護士が弁護士報酬と清算して、被害者に返金をしてくれます。

集団訴訟の事例

以下で、実際にあった集団訴訟の事例をご紹介します。

茶のしずく事件

かつて販売されていた洗顔せっけん「茶のしずく」により、利用者に湿しんやかぶれなどの健康被害が発生した事件です。

原因は、せっけんに含まれていた小麦由来の成分でした。

被害者が集まり、販売元の会社や製造会社などに対して2012年4月に集団訴訟を起こしました。

多くのケースで和解が成立していますが、まだ訴訟が継続しているところもあります。

薬害エイズ、薬害肝炎訴訟

予防注射や投与された薬剤によって、多くの方がエイズや肝炎に感染した事件です。

手術や出産に使われた止血剤がC型肝炎の原因となり、予防接種における注射針の使い回しがB型肝炎の原因となり、血友病患者に投与された薬剤がエイズの原因となりました。

これらについては、いずれも被害者が集団訴訟を提起したことにより、国や企業の責任が認められています。

薬害肝炎では国が責任を認め、法律を制定して被害者に対する給付金を支払う流れとなっています。

みんなのクレジット

みんなのクレジットは、ソーシャルレンディングでお金を集めていた会社です。

同社は投資を募るとき、集めたお金をさまざまな不動産関連の貸付事業に投資し、その際担保も取得するという説明をしていました。

人気を博して2年で34億円程度も集めましたが、実際には貸付先のほとんどが同社や社長関連のグループであり、投資で得たお金は個人的な借金に回したり新たな投資を募集するためのキャッシュバックに使ったりしていました。

担保もとっておらず、虚偽の説明をしていたことで行政指導も受けています。

最終的にみんなのクレジットは債権譲渡を行うのですが、額面31億円の債権を1億円未満で譲渡することとなり、投資した人は大損害を受けました。

現在228人(被害額約5.5億円)が参加して集団訴訟が開始されています。

悪質業者に騙された場合、今までは泣き寝入りするしかなかった方でもこれからは集団訴訟という方法で対抗することを考えてみてください。

1人では解決できないので、まずは弁護団や集団訴訟のサイトにアクセスして、該当する訴訟や募集が起こっていないかチェックしましょう。

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福谷 陽子(元弁護士)

福谷 陽子(元弁護士)

京都大学法学部卒。在学中に司法試験に合格し、2004年に弁護士登録。その後、弁護士として勤務し、2007年、陽花法律事務所を設立。女性の視点から丁寧で柔軟なきめ細かい対応を得意とし、離婚トラブル・交通事故・遺産相続・借金問題など様々な案件を経験。2013年、体調の関係で事務所を一旦閉鎖。現在は10年間の弁護士の経験を活かしライターとして活動。猫が大好きで、猫に関する記事の執筆も行っている。

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