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会社の遅刻による罰則規定。減給はどこまで許される?

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投稿日:2015年10月12日 更新日:

会社の遅刻による罰則規定。減給はどこまで許される?

昨日は、二十四節気の『大寒』でしたね。

寒くなると、朝、布団から出るのが嫌になりますよね。

布団からなかなか出られずに、遅刻してしまう…なんて経験を皆さんお持ちではないでしょうか。

今日は、(会社の)遅刻と罰金のしくみについて考えてみましょう。

ありがちな遅刻による罰則規定

寝坊して遅刻を心配する男性
会社の遅刻についてよく聞く罰則規定として、「遅刻○回で欠勤1回とみなす」というものがあります。

遅刻の回数については2回や3回などのバリエーションがありますが、このような制度が許されるのか、例を使って検討します。

Y会社の社員として働くXさんの労働条件は、月20日の8時間労働で月給16万円というものです。

ところで、Y会社の就業規則には、「遅刻3回で欠勤1回とみなす」という条項が定められています。

Xさんは今月、寝坊と二日酔いと忘れ物でそれぞれ1時間ずつ3回の遅刻をしてしまいました。

そのため、Y会社の就業規則の条項に従って、給料から1日分の給料にあたる8000円が差し引かれてしまいました。

ノーワーク・ノーペイの原則

Y会社の就業規則によって、Xさんは3回の遅刻を1回の欠勤とみなされ、給料から8000円を差し引かれているのですが、もしこの規則がなければどうなるはずだったのでしょうか。

タワーレコードには「ノーミュージック・ノーライフ」というキャッチフレーズがありますが、労働法の世界には「ノーワーク・ノーペイ」というキャッチフレーズがあります。

「労働なくして給料なし」という労働法の原則を表しています。

今月のXさんは、1時間ずつ3回遅刻しましたので、Y会社に3時間分の労働を提供していません。

これをノーワーク・ノーペイの原則にあてはめれば、「3時間分の労働なくして3時間分の給料なし」ということになります。

Xさんは1日あたり8000円の労働条件で働いているので、1時間あたりの給料は1000円です。

つまり、ノーワーク・ノーペイの原則から導き出される給料の差引額は3000円という計算になります。

ただし、この減給処分を行えるのは、就業規則に「遅刻した場合にはその時間の給料を差し引く」旨の定めがあるときだけです。

ノーワーク・ノーペイを超える差し引き

遅刻による減給に凹む社員

さて、Y会社の就業規則によって、Xさんは3000円分しか遅刻していないにもかかわらず、給料から8000円を差し引かれたようです。

もしや、これって違法なんじゃないでしょうか?

ノーワーク・ノーペイの原則とはまた別の概念として、ペナルティとしての減給という考え方があります。

懲戒としての減給については、労基法91条に定められていますので、条文をみてみましょう。

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の(減給)額が平均賃金の1日分の半額を超え、(1ヶ月の減給の)総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

※()の箇所ははわかりやすいようにこちらで加えたものです。

これをXさんの給料にあてはめてみましょう。

「平均賃金の1日分の半額」とは、8000円×1/2=4000円となります。

そして、「1賃金支払期における賃金の総額の10分の1」とは、16万円×1/10=1万6000円となります。

よって、Xさんに対する、労働基準法に則った減給の限度額は、1回あたり4000円、1か月あたり1万6000円と計算されます。

1回あたり4000円まで減給できることを考えれば、Xさんが3回遅刻したことによる減給は1万2000円までなら大丈夫。

そう考えれば、Xさんに対する8000円の減給はアリということになります。

しかし、Y会社の就業規則では、「遅刻3回で欠勤1回とみなす」という条項がされているのでしたね。

これは、遅刻を3回したことで罰を1回与える、ということですから、遅刻3回で1日分の給料を差し引くのは労働基準法91条違反となります。

よって、Y会社の就業規則の「遅刻3回で欠勤1回とみなす」という条項は無効と考えられます(ただし、このような解釈には争いがあります)。

手当や査定への影響は?

ところで、「皆勤手当」「精勤手当」のような出勤率によって支給される手当を、遅刻によって差し引くことは、ノーワーク・ノーペイの原則や労基法91条には反しないのでしょうか。

このような手当は、通常の給料とは別に支給されているものであり、どのような条件で支給されるかは会社が自由に定めることができます。

これらの手当は、会社が労働者の無遅刻無欠勤を奨励・実現させることが目的ですから、その要件を満たさない労働者に手当を支給しないことは、ノーワーク・ノーペイの原則や労基法91条には違反しません。

また、査定によって遅刻を昇給やボーナスの金額に反映させることも何ら問題ありません。遅刻が勤務態度の評価に影響を与えることは当然であり、そもそもノーワーク・ノーペイの原則や労基法91条とは関係ない問題だからです。

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平賀 律男(パラリーガル)

平賀 律男(パラリーガル)

1982年,北海道生まれの33歳。北海道大学大学院法学研究科にて労働法を専攻し,修士号を取得。2008年からは,パラリーガル(法律事務秘書)として法律事務所に勤務し,企業法務・破産管財などの法律実務に携わるかたわら,在野の労働法研究者としての活動も続けている(2005年より日本労働法学会会員)。著作(共著)に『ワークルール検定問題集』『おしえて弁護士さん 職場のギモン48』(以上,旬報社)『18歳から考えるワークルール』(法律文化社)など。好きな食べ物はラーメン。
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