離婚時に子どもがいる場合、どちらが親権を持つか必ず決めなければなりません。
その際、必須ではありませんが、養育費の取り決めをしている方も多いのではないでしょうか?
しかし、「養育費の取り決めはすでにあるのだから将来も安心」、「この養育費で生活し続けるのは将来が不安」といったように、取り決め後に様々な考えを巡らせている方が多いのも事実です。
では、養育費というのは後から増額、減額することができないのでしょうか?
実は、離婚時に取り決めた養育費というのは、その後の事情次第では増額や減額を求めることが可能となっています。
ただし、一度取り決められた金額を変更するというのは簡単なことではありません。
そこで今回は、養育費の増額を請求できるケースと、逆の立場の場合に請求を拒否できるケースについて詳しくご説明していきます。
こんな疑問にお答えします
A.一度決めた養育費の取り決めを変更するには、変更が必要になるだけの正当な理由がある場合に可能です。すでに取り決められた養育費は、あくまでも離婚時の双方の経済状況を鑑みた上での合意にすぎないため、その後の双方の状況に多大な変化がある場合に、養育費の増額(または減額)は認められます。
ただ、養育費を支払う義務者が増額請求を拒否したい場合は、拒否すべき明確な理由があるときに認められる可能性があります。
養育費の増額の有無は、子どもにとって、そして自身の生活にとって非常に重要な事柄です。養育費に関するトラブルを解決するには、プロである弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
養育費は増額(減額)されるのか?
離婚時、双方の合意のもと取り決められた養育費の額を変更するには、まず相手に対して増額を請求しなければなりません。
相手が増額に合意してくれないのであれば、調停といった裁判所での手続きを利用し、最終的には審判(裁判官が双方の事情を鑑みて決定すること)にて認めるか否か決定されます。
とはいえ、一度決まった取り決めを変更するには、変更が必要になるだけの正当な理由がなければ、まず認められないといえます。
しかし、すでに取り決められた養育費は、あくまでも離婚時の双方の経済状況を鑑みた上での合意にすぎないため、その後の双方の状況に多大な変化がある場合に、養育費の増額(または減額)を請求するというのは、十分正当な理由になり得るのです。
将来なにがあるかは常にわからないため、養育費の額を固定にするということ自体が公平であるとはいえず、事情次第では増減があってもおかしくはありません。
どういった理由であれば養育費の増額が認められるのか?
では、どういった場合に養育費の増額が認められることになるのでしょうか?
こちらは、具体的にいえば、
・子ども、または監護親(子どもと一緒に暮らしている側の親のこと)が重い病気やケガに遭ってしまい予定外の収入の減少や医療費が必要になった場合の増加
などが主なものです。
その他、あまり例は見られませんが、貨幣価値の変動や物価の急上昇など、生活していく上で過去とは比にならないほど費用がかかるようになった場合も、養育費の増額が認められる可能性はあると言えます。
ただし、養育費を支払う側に資金的な余裕がないことには、いくら増額を求めても現実に増額ができないケースも存在します。
養育費の増額請求が調停や審判にまで発展した場合、請求する側の生活状況だけでなく、支払う側の生活状況(特に収入面)も加味して判断することも覚えておきましょう。
まさに、無い袖は振れないとはこのことです。
具体的な養育費増額請求の方法
すでに上述しましたが、さらに具体的な養育費増額請求の方法についても見てみましょう。
養育費増額請求がしたい場合、まずは支払う側との話し合いをしましょう。
話し合い
直接連絡が取れる状態であれば、電話や口頭でも構いませんし、それができないのであれば、メールや郵便物といった方法でも良いです。とにかく、相手に増額してもらいたいという意思をしっかり伝えることが大切です。
ここで話し合いがスムーズに進む相手であれば、穏便に話し合いだけで増額を済ませられるケースも期待できます。
なお、この段階以下でも言えることですが、もし、相手が増額を認めるようであれば、必ず書面にして残しておきましょう。
一番理想的なのは、「公正証書」にして残しておくことですが、それが難しくても何かしらの書面が残っていれば、相手の支払いが滞った際の証拠になってくれるため、口約束だけで済ますことがないように注意しましょう。
内容証明郵便
相手から返答がまったくない場合や話がこじれてしまった場合は、「内容証明郵便」を利用し、将来発展すると予想される、調停や審判に提出できる証拠を用意しておきましょう。
内容証明郵便は、郵便局が送付した内容を証明してくれる郵便なので(内容が事実かどうかの証明ではない点に注意)、相手に対して養育費増額を求めた自らの意思を示す証拠になってくれます。
ただし、内容証明郵便の送付は、相手への心理的な圧迫を与える目的でも送付されるため、送付するのは相手から無視されたり、話し合いがこじれたりした場合のみにしておきましょう。
特に、弁護士に依頼し、弁護士名入りの内容証明郵便となると、心理的な交渉(ある種の戦い)の合図といっても過言ではないため、送付する際は穏便に解決できなくなる可能性があることを考慮してください。
参考ページ→「内容証明を弁護士に任せた場合の費用と自分で出す場合の手順」
調停・審判
内容証明郵便を送付したにも関わらず、なんら進展がなかった場合は、裁判所にて「養育費増額調停」を申し立てることになります。
調停というのは、結局のところ話し合いになるため、今までとなんら変わっていないようにも感じますが、裁判所の調停委員が話し合いに介入するという点で大きな違いがあります。
調停では、人生経験豊富な有識者である調停員が裁判所から選任されて話し合いに立ち会ってくれるのです。二人だけでは解決しなかった問題が解決する可能性は十分にあります。
しかし、それでも解決しない場合は、最終的に審判手続きへと移行し、裁判官が双方の事情を鑑み、養育費の増額を認めるか否かを判断します。
養育費の増額請求を拒否するには?
では、逆に増額請求をされてしまった場合、どのように拒否すれば良いのでしょう?
話し合いにより拒否ができる
上記を読んでいただければわかるとおり、養育費の増額は話し合いから行われます。
内容証明郵便を送付されたり、調停の申し立てをされたりとなると、自らに大きな負担がかかってくるため、可能な限り話し合いの段階で拒否できるのが良いです。
しかし、不誠実な態度で話し合いに臨めば、当然、弁護士名入りの内容証明郵便や、裁判所からの調停呼び出し状といった書面が届くことになりかねません。
そこで、可能な限り相手からの請求に誠実に向き合い、それでも増額が難しい理由を伝えていきましょう。
その際は、自身の現在の生活状況だけでなく、収入についてもしっかりと相手に伝えてください。
増額請求を拒否できるケース
養育費の増額を拒否できるケースは、以下のような場合です。
- 養育費の増額をすべき事情が明確でない場合
- 養育費の増額を認めるべき事情があっても、養育費を決定した際に既に予測できた場合
- 養育費の受け取る側と公平でない場合
上記のように、増額をする必要のない場合はもちろん、元々取り決めた際に増額が予測できた場合は拒否ができます。
また、養育費を支払う義務者の収入減少があるときは公平が保たれないため、拒否できる理由となります。
もちろん収入証明まで出す必要はありませんが、それが相手を説得する材料になり得るのであれば、収入証明を出すのも1つの方法です。
ただし、相手に現在の勤務先を知られていない場合は、あえて勤務先を教える必要性はない(養育費の支払が滞った場合、最悪のケースは差し押さえされる危険もある)ため、相手にどこまで現在の自身の情報を伝えるかの線引きには気を配りましょう。
※関連ページ→「養育費の強制執行(差し押さえ)に必要な条件と手続きの流れ」
うまく交渉できない場合はプロである弁護士に
上記のように、養育費の増額請求、そしてそれを拒否するには、相手との交渉が非常に重要になってきます。
しかし、もとは夫婦でも離婚の経緯もあって冷静な話し合いができない、もともと交渉事が得意ではない、といった事情がある場合は、プロである弁護士に依頼するのがもっとも賢明です。
弁護士であれば、相手が納得できる(せざるを得ない)だけの理由を提示し、有利に交渉を進めていくことができます。
また、調停にまで発展してしまった場合も、裁判官が判断するポイントを押さえた法的な主張も可能となっていますので、有利な状況下で手続きを進められます。
養育費の増額の有無は、子どもにとって、そして自身の生活にとって非常に重要な事柄です。
不利にならないためにも、プロである弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
ただ、弁護士へ相談するとなると、費用に関して不安になる方も多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。
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しかし、弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に、弁護士に支払う費用を抑えられます。
著作権侵害の被害に対応するのであれば、弁護士保険も視野に入れましょう。
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記事を振り返ってのQ&A
A.一度決めた養育費の取り決めを変更するには、変更が必要になるだけの正当な理由がある場合に可能です。すでに取り決められた養育費は、あくまでも離婚時の双方の経済状況を鑑みた上での合意にすぎないため、その後の双方の状況に多大な変化がある場合に、養育費の増額(または減額)は認められます。
Q.どういった理由なら養育費の増額が認められるの?
A.子どもの進学など環境の変化による養育費の増加や、子ども、または監護親(子どもと一緒に暮らしている側の親のこと)が重い病気やケガに遭ってしまい予定外の収入の減少や医療費が必要になった場合の増加などが理由として成立します。ただし、養育費を支払う側に資金的な余裕がない場合には、いくら増額を求めても現実に増額ができないケースも存在します。
Q.養育費を支払う側は、増額請求を拒否できるの?
A.以下のような理由があるときに拒否できる可能性があります。
- 養育費の増額をすべき事情が明確でない場合
- 養育費の増額を認めるべき事情があっても、養育費を決定した際に既に予測できた場合
- 養育費の受け取る側と公平でない場合