そもそも離婚調停というのは、正式には「夫婦関係調整調停」と言います。
この夫婦関係調整調停の申し立て書には、離婚を希望するか円満を希望するかというチェック欄があり(裁判所によって書式に違いはあり)、どちらを希望するかにより、「離婚調停」「円満調停」と区別されることになっています。
では、この2つの調停には、どのような違いがあるのでしょうか?
また、同時に起こすことは可能なのでしょうか?
今回は、この2点について詳しくご説明していきます。
離婚調停と円満調停は申立人の希望による
離婚調停は、申立人が離婚を希望している場合に利用されることになり、円満調停は、申立人が円満な婚姻生活を希望している場合に利用されます。
なお、どちらの調停を申し立てたとしても調停委員や裁判官が申立人の味方になってくれるわけではありません。
あくまでも中立として話し合いをリードするだけです。
よって、離婚調停だからといって離婚が成立しすい、円満調停だからといって夫婦関係が円満になりやすいなどの違いがあるわけではありません。
調停による話し合いが離婚・円満どちらに進んでいくかについては、双方の主張や話の流れによっても異なることになりますので、どちらの調停になったとしても、結論に大きな違いが出ることはないでしょう。
双方の意見が食い違っているのであれば、どちらの調停だったとしても調停は不成立となるだけなのです。
つまり、この2つの調停の違いは、「どちらが先に調停での話し合いを希望したかによる違い」と言えるでしょう。
それぞれの調停について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
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同時に調停を起こすことは可能だが・・・
なお、離婚調停と円満調停は同時に起こすことは可能です。
ただし、管轄が同一の裁判所への調停申立ての場合、2つの調停は併合されてしまうことがほとんどです。
調停を管轄する裁判所というのは、相手方の住所地の裁判所となっていますので、双方が同一の裁判所管轄の地域に住んでいるのであれば、調停を申し立てる裁判所は同じになります。
同じ裁判所で調停をするというのに、わざわざ2回に分けて調停をしているというのは非常に効率が悪いため、裁判所側に併合されることになるでしょう。
ただ、調停を申し立てるというのは、費用も労力もそれなりに必要なので、相手の考えと異なる調停を申し立てるという行為自体が、自らの意思を相手に示すことに繋がるという意味はあるのかもしれません。
管轄裁判所が異なる場合はどうなる?
では、別居などの理由によって調停の管轄となる裁判所が異なる場合はどうでしょうか?
この場合、話し合いを希望している側が相手の裁判所に合わせることが多いといえます。
もちろん合わせなければならない理由はありませんが、調停というのは相手方が話し合いの場に出てきてくれないことには進めていくことができません。
こうした理由から、調停の管轄は相手方が来やすいように相手方の住所地の裁判所とされているのです。
別々の裁判所に調停を同時に起こすことはもちろん可能ですが、果たして意味があるのか?と言われれば、なんとも言い難いのです。
なお、別居中の双方が調停による話し合いを希望しているのであれば、合意管轄といって双方が合意した裁判所にて調停を行うことも可能です。
双方が遠方にて別居中なのであれば、間をとった裁判所を合意管轄とするのも調停をスムーズに進めていくためには良いのかもしれません。
どちらも夫婦関係の調整が目的
ここまで2つの調停について見てきましたが、そもそもは離婚調停も円満調停も夫婦関係の調整が目的となる話し合いの場です。
離婚調停だからといって、夫婦関係を円満にしたい旨の主張をしてはいけないわけではありませんし、逆もまた然りです。
よって、この2つの調停に大きな違いはないと言えます。
あくまでも、調停の申立人がどちらを希望しているか、という違いのみです。
また、同時に調停を起こすことにメリットが全くないか?と問われれば、同意し難いところではありますが、ほとんどメリットはないでしょう。
大切なのは調停の呼び名の違いではなく、調停の内容にあるのです。
自分一人では、適切に離婚問題を解決できるか不安な場合は、弁護士への相談を視野に入れてみましょう。
弁護士に相談をする際には、弁護士の費用がかかるケースに備えて、弁護士保険に加入しておくこともおすすめです。
実際に訴訟などになった際の弁護士費用を軽減することが可能です。