愛犬や愛猫はどうなる? 離婚に際してのペットの所有権問題

愛犬や愛猫はどうなる? 離婚に際してのペットの所有権問題

離婚で犬や猫と別れるのがつらい

一昔前まで、ペットといえば番犬として防犯の為に飼う家庭がほとんどでした。

ところが、時代の変遷に伴い、最近ではペットは『大事な家族の一員』という位置づけのご家庭がほとんどになってきました。

中には、わが子のように大事に世話をしていらっしゃるご家庭やご夫婦もいらっしゃいます。

特に、何らかの事情でお子さんがいないご夫婦の場合は、わが子の代わりとして、大切にペットを育てていらっしゃるご夫婦も多いのではないでしょうか。

そのようなご夫婦が離婚に直面した場合、離婚後のペットの扱いは大きな問題となってきます。

今回は、離婚に際してのペットの諸問題について、解説したいと思います。

「弁護士保険ミカタ」1日たったの98円で高額な弁護士費用を補償

ペットに親権は存在するの?

まず、離婚に際してのペットの法律上の扱いについてですが、現在の日本の法律では、ペットは「モノ」として扱われます。

飼い主としては、飼い主というより親として、ペットというより可愛いわが子、というお気持ちでいらっしゃる方も多いと思いますが、現状ではペットは、人間と同じ生き物であっても、無生物である車や家具や家などと同じ扱いになってしまいます。

そのため、ペットの所有権の問題は、親権の問題ではなくて、財産分与の問題となります。

つまり、離婚に際して、二人で築き上げてきた財産をどう分けるかという扱いになるのです。

その場合、生き物は、その性質上半分に分けるということはできませんので、どちらかが引き取るということになります。

引き取ることで揉めるということは、夫と妻のどちらもペットに対する思い入れが強いという場合が多いでしょうから、引き取りたい側としては、相手が納得するように他の財産を譲ったり、その補償となる金銭の支払いをしたりするのが一般的です。

相手が取引の材料に使ってきた場合はどうすればいいの?

一方、ペットへの愛情からではなく、相手のペットへの思い入れの深さを利用しようとして、ペットの所有権を主張してくる場合もあります。

その場合は、結婚前から飼っていたペットであれば、飼い主に所有権があります。

なぜなら財産分与というのは、夫婦が共同で築き上げた財産が対象となり、婚姻以前からそれぞれが有していた財産に対しては、それぞれの所有物として扱われるからです。

では、婚姻期間中に飼い始めた場合は、どうすればいいのでしょうか?

その場合は、例えば、狂犬病予防法に基づく畜犬登録上の所有者を確認してみましょう。

これが、婚姻期間中にペットの世話を担っていた実質的な飼い主である証拠の一つとなるでしょう。

相手にペットの養育費を請求することはできる?

ペットは生き物ですから、餌代や病院代、美容院代なども掛かります。

これらの費用について、相手方に養育費のような形で請求することはできるのでしょうか?

まず、養育費の法律的な意味ですが、これは、未成年の子に対する親の義務です。

言い換えると未成年の子から親への請求権となります。

つまり、未成年の子供は親に対して、自分が成年に達し自立するまでの費用負担を求めることができます。

離婚は両親の都合ですが、子供はそれとは関係なく、大人になるまで世話を受けるべき存在ですから、考えてみれば当然の権利ですね。

一方、ペットの場合ですが、ペットの場合は成人ならぬ成犬となっても、飼い主の世話なくては生きていくことは難しいでしょう。

しかし、現状ではモノとして扱われますので、そのような権利を有していません。

では、どうすればいいのでしょうか?

ペットの今後についての契約を取り交わしましょう

ここで離婚先進国であるアメリカの実情を見てみましょう。

アメリカではすでに、離婚に際してペットの所有権を巡る問題は大きなテーマとなっており、これを巡る訴訟は、増える一方だそうです。

そして、これに対する一つの解決策として、お互いに弁護士を雇って、ペットの共同親権ともいうものを設定するという方法がとられています。

離婚でペットの養育費はどうなる?

つまり、法律上の根拠をもとに、強制的にペットの親権や養育費を相手方に求めるということはできないのですが、その一方で、お互いの合意があれば、どのような契約を交わすことも基本的には自由です。

これを契約自由の原則といいます。

公序良俗に反したり、法律に反するような内容でなければ、離婚に際してペットの共同親権ともいうべき所有権を取り決めたり、その中で、飼育するための費用負担を取り決めたり、ペットの面会交流権ともいうべきものを取り決めることも可能でしょう。

なお、面会交流権については、離婚後はペットの飼い主とならない方は、会えないペットに対して、その飼育費用を負担し続けるモチベーションが維持しにくいと考えられますから、費用負担を求めたい場合は、これを認めることを検討しましょう。

離婚に際しての契約内容については、法律の専門家へ相談を

日本では離婚の形態は、90%以上が協議離婚の形で行われているといわれています。

協議離婚というのは、夫と妻の話し合いと離婚届の提出のみで成立する離婚をいいます。

協議離婚を行う場合は、まず、双方が対等な立場で話し合いを行い、その話し合いの内容を口約束で終わらせず、きちんと書面で記録し、契約書の形で残しておくことが重要です。

話し合いの進め方や離婚協議書の作成については、もちろん当人同士で進めることもできますが、中には不満足な内容で折り合いをつけている例が多く見られます。

できれば法律の専門家にアドバイスを受けたり、代理を依頼したりする方が、双方にとっても、そしてペットにとっても満足のいく結果が得られることでしょう。

今回は離婚に際するペット問題についてのお話でした。

日本でもアメリカのように双方が弁護士を立てて、離婚時にペットの親権や養育費負担について協議する時代になりつつあることをお分かりいただけたかと思います。

少子化が進む日本では、これからもペットが子供の代わりとなる家庭が増えることが予想されますので、この問題からは目を背けられませんね。