当番弁護士制度とは?費用や国選弁護人との違い

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刑事事件は、テレビドラマなどではよく扱われるテーマですが、当番弁護士など刑事事件をめぐる制度については、一般の方には知られていないことが多いと思います。

今回は刑事事件解決のカギを握る「当番弁護士制度」についてご説明いたします。

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当番弁護士制度とは

当番弁護士制度とは、弁護士が、刑事事件で逮捕された人のところに行き、面会(接見といいます)を1回行う制度のことです。

当事者やその家族等から依頼があった場合、弁護士会が弁護士を派遣してくれます。

当番弁護士は、警察官の立会いなしで、接見をすることができます。

そして、逮捕された人の味方という立場から、言い分を聞いてくれたり、取り調べを受ける際の注意点についてのアドバイスをしてくれたりします。

この制度は、弁護士の団体である日本弁護士連合会により提唱され設置されています。

被疑者には弁護権が保障されている

憲法では、刑事事件の被疑者に対して弁護権を保障しています。(日本国憲法第34条)

しかし、この権利が憲法に定められた当初は、あくまでも被疑者とされた者の自助努力で弁護人をつけるしかありませんでした。

そうすると実質的に、弁護士を雇う資力のない者は、この弁護権という権利を行使できないことになってしまいます。

実際に、弁護人がいない被疑者が、取り調べに際してウソの自白を強制されることも多く、このことは冤罪の温床となっていました。

戦後の有名な冤罪事件としては、免田事件や財田川事件があります。

これらの事件は、死刑が確定した後に、再審請求が認められ無罪となっています。

このような重大な事態に鑑み、1990年に大分県弁護士会で当番弁護士制度が始められ、1992年には、全都道府県で実施されることとなりました。

当番弁護士を呼ぶにはどうすればいいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察に逮捕された人が、当番弁護士を呼びたいときは、警察署や裁判官の職員に「当番弁護士をよんでほしい」と要請をすればいいことになっています。

警察官や裁判所の職員は、派遣の要請があったことを弁護士会に連絡し、弁護士会から当番になっている弁護士が派遣されてきます。

その他、逮捕された人の身内の方が、当番弁護士の派遣を要請される場合は、それぞれの都道府県の弁護士会に連絡をして、派遣を要請すれば、当番弁護士が派遣されることになります。

連絡先電話番号については、それぞれの弁護士会のホームページに掲載されています。

国選弁護人とは

似たような制度に国選弁護人制度があります。国選弁護人制度もその根拠は、憲法にあります。

憲法第37条第3項には、

刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

と定められています。

国選弁護人がつけられる対象は、一昔前までは被告人(起訴された人)に限られていました。

一般に、自白が強要されるのは、起訴される前の被疑者段階ですから、これでは逮捕された人の弁護権の保障は不十分になります。

そこで、国選弁護人は、2006年から被疑者段階でもつけられるようになりました。

但し、対象となる事件には制限があり、例えば器物損壊、単純賭博、痴漢というような犯罪は対象に入っておらず、殺人というような凶悪事件と比べて身近で、発生頻度が高い犯罪の疑いで逮捕されている場合は、国選弁護人の選任を要求できません。

※関連ページ→「国選弁護人とは?費用や私選弁護人とのやる気の違いはあるのか

国選弁護人と当番弁護士の違いは?

①誰が費用を負担するか

この二つの第一の違いは、弁護人の費用をだれが負担しているかという点にあります。

国選弁護人は、国がその費用を負担しています。

憲法第37条で「国でこれを附する」といっている意味はこのことを指します。

したがって、国選弁護人の費用は、税金で賄われているわけですから、利用できる人に一定の制限をつけざるを得ません。

そこで、一定の資力がない人(50万円以上の預貯金)という制限が設けられています。

一方、当番弁護士制度は、弁護士による自発的で無償の活動、いわばボランティアです。

この場合も財源には制限があります。

こちらの場合は、利用できる人に資力に関する制限は設けられていませんが、弁護士の手弁当で運営されている制度ですので、前述のとおり、当番弁護士が来てくれるのは、一つの事件につき1回限りです。

②弁護士を呼ぶことができる事件に制限がある

第二の違いは、弁護士を呼ぶことができる事件に制限があるかという点にあります。

国選弁護人制度の方はそもそも、被告人(刑事事件に関して公訴を提起され、その裁判がまだ確定していない者)を対象としています。平成18年から被疑者段階(警察や検察などの捜査機関から犯罪の疑いをかけられ捜査の対象となっている者)にも拡充されたのですが、現在、その対象事件は、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件」と制限されています。

一方、当番弁護士制度には、対象事件の制限はありません。

③勾留状の有無

第三の違いは、勾留状(裁判所が被告人・被疑者を勾留するために発する令状)の有無にあります。国選弁護人は、勾留状が発せられていなければ呼ぶことができません。

刑事手続き上、検察官は、警察官が逮捕した場合であれば72時間、検察官が逮捕した場合であれば、48時間以内に裁判所に勾留請求を出さなければなりません。

言い換えると、逮捕された人は、その間は味方がいない状態の中で、一人で乗り切らなければなりません。

当番弁護士であれば、連絡を受ければすぐ駆けつけることが可能です。

引き続き弁護士に依頼したいときは?

当番弁護士制度は、接見を1回無料で行う制度です。

したがって、その後も弁護士の協力を得たい場合は、次の3つの方法があります。

私選弁護人に依頼する

資力がある人の場合は、この方法をとることになります。

こちらの場合は、弁護士との自由な契約になりますので、弁護士費用については、契約内容次第ということになります。

国選弁護人制度を利用する

資力要件(持っている流動資産が50万円以下)を満たし、かつ、一定以上の重大事件の場合は、こちらが利用できます。

弁護士費用については、原則として、国の負担となります。

被疑者弁護援助制度を利用する

国選弁護人制度における資力要件は満たしているが、対象犯罪にあたらない場合に利用できる制度です。

日弁連から業務委託を受けて法テラスが扱っている制度であり、国選弁護人制度を補充するものです。

弁護士費用については、法テラスが立替払いしてくれます。

あくまで立替払いなので,事件終了後に費用の償還を求められることもありますが、多くの場合,償還不要となるようです。

最後に

今回は当番弁護士制度を中心に、刑事事件をめぐる制度について考えてみました。

多くの人は当事者となる可能性は低いと思いますが、テレビドラマや映画で刑事ものを見るときに制度も意識して見ていくと楽しみ方が増えますのでオススメです。

ちょっとマニアックな楽しみ方ですけどね。

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