未払いの残業代を請求したい!労基署と弁護士のどっちに相談すべき?

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※この記事は『ワークルール検定問題集』などの著者であり、労働法の研究者である平賀律男氏による寄稿文です。

2013年の10月から12月まで、「ダンダリン」というドラマが放送されていたのを覚えていますか?

竹内結子さん扮する労働基準監督官・段田凛が、労働基準法に違反しているブラック企業を見つけてはガンガン追及して是正させていくという、現代版の勧善懲悪ドラマです。

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私はわりと楽しく見ていたのですが、視聴率のほうは残念ながら平均7.5パーセント(関東地区。ビデオリサーチ社調べ)と低調でした。

今日は、労働問題を解決するにあたって、労働基準監督署(労基署)や労働基準監督官(労基官)が果たす役割や、弁護士に依頼することのメリット・デメリットなどについてお話をしたいと思います。

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労基署(労働基準監督署)ってなに?

労基署(労働基準監督署)とは、労働条件の確保や改善、労災保険の給付などを行う組織です。

厚生労働省の下部組織である都道府県労働局(全国47か所)のさらに下部組織として、全国に300か所以上設置されています。

労基署の職員のうち、労働条件の確保や改善の仕事に関わる人のことを労基官(労働基準監督官)といいます。

現時点で全国に3000人以上の労基官がおり、この人数は徐々に増加しています。

この労基官は、「労働Gメン」と呼ばれることもあり、労働基準関連の法令違反について捜査したり逮捕したりできる、労働関係の警察官的な存在なのです。

労基官の役割は?

労基官(労働基準監督官)は、事務所や工場などを抜き打ちで訪問して、労働関係法規に違反していないかを検査することができます。

これを「臨検」といいます。

俗に言う「労基署が入る」というやつです。

労基官は臨検において、たとえば、労働契約締結時に労働条件がしっかり明示されているか、会社が就業規則の周知や届出をしているか、会社が労働時間をちゃんと把握して、未払いの残業代などを発生させていないか、などを検査します

労働基準法を守っていない会社はどうなるの?

臨検の結果、会社が労働関連法規に違反していることがわかったら、労基官は「指導」や「是正勧告」を行い、会社に法令違反の状態を解消するよう指示します。

その後は、会社のほうから「改善しました」という報告を出させることもありますし、労基官のほうから会社へ再監督に行って改善状態を確認することもあります。

ふつうであれば、これで法令違反の状態が改善されるのですが、まれに労基官の是正勧告等に従わない会社があります。

会社の対応が悪質だと判断された場合には、刑事事件に切り替えられて、警察などとともに捜査を行ったり、使用者が逮捕されたりすることもあります。

労基署に相談すればすべて解決するのか

労基署は、労働関係法規に違反していそうな業種や会社をリストアップして、定期的に臨検に回っています。

この臨検のことを「定期監督」といいますが、この定期監督以外に、労働者が労基署に駆け込んで会社の違反を申告することにより、労基官が臨検に行くという「申告監督」というものもあります。

これはちょうど「警察に被害届を出す」ようなイメージであり、サービス残業や賃金不払いなどの法令違反があれば、労基官が会社の状態を検査して、指導してくれるのです。

ただし、たとえば職場いじめなど、労働関連法規に違反しているといえない事例では、動いてくれません。

また、ここで注意しなければいけないのは、

労基官の仕事は、あくまで会社の違法状態を是正するところまでであり、労働者個人個人の違法状態についてまで救済してくれるわけではない

、ということです。

これは、先ほどのイメージで言えば、警察が民事不介入なのと似ています。

たとえば、あなた(労働者)がサービス残業(未払い残業代)について労基署に申告したとしましょう。

この場合、申告に基づいて臨検に入ってサービス残業状態を解消してくれるところまでが労基官の仕事であり、労基官が労働者に代わって未払い残業代を請求してくれるわけではありません。

請求するのはあくまで労働者個人個人なのです。

未払い残業代や何かを請求したいなら弁護士に相談すべし

しかし、個人で請求するといっても、そもそもどんなふうに請求したらいいか見当もつかない状態なのがふつうだと思います。

個別の権利を実現してくれることについて一番強いのは、なんといっても弁護士です。

契約書や就業規則、タイムカード等の資料を持っていって相談すれば、法的見解に沿った計算や請求、その後の交渉までを引き受けてくれますし、会社が応じなければ訴訟によって解決してくれることもあります。

ただし、他の方法より強力なぶんおカネも掛かりますし、何より会社との関係がこじれて、その後働きにくくなってしまう可能性が高いことが難点といえます。

最近は、弁護士会や他の士業(司法書士・社会保険労務士など)が、無料または安価で法律相談を受けてくれる窓口を設けたりしていますので、まずはそこで相談して、弁護士などの専門家に請求を手伝ってもらうことのメリット・デメリットをよく聞いて、正式に依頼するかどうかを検討する必要があるといえます。

※関連ページ→「未払い残業代請求の弁護士費用っていくら?実際にシミュレーションしてみました

他にもこんなサービスが

労基署は個別の請求には立ち入らないし、弁護士などはおカネが掛かるし……、ということで、もっと気軽に労働問題を相談できる窓口として、都道府県労働局や一部の労基署が「総合労働相談コーナー」という窓口を設けています。

ここでは、無料で広く労働相談を受け付けて、個別の労働問題を解決するための情報提供や助言をしてくれます。

また、相談や助言だけで問題が解決しなさそうなときは、労働局に設けられている紛争調整委員会の「あっせん」という手続を利用することもできます。

学識経験者などがあっせん委員となって、労使双方の主張を聞いたり事実関係を調査したりして、双方が納得できるような結論を提案してくれます。

裁判などと違って強制力のない手続ではありますが、そのぶん労使間の感情のもつれが少なくて済むこと、そして何より無料であること、といったメリットがあります。

労働問題について困ったことがあれば、まず総合労働相談コーナーに行ってみるのがよいかもしれません。

それでも解決できない場合や、迅速かつ法的根拠に基づく強制力のある手続きをしたい場合には、やはり弁護士を通じて解決する方法が最も有効です。

こういった労働トラブルに備えて弁護士保険に加入する人が増えていますので、労働トラブルのリスクと、弁護士保険という仕組み自体をもっと一般市民に知って欲しいと切に願っています。

今回は、労基署を中心に、労働問題の相談窓口や解決方法について考えてみましたが、いかがでしたでしょうか?

次回は、残業代の支払い方について法的な問題を整理してみたいと思いますので、お楽しみに。

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