妻(夫)が子供を連れて出て行った(連れ去り)時の具体的な対処法

妻(夫)が子供を連れて出て行った(子の連れ去り)時の具体的な対処法離婚成立前、子どもの親権についての話し合いがまとまっていない最中、突然相手に子どもを連れ去られてしまった場合、どのような対処をするのが良いのでしょうか?

相手のした行為はかなり強引ですが、そこで自身も同じような手法を取ってしまえば、子どもへの精神的な悪影響・その後の話し合いで親権者に選ばれなくなる可能性などの不穏因子が生じ得ますので、冷静な判断のもと行動を起こすようにしましょう。

今回は、妻(夫)が子どもを連れて出て行った場合についてご説明していきます。

子の引き渡しについて考えられる方法

相手に対して子の引き渡し請求をするのであれば、考えられる方法は下記の通りです。

子の連れ去り時の対応策

・子の監護に関する処分としての子の引き渡し審判の申し立て

・上記に付随する審判前の保全処分としての子の引き渡し仮処分

・人身保護請求

・刑事告訴など

なお、子の引き渡しについては、調停の申し立てによって請求することも可能ですが、そもそも話し合いに応じてもらえる状況ではないと言えるため、はじめから審判(裁判官の判断による決定)の申し立てをしたほうが良いでしょう。

子の監護に関する処分とは?

子の監護に関する処分とは、簡単に言えば家庭裁判所での手続きの1つで、子どもの監護者を決めるために行います。

今回のように、離婚前であれば、離婚が成立するまでの期間について、子の監護者を暫定的に決めることができ、その間は一時的に指定された監護者が子と過ごすことになります。

そして、裁判所から指定された監護者のもとに子がいないのであれば、相手に対して子の引き渡し請求が可能になるというわけです。

まさに合法的な子の引き渡しと言えるでしょう。

なお、上記でも少し触れていますが、子の引き渡しは調停による話し合いでも可能です。

しかし、子の監護に関する処分については、離婚のように調停前置主義といって、必ず調停からはじめなければならない事項ではないため、迅速さを優先するためにも審判の申し立てからしたほうが良いでしょう。

相手が話し合いに応じる姿勢を見せているのであれば、調停での申立でも良いかもしれません。

子の引き渡しの仮処分とは?

子の引き渡しの仮処分とは、上記の審判決定が出される前に仮の処分としての決定を求め、これが認められれば子の引き渡し請求ができるというものです。

あくまでも仮ではありますが、仮処分が下されれば裁判官の審判決定を待たずとも引き渡し請求が可能となるため、迅速さに長けています。

少しでも早く子どもを引き渡してもらいたい場合は、必ず審判前の保全処分としての子の引き渡しの仮処分も求めましょう。

人身保護請求とは?

この連れ去り人身保護請求とは、子の引き渡しに応じない相手に対し、裁判所が指定日に子を連れてくるように命令を出し、それでも応じない場合に相手を刑事施設に拘束する手続きです。

現在、子の引き渡しについて人身保護請求の申し立てがされることはあまりありませんが、相当な緊急性がある場合に限り、利用されることがあります。

過去には、相手が暴力的で子どもの監護状況に問題が見られるような場合や、上記の審判決定が出たにも関わらず間接強制や直接強制(強制的に引き渡しを実現させる法的手続きのこと)にも応じない場合などに利用された例があります。

なお、人身保護請求をする場合、必ず弁護士に依頼をしなければならない点に注意しましょう。

弁護士が代理人についていない場合は、人身保護請求の申し立てをすることができないと法律で定められています。

刑事告訴は最終手段

犯罪被害を警察に訴える刑事告訴については、基本的には最終手段と考えておきましょう。

ただし、子どもに命の危険があるといった緊急事態であれば、上記の手続きよりも最優先で警察に訴えましょう。

また、刑事告訴とまではいかなくても、事情を聞いた警察官が相手を説得し、子どもが引き渡されたという例も過去にはあります。

このようなことからも、刑事告訴を検討する場合は、違法性の強い連れ去り行為だったり、児童虐待が行われていると想定される場合に限られると言っても差し支えないでしょう。

具体例①離婚前の子の引き渡し審判が認められた例

夫からの暴力行為に嫌気がさし、単身で家を出ることにした妻が申し立てた子(小学4年生)の引き渡し審判についてです。

すでに夫婦の別居から数ヵ月が経過していましたが、いくら夫に対して交渉をしても子の引き渡しに応じてくれないため、家庭裁判所にて子の引き渡し審判を申し立てることにしました。

家庭裁判所の調査員が子ども自身についての調査をしてみると、子どもは常に「母に会いたい、母と暮らしたい」と言っていたようです。

また、夫は妻と子の面会交流についても非協力的でありましたが、妻は面会交流については積極的な姿勢を見せていました。

こうした状況をかんがみた結果、裁判所は子どもの情緒の安定を優先させ、また、面会交流に協力的であった妻を子どもの監護者として指定することにしました。

その際、夫から即時抗告(審判決定に対する不服申し立てのこと)が出されましたが、裁判所はこれを認めず、原審の決定を維持しています。

審判決定前は子の引き渡しを拒否していた夫ですが、裁判所からの引き渡し命令が届いたことから、これに素直に応じています。

具体例②子の引き渡しの仮処分が認められた例

すでに別居をしている妻のもとへ、夫が離婚についての話し合いをするために訪れました。

しかし、意見の食い違いから激しい口論になってしまい、夫は妻の制止も聞かずに子どもを連れて出て行ってしまいました。

その後、夫の母が子どもの面倒をみているようで、緊急性は見受けられませんでしたが、まだ子どもが1歳の乳幼児であることから、妻は子の引き渡し審判とこれに付随する仮処分の申し立てを行いました。

裁判所は、まだ乳幼児であることと、年齢的に見ても母親の監護養育が必要である年代であり、かつその機会を失くすことは子の将来に心の傷跡を残す可能性が高いと判断し、また、育児の不得手な父親のもとにいるよりも、母親に養育されることによって子の情緒も安定することから仮の監護者を母と定めた上で、子の引き渡しの仮処分を命じました。

具体例③人身保護請求を認めないとした例

上記にて軽く触れていますが、子の引き渡しに際して人身保護請求が利用されなくなった理由は、「子を連れ帰ることが子の幸福に反することが明白でなければならない」といった判決を裁判所が下したためです。

具体的には下記のような実例があります。

夫婦の不仲が原因となり、夫は子を連れて家を出ることにしました。

これに納得できなかった妻は、子の引き渡しを求めて夫の住まいへと訪れ、半ば強引に連れ出しをしたところ、夫もこれに対抗し、路上で子の奪い合いとなり、最終的には夫が実家へ連れて帰ることになったのです。

妻はこれを理由に人身保護請求を求めたのですが、裁判所はこの請求を認めませんでした。

というのも、子はすでに夫の母(子の祖母)の世話を日常的に受けていて、本来の母を求めることもなく平穏な生活を送っていました。

よって、現在ある平穏な日常を壊すことが子の幸福に当たるとは言えず、また、父が子を連れ帰ること自体に違法性や拘束性もないと判断したというわけです。

実際に、夫婦の一方が子を連れ帰る行為は、親である以上は想定され得る行為です。

また、なんの違法性もない状態で子が親と共に過ごしている現状を壊す請求が、「子の幸福に反することが明白」と言い切れないため、裁判所が出したこの判決から、子の引き渡しに際して人身保護請求が利用されなくなっていきました。

具体例④子の引き渡しに刑事手続きが利用された例

夫が別居中の妻のもとへ訪れ、病気がちな2歳の子どもを無断で連れ去りました。

妻は、もともと夫の家族に対するDVが原因で別居をしていたため、子の身体を心配し、人身保護請求を行いました。

しかし、夫は2回もされた保護命令をすべて聞かず、また直近で子どもの手術があったにも関わらず、別県へ転居し暮らし始めていたのです。

妻はこのように自分勝手な夫に対して「未成年略奪罪」を理由に告訴し、結果として夫は逮捕されることになりました。

こちらはかなり極端な例ではありますが、現実には逮捕まで発展しなかったとしても、警察官が介入するだけで進展も期待されるものです。

しかし、警察官は緊急性がない限りは「民事不介入の原則」に従い、夫婦間の問題にはあまり関与したがらないため、緊急性に加え事件性もないことには警察官の介入は期待できません。

まとめ:親権争いを解決し離婚をスムーズに進めるなら弁護士の助けを借りよう

親権トラブルは、子どもの精神面にも影響を及ぼす可能性があります。

自分一人では、適切に離婚問題を解決できるか不安な場合は、弁護士への相談を視野に入れてみましょう。

弁護士に相談をする際には、弁護士の費用がかかるケースに備えて、弁護士保険に加入しておくこともおすすめです。

実際に訴訟などになった際の弁護士費用を軽減することが可能です。

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今回の記事を参考にして、上手に弁護士保険を利用しましょう。