パワハラによる労災認定と裁判事例

今回は、パワハラ被害にあった際の戦い方について解説します。

会社組織で働く全ての人が被害にあう可能性があるため、過去の判例も含めて、ご参考にしていただければと思います。

こんなこともハラスメントに!?

ハラスメント行為には「徹夜しても終わらないほどの分量の仕事を一人に押しつけて帰る」等の明らかなものもあれば、「飲み会を強制する(飲みハラ)」「カラオケで歌が苦手な人に無理やり歌を歌わせる(カラハラ)」など、人によってはハラスメントだとは気付かないものもあります。

このような場所では、会社外・労働時間外であることもあり、無意識のうちに自分がハラスメントの加害者にも被害者にもなってしまう危険性があるため、注意が必要です。

ハラスメント行為は、例え会社の外であったとしても上下関係は変わらないので、プライべートでの出来事だとは取り扱われないケースが多いことを覚えておきましょう。

法律的観点からみるパワーハラスメント

パワーハラスメントで一番よくある事例は、その事実となる証拠を集めて、被害者が会社そのものを訴え、損害賠償を求めるというものです。

それに加え、会社からのハラスメントによって、うつ病や自殺などに追い込まれてしまったケースでは、その精神疾患を労働災害として労災認定をしてもらうという方法もあります。

この場合は、その精神疾患と労働の間に因果関係が存在することを証明し、個人で労基署に労災認定をしてもらうことによって、国からの補助を受けることができます。

そもそも労災保険とは?

労災保険とは、労働者災害補償保険法に基づく制度で、業務上災害または通勤災害によって労働者の負傷、疾病、障害、死亡等がおこった場合、労働者またはその遺族にむけて所定の保険給付を行う制度です。

また、それら労働者の社会復帰の促進、その遺族の援護、安全及び衛生の確保を行い、労働者の福祉の増進に寄与することを最終的な目的としています。

また、ここでの労働者には、正社員だけでなくパートやアルバイトなども含まれています。

業務上災害とは、業務が原因となって発生した災害のことで、労働基準法にも、使用者が療養補償その他の補償をしなければならないと定められています。

しかし、内容は次のとおりで、補償金額が高額となるため規模によっては会社の経営にも大きく影響してきます。

○療養補償(診察や治療、手術、薬剤など)
○療養の費用の負担
○休業補償(平均賃金の100分の60)
○障害補償(障害の程度によってあらかじめ定められた日数分の平均賃金)
○遺族補償(平均賃金の1,000日分)
○葬祭料(平均賃金の60日分)

ですがここで、しっかりと労災保険に入っていれば、労働者が確実に補償を受けられるようになるだけでなく、事業主も義務である労働者に対する補償負担を軽減することができるのです。

労災保険の加入によって、被災労働者だけでなく会社側も守られていることが分かります。

そして、この労災保険は精神障害についても適用されます。精神障害は外部からのストレスによって発病するケースがほとんどです。

そのため、怪我等の時と同様に、仕事中・通勤中に強いストレス受け、それが原因で精神障害が発病したという因果関係が証明されれば、労災保険を利用することは可能です。

ただ、その人が同時に複数のストレスを抱えていた場合などは、その精神障害は本当に仕事が原因によるものなのか、またそれを証明できるものがあるのかを調査する必要があるため、労災認定に至るまでにはそれなりの時間と労力がかかるでしょう。

パワハラの裁判事例を見てみよう

ここで一つ、仕事が原因で精神障害を患い自殺してしまった飲食関係の労働者の遺族が起こした裁判についてご紹介します。

遺族は労基署に労災認定を求めますが遺族補償給付不支給処分となってしまったために、その取消しを東京地裁に求めました。

この裁判ではうつ病・自殺の原因が本当に業務によるものなのかが要点として争われました。

判例

事件名:遺族補償給付不支給処分取消請求事件
争点:飲食店運営会社料理長のうつ病・自殺につき子が遺族補償給付不支給処分の取消しを求めた事案(原告勝利)
参照法案:労働者災害補償保険法7条
労働者災害補償保険法16条
判決理由:〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-自殺〕
〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-遺族補償(給付)〕
裁判年月日:2009年5月20日
裁判所名:東京地
事件番号:平成19行(ウ)727
裁判結果:認容
引用元:http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/08766.html

事案概要

飲食店及び社員食堂等を運営する会社に勤務していた給食事業料理長(給食事業部門の管理職)が、うつ病を発症し、自殺したことについて、遺族が、うつ病発症及び死亡は業務に起因するものであるとして、労基署長のなした遺族補償給付不支給処分の取消しを求めた事案である。

東京地裁は、料理長が部下から各種の中傷を受け、それが発端となって、関連会社との関係悪化を懸念した会社から糾問的な事情聴取を受け、また、自らが長年従事していた給食事業部門を外されるという仕事の質の変化が客観的に予想される事態となっていたこと、この出来事が部下による嫌がらせ行為や会社と関連会社との関係悪化の要因となったこととも一体となって心理的負荷を与えたと認定して、料理長の心理的負荷の総合評価は「強」であったと評価した。

さらに、うつ病発症後の業務についても指針にいう「配置転換があった」に該当し、それによる心理的負荷の強度は少なくとも「中」程度のものであり、他方、業務以外にうつ病発症につながる心理的負荷や個体側要因も認定できないとして相当因果関係を肯定し、請求を認めた。
引用元:http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/08766.html

まとめ

精神障害による労災認定はその判断が難しいこともあり比較的実例が少ないです。

しかし、様々なハラスメントが問題になっているいま、会社そのものを訴えるのではなく、労災保険を利用するという手があることを知っておくといいかもしれません。

もし、不当な扱いに悩んだら、早めに弁護士へ相談してみましょう。弁護士であれば、相談者の権利を最優先に解決を図ってくれます。

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