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朝の始業前出勤は残業手当の対象になるのか

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投稿日:2015年7月3日 更新日:

fwa79
※この記事は『ワークルール検定問題集』などの著者であり、労働法の研究者である平賀律男氏による寄稿文です。

「新人なんだから毎朝1時間前に来て勉強しろ」

「全社員始業時間の30分前出勤が原則」

「掃除は始業前に終わらせておいてね」

皆さんも、こんなことを言われた経験はないでしょうか。

また、みずから進んで早めに出社し、自分のデスクでゆったりと仕事の準備をする、なんてこともあるでしょう。

今日は「始業時刻前の勤務は残業代の支給対象になる?」というテーマですが、結論から申し上げてしまうと、これは始業前であろうと終業後であろうと、残業代の支給対象となりえます。

が、これで記事が終わってしまうと意味がないので、残業についていろいろ考えてみましょう。

これって仕事?

皆さんは、会社に着いた瞬間から帰る瞬間まで、1秒も休まず仕事をしているわけではなく、休憩したり食事をとったりと、濃淡のある過ごし方をしているはずです。

そもそも、残業代が出るかどうかを考えるためには、社内での行動が「労働時間」にあたるかどうかを考えなければなりません。

この点、裁判所は、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」であるとしています(三菱重工長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決)。

タイムカードの時刻で労働時間が決まるのではなく、会社の指示によって活動しているかどうかで労働時間が決まる、ということです

上司から命令されて仕事をしているなら、始業前であろうと終業後であろうと、これが労働時間にあたるというのははっきりしています。

それでは、冒頭の、「新人なんだから1時間前に出勤して勉強しろ」はどうでしょうか。
命令なのか冗談なのかはっきりしませんよね。

この場合、労働時間にあたるかどうかは、客観的にみて会社から強制されているといえるかどうかで判断できます。

仮にこの新人さんが早出をしなかったとして、査定が低くなったり懲戒処分の対象になったりするのであれば、これは会社から強制されていることになりますので、労働時間となります。

逆に、早出しなくても特に怒られないというのであれば、これは自主的な活動ですので、労働時間とはいえません。

お昼休みの電話当番は?

話は少し変わりますが、昼休みの時間に電話当番をしなければならないこともあるでしょう。

自分のデスクでお弁当を食べて、電話が鳴ったら応対する、という状況であれば、これは労働時間となります。仮に昼休み中に電話が1本も掛かってこなかったとしても同様です。

電話が鳴るか鳴らないかに関係なく「席について電話を待つ」ということが会社からの命令の内容だからです。タクシーの客待ち時間なども同じです。

残業させるのはホントは違法

わが国では、労働条件の最低基準として、「週40時間・日8時間」という法定労働時間が定められています(労基法32条)。

これを守らないと、事業主は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることになっています(労基法119条1号)。

でも、皆さんのまわりで、労働者を残業させたら事業主が逮捕された、なんて話は聞いたことがないですよね(実は最近、逮捕例も増えています。「残業 逮捕」で検索してみてください)。

ここで出てくるのが「サブロク協定」です。

この名前に聞き覚えのある方も多いでしょう。

労基法36条に定められていることからそう呼ばれているのですが、会社と労働者の代表との間で「法定労働時間を超えて残業させてもいいですか、いいですよ」という協定を結ぶことで、はじめて会社は法定労働時間を超えて労働者を働かせることができるようになります。

このサブロク協定には、残業をさせる具体的な理由、業務の種類、残業させることができる時間など、さまざまなことが決められています。

労働者の健康を確保するために、長時間労働への対策としてこのような制度が設けられているのであり、会社が単に「残業代さえ払えば、どれだけ残業させてもいいんだろ」というものではないのです。

※関連ページ→「「仕事が遅いから残業代は出せない」は正当な理由になるのか

残業イコール割増賃金ではない

さて、「残業代」といわれると、賃金単価が高くなるというイメージですよね。
まずは、労基法が定める割増賃金率を確認しましょう。

 深夜以外深夜時間帯
時間外25%以上50%以上
休日35%以上60%以上
深夜時間帯は、通常はは22時から翌朝5時まで

ここで、「時間外」というのは、先ほどの法定労働時間を超えて働いた、という意味になります。つまり、労働契約では1日7時間勤務の人が8時間働いたからといって、1時間分の残業代を割り増しして支給しなければならないわけではない、ということです。

また、逆に盲点となるのは、週40時間を超えて働いた分が割増賃金の対象になることです。
1日7時間ずつ週6日間働いた人は、週42時間働いているので、2時間分は割増賃金を支払わなければならなくなります。

さらに、勘違いしやすいのが「休日」の労働です。

法律上は、休日は週1日あればいいことになっているので(労基法35条)、たとえば土日が休みの会社で、両方の曜日に出勤しても、どちらか一方だけが休日割増になるに過ぎません。

これは、祝祭日に出勤しても同じことがいえます。なんだか損した気分になりますね。

今回は誰もが気になる残業代について、法的な観点から考えてみましたがいかがでしたでしょうか?

次回も皆さんが日頃気になっているテーマに法的な観点から迫っていきますのでお楽しみに。

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平賀 律男(パラリーガル)

平賀 律男(パラリーガル)

1982年,北海道生まれの33歳。北海道大学大学院法学研究科にて労働法を専攻し,修士号を取得。2008年からは,パラリーガル(法律事務秘書)として法律事務所に勤務し,企業法務・破産管財などの法律実務に携わるかたわら,在野の労働法研究者としての活動も続けている(2005年より日本労働法学会会員)。著作(共著)に『ワークルール検定問題集』『おしえて弁護士さん 職場のギモン48』(以上,旬報社)『18歳から考えるワークルール』(法律文化社)など。好きな食べ物はラーメン。
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