わざわざ離婚調停まで申して立てて、ようやく調停調書を作成するところまでいったというのに、ふたを開けてみれば相手は合意内容(約束)を守ろうとしません。
離婚調停では話し合いがまとまらず審判にまでもつれ込み、やっとの思いで審判決定が出ました。
しかし、相手が決定した事項を守ってくれません。
このように、審判や調停で取り決めた約束を相手が守らないということは、実際によくある問題です。
相手が決定事項に対して無視を決め込み、誠実な対応を見せようとしないときには、裁判所に対して申し出る必要があります。
今回は、約束を守らない相手に対して、こちら側からできる裁判手続きを注意点と共にご紹介いたします。
履行勧告を申し立てる
まずは、調停を取り行った家庭裁判所に履行勧告を申し立てることができます。
調停調書の謄本さえ手元にあれば、費用は一切かかりませんので、手軽に申し立てることが可能です。
履行勧告とは?
履行勧告とは、調停で定められた事項が正しく履行(実際に行うこと)されているかどうかを裁判所が直接調査をし、正当な理由もなく履行がされていなかった場合、相手に対して義務の履行を促す勧告をすることをいいます。
裁判所が動くことから、自ら相手に対して催促をするよりも遥かに効果があるでしょう。
ただし、この履行勧告には法的拘束力があるわけではないので、そのまま無視を決め込まれてしまうこともあるため、注意が必要です。
単純に履行を促すだけでしかありません。
履行命令を申し立てる
それでも義務の履行がなされない場合には、履行命令を申し立てましょう。
基本的には履行勧告と変わらないのですが、こちらには10万円の過料が設けられています。
履行がされなかった場合は、この過料を相手に課すことができます。
とはいえ、この過料が申立人の手元に入ってくるわけではありませんので、特にメリットになるわけではありません。
ただでさえ相手側にお金がない状況の場合、さらに追い詰めてしまう可能性もありますので、一概にこの手続きが有効であるとはいえないのです。
金銭的な問題である場合、履行命令はあまり実用的ではありませんので、注意するようにしましょう。
強制執行は最終手段
履行勧告・履行命令をしたにも関わらず、まるで誠意ある対応を見せない場合には強制執行手続きを検討しましょう。
強制執行手続きとは、国家機関の力をかりることにより相手の義務を強制的に履行させる手続きのことをいいます。
まさに、債権取り立ての最終手段ともいえる手続きですので、これでも回収できないとなった場合は、正直なところ泣き寝入りをするしかありません。
とはいえ、回収の効果は抜群ですので、最後の手段という気持ちで臨むようにしましょう。
申し立てをする裁判所に注意
強制執行の申し立てをする裁判所は、家庭裁判所ではなく地方裁判所になります。
また、差押えをする財産によって、管轄となる地方裁判所が違いますので注意が必要です。
金銭債権を執行する場合は、被告の住所地を管轄する地方裁判所になります。
また、不動産を執行する場合には、不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。
間違えて申し立てをしてしまった場合、そもそも受付をしてもらえないか、移送の手続きがされることになります。
強制執行手続きの種類について
強制執行手続きには「間接強制」・「直接強制」・「代替執行」という3つの種類があります。
ここでは、離婚問題時に主に使われる直接強制と間接強制についてご紹介いたします。
①間接強制
間接強制とは、義務を履行しない相手に対して、一定の期間内に履行されなければ間接強制金を別途課すことを警告し、心理的な圧迫から自発的な支払いを促す手続きです。
通常は金銭債権の回収について、この手続きをとることはないのですが、養育費や婚姻費用などの離婚問題においては、間接強制による執行もできるとされています。
しかしながら、直接強制とは違い差押えなどの強制力はなく、あくまでも自発的な支払いを促す手続きなので、それでも支払いがなされない場合は直接強制による差押えをするしかありません。
このことからも、こちらは主に金銭債権の回収ではなく、面会交流などを実現させるために行う手続きです。
②直接強制
相手側の財産を直接差し押さえることによって、強制的に義務の履行を実現させる方法です。
養育費や婚姻費用などの支払いが行われないときは、直接強制によって金銭の回収を実行します。
主に金銭債権の差押えの対象となるのが、銀行預金や給与となります。
給与を差し押さえる場合、手取り額の4分の3の金額と33万円とを比較して、どちらか少ないほうの金額までしか差押えはできません。
しかし、養育費のような扶養義務に直接関わる場合は、2分の1まで差し押さえることが可能です。
強制執行手続きの事前準備
財産の差押えをするとなったら、事前に準備しておかなければならないことがあります。
まずは、差押えの対象となる相手の就業先や銀行預金口座を知っておかなければなりません。
これが判明していないことには、そもそも強制執行を申し立てることができないので注意が必要です。
また、通常は事前に債務名義(請求権の事実)の送達を行わなければなりませんが、調停の場合、調停調書等(これが債務名義)の送達は裁判所の書記官が行いますので、送達証明書の申請のみ行います。
他にも、執行分の付与が必要となる場合もあります。
執行分とは、簡単にいえば「強制執行をしてもいいですよ」という裁判所からのお許しのことをいいます。
このように履行勧告などとは違い、強制執行手続きには多少煩雑な事前準備が必要になりますし、申立書の作成についても法律知識が必要となります。
もちろん自分でやってできないことはありませんが、自身で取り行う自信がない場合には、専門家である弁護士に依頼をしてしまったほうがスムーズに進むでしょう。
強制執行の費用について
申し立てには通常の訴訟などと同じく、印紙代や郵券代がかかります。
印紙代は請求債権1件につき4,000円分が必要です。
また、郵券については裁判所によって運用が違いますので、事前に確認をする必要がありますが、おおまかに3,000円程度と考えていれば十分です。
あまり離婚の問題時に取り扱われることはありませんが、不動産の強制執行の場合には、請求権の額に応じて60~200万円の執行費用がかかってしまいますので、注意が必要です。
強制執行は正当な権利です
相手が審判や調停にて取り決めた事項を、なかなか約束を守ってくれないからといって、泣き寝入りする必要はありません。
相手に支払い能力がない場合は、いくら強制執行をしたとしても回収するのは困難ではありますが、支払い能力があるにも関わらず支払いがなされていない、などということがあってはなりません。
また、面会交流についても、約束は必ず守られなければならないものです。
正当な理由もなく拒絶をされるようなものではありませんので、しっかりと履行してもらえるように手続きを取っていきましょう。
そのために履行勧告や強制執行といった手続きがあるので、利用しない手はありません。
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