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【事例で学ぶ】なりすましアカウントによるネット掲示板投稿での名誉毀損で訴えられたケース

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SNSなどを利用していると、個人を罵倒するような誹謗中傷の投稿を見かけることがあります。

 

女子プロレスラーとして活躍する女性に対して、侮辱するような投稿が相次いだことによって命を絶ってしまったという事件は記憶に新しいのではないでしょうか。

 

投稿者個人が見えないために、軽い気持ちで投稿してしまうのかもしれません.

 

しかし、その誹謗中傷が名誉毀損に当たる場合には、加害者に対して慰謝料を請求できるケースがあるのです。

 

ここでご紹介するケースは、本人になりすましてインターネットの掲示板に第三者を罵倒するような投稿を行い、その本人の名誉権や肖像権を侵害したというものです。

 

不法行為に基づいて損害賠償を請求し、名誉権・肖像権の侵害が認められ、慰謝料などを含めた130万6,000円の支払いを命じる判決が出ております。

 

ここでは、このケースについて詳しくお伝えし、名誉棄損が成立する要件についてもご紹介したいと思います。

 

【事例で学ぶ】なりすましアカウントによるネット掲示板投稿での名誉毀損で訴えられたケース

被告が原告の名前と顔写真を無断使用して本人になりすまし、インターネット上の掲示板に第三者を罵倒するような投稿を行ったことにより、名誉権やプライバシー権、肖像権などを侵害されたとして損害賠償請求を行ったというケースです。

 

被告はなりすまし行為をしたことはないと主張していましたが、名誉毀損と肖像権侵害が認められる判決が出ています。

 

ケースの概要

インターネットの掲示板において、アカウント名を原告本人と同じものに設定し、原告本人の顔写真を使用して、本人になりすまして投稿を繰り返しました。

 

このアカウントにおいて第三者に対して罵倒を浴びせ名誉毀損的な発言が投稿されており、また別の第三者に対しても差別用語や侮辱発言を用いて罵倒しています。

 

いずれの投稿もなりすましによるものであり、一般の閲覧者が普通に読んでいると、原告本人が投稿しているように認識されてしまうものであるため、社会的評価が低下してしまうと原告は主張しています。

 

また、顔写真については、原告本人が5年ほど前にネット掲示板に登録した際に使用していたもので、この写真の使用を許諾したことはないために、プライバシー権や肖像権を侵害するものとしています。

 

さらになりすましそのものの行為が不当行為に該当するもので、原告本人のアイデンティティ権を侵害するものであると主張しています。

 

原告本人は上記理由によって精神的な苦痛が生じ、社会的な評価が低下してしまったために、慰謝料として600万円、弁護士費用なども含めた合計723万6000円の精神的損害を請求しています。

 

この主張に対して被告は、そもそもなりすまし行為をしたことはないと主張、またさまざまな権利を侵害するものではないとして精神的な損害は見受けられないと主張しています。

 

判決では、名誉権・肖像権の侵害が認められ、慰謝料などを含めた130万6,000円の支払いを命じる判決が出ております。

 

争点となった内容と裁判所の判断について

本件において、争点となった内容には5点あります。

 

  • そもそも投稿者は被告なのか
  • 名誉権侵害の有無
  • プライバシー権および肖像権侵害の有無
  • アイデンティティ権侵害の有無
  • 損害の発生や損害額について

 

順番にご説明していきましょう。

 

そもそも投稿者は被告なのか

まず争点になったものに、「そもそも投稿者は被告なのか」という点があります。

 

今回のなりすまし投稿について、被告本人はなりすまし行為はしていないと主張しています。

 

しかし本件投稿を行った際に使用したインターネット回線は、被告本人の住所地と同一であることが分かっており、原告の代理人からも「被告本人ではないなら誰が投稿したのか」といった旨を記載した通知書を送付しています。

 

この通知書に対して、被告と同居している父が「自分の子供である被告が投稿した」という旨を記載した回答書を提出しています。

 

また、被告本人もなりすまし行為はしていないとしながらも、具体的な反論は行っておりません。

 

そのようなことからも、なりすまし投稿を行ったのは、被告本人と認められるとしています。

 

名誉権侵害の有無

名誉権侵害については、一般のユーザーが普通に読めば、本人の投稿であると誤認されるものであると認めることが相当だろうとしています。

 

プライバシー権および肖像権侵害の有無

被告が主張するプライバシー権および肖像権侵害については、プロフィール画像を原告本人の写真を公開したというものを指しています。

 

プライバシー権は、他人に知られたくない私生活上の事実や情報をみだりに公開されない利益のことを指しており、原告の顔写真をプライバシー権によって保護されるものとは認められないとしています。

 

ただ、肖像権については、原告本人の顔写真を使用しながら社会的な評価を低下させるような投稿を行っていることから、正当性を認めることはできず、利益を侵害したと認めることが相当であるとしています。

 

アイデンティティ権侵害の有無

アイデンティティ権については、憲法13条にみられる幸福追求権や人格権から他者との関係において人格的同一性を保持する利益であることから導き出されるものです。

 

この点について裁判所は、他者から見た人格の同一性が偽られたといっても、それによって不法行為が成立するものではないとしています。

 

また、ネット掲示板にプロフィール画像が掲示されていた期間は約1か月余りであり、その後は変更されていることも認められることから、違法とまでは言えないとしています。

 

損害の発生や損害額について

上記の通り、名誉権・肖像権の侵害があり、精神的苦痛を負ったとして認められています。

 

投稿には正当性はなく、被害回復措置を講じていないことが認められる一方で、アカウント名やプロフィール画像については1か月程度で変更していることから、さらなる拡大は防止されているとも判断されています。

 

そのような点を考慮され、慰謝料額は60万円が相当であり、発信者情報に要した費用58万6,000円、弁護士費用12万円の合計130万6,000円の支払いを命ぜられています。

 

名誉棄損が成立するための要件について

 

 

今回ご紹介する事案については、名誉毀損が成立し、慰謝料などの支払いを命ぜられています。

 

また、別のケースにおいても名誉毀損が成立したケースは存在していますが、同時に認められないようなケースも存在します。

 

つまり、ネット上において罵倒されたり悪口を言われたりしたとしても、それが必ず名誉毀損にあたるとは限らないのです。

 

そのため、名誉毀損が成立するための要件を理解しておくことが必要になります。

 

今回ご紹介したケースを分析してみると、次のような要件があることが分かります。

 

  • 社会的評価を落とす事実がある
  • 多くの人に伝わってしまう公の場である
  • 具体的な事実が掲載されている

 

今回のケースのように、本人の顔写真を使用してなりすまし投稿を行ったことは、上記3つの要件に当てはまるものである考えられます。

 

ネット上でよくみられる「バカ」「キモイ(気持ち悪い)」などといった投稿は、あくまで個人の感想に過ぎないものですから、それが事実であるとは言えません。

 

侮辱罪が成立する可能性はありますが、名誉毀損の要件に当てはまるとは言えないでしょう。

 

まとめ

今回は、なりすましアカウントによるネット掲示板での投稿によって名誉毀損で訴えられたケースについて判例をもとにしてお伝えしました。

 

SNSなどの投稿では、誰かを罵倒したり、侮辱したり、名誉を毀損するようなものを見受けることが少なくありません。

 

名誉毀損の要件を満たしていると判断できるケースについては、訴訟を視野に検討することをおすすめします。

 

泣き寝入りするのではなく、ぜひ弁護士にご相談ください。

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「弁護士費用保険の教科書」編集部

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