ほとんどの方にとっては家庭裁判所に行くこと自体、初めてなのではないでしょうか。
裁判所と聞くと、とても緊張しますね。
初めての方におすすめの離婚調停の準備としては、
①裁判所へのアクセスを確認しておく
②服装や話し方等のマナーを意識しておく
③調停において聞かれるであろう内容について考えをまとめておく
以上の三点があげられます。
裁判所へのアクセスを確認しておく
実は、不安に思う人が一番多いのが、裁判所へのアクセス方法ではないでしょうか。
初めて行く場所、しかも裁判所となると、緊張するのは当たり前だと思います。
裁判所の場所は、裁判所の公式ホームページに地図と合わせてアクセス方法が書いてありますので、まずはそこを確認しましょう。
第一印象が大切ですから、できれば、開始の10分前には到着できるようにセッティングしておくとよいでしょう。
裁判所の中でも、最初から待合室で待機することが指定されることもあれば、先に書記官室に寄って出頭した旨を職員に伝えてほしいと指定されることもあります。
裁判所によって運用が異なるのが実情です。
ちなみに、東京家庭裁判所では申立人待合室と相手方待合室が分かれており、調停が開かれる各階にそれぞれの待合室があります。
期日指定時に待合室も指定されます(「16階申立人待合室」等)ので、その指定に従えばよいでしょう。
不安であれば、事前にご自身の調停が開かれる裁判所に電話で聞けば教えてもらえます。
相手から申し立てられた場合には、裁判所から来た期日呼出状に場所や時間が書いてありますから、期日呼出状もチェックしましょう。
服装や話し方等のマナーを意識しておく
特に服装の指定があるわけではありませんが、やはり清潔感のある服装の方がより良い印象を持ってもらえるでしょう。
スーツでなければならないということではなく、誠意を見せる場に行くにふさわしい服装を意識することが大切です。
話し方やペースも意識しておくといいでしょう。
離婚についてご自身の色々なお気持ちがおありでしょうから、いろいろと話したくなるお気持ちは非常にわかります。
ただ、ここであまりにご自身のペースで話をし過ぎると、調停委員から感情的な人と思われ、以降話をさえぎられてしまったり、論理的な話ができない人という印象をもたれてしまったりして、不利な展開になってしまうこともあります。
せっかくですから、印象よく進めたいものです。
うまく話を進められる自信がない場合には、弁護士に依頼して弁護士に同行してもらうことも一つ有益な手段です。
初めて裁判所にいく場合、緊張するあまりうまく話せなかったり、逆に話し過ぎてしまったりすることがあります。
もちろん、調停委員も配慮して話を聞いてくれますが、せっかくの内容も話し方ひとつで伝わり方が違うものです。
友人同士で「相談」されるのと、「愚痴」られるのとでは、聞く側の気持ちの持ちようが違うということを想像すれば、イメージしやすいのではないでしょうか。
調停において聞かれるであろう内容について考えをまとめておく
ここまで、裁判所へのアクセスの確認、服装や話し方等のマナーの確認をしてきました。
今後の人生を決める重要な場ですから、あともう一歩踏み込んで、調停において聞かれるであろう内容について考えをまとめておくのも大切です。
調停委員や裁判官からの質問に対して、しどろもどろになってしまっては、残念ながら良い印象を持ってもらうことはできないでしょう。
特に、進行役の調停委員へ好印象を与えることができれば、その後の調停を有利に進めていくことが期待できますので、てきぱきと回答できるように準備しておきましょう。
初回の調停期日で質問されることはある程度予測がつけられる
調停は、調停委員によっても進行の仕方は様々です。
ただ、一方で、初回の調停期日での質問は、ある程度予測をつけて準備しておくことができます。
初回の期日では、裁判官や調停委員は、その時点で提出されている申立書(申立人作成)と答弁書(相手方作成)のみを見ていることが大半です。
しかも、調停における申立書と答弁書は、調停が話し合いを目的としていることもあり、あまり深入りした内容を書かないことが実務上多く、裁判官や調停委員は、当該夫婦の詳細な情報については知らないことの方が多いのです。
そこで、調停委員は、その後の話し合いに必要だと考えられる情報について尋ねてきます。
初回できちんと回答することができれば、この人は離婚調停に向けて覚悟をもって準備をしてきたのだろう、真摯に話し合う気があるのだろう、という好印象を与えることができます。
下記は、多くのケースで聞かれる典型的な質問事項ですので、しっかりと回答を用意しておくととても安心です。
離婚調停1回目の典型的な質問事項について
離婚調停の雰囲気
画像引用元:新潟家庭裁判所
ご自身が離婚を申し立てた申立人側なのか、離婚を申し立てられた相手方側なのかという立場によっても聞かれる内容が異なります。
以下、詳細に見ていきましょう。
申立人と相手方とで共通して聞かれる可能性が高いこと
①現在の夫婦生活の状況について
・別居しているのか同居しているのか
・別居しているのであれば、いつから別居しているのか
・なぜ別居に至ったのか
・夫婦の生活費とその負担状況
②子どもがいる夫婦の場合、子どもに関すること
・監護している当事者に対しては子どもの通学状況や最近の生活態度等、
・監護していない方の当事者に対しては子どもとの面会交流の状況等
・子どもの養育費の負担状況。特に、子どもが私学に通っていたり、子どもに高額な医療費がかかったりしている場合、その負担状況等
③離婚した場合、離婚後の生活についての考え
・経済的にどのような生活設計を立てているか。
・子どもがいる場合、子どもの親権はもちろん、監護計画や、面会交流も含めて育児についてどのように考えているか
その他にも、交際から結婚に至る経緯や結婚当初円満な関係を築けていたころの様子などが聞かれる場合もあります。
夫婦によって、婚姻期間の長さや不和となるに至った経緯等が異なりますので、そこに合わせて調停委員も事情を聴取してくると考えておけばよいでしょう。
離婚調停申立人の場合
※上記と重複する点もあります。
・なぜ離婚を決意したのか
・離婚についての話し合いをしたかどうか
・話し合いをしたのであれば、その時の相手方の反応等
・どのような離婚条件を考えているのか
・自らに非がある場合(たとえば不貞をしている場合や暴力があった場合等)、その事実についてどう考えているのか
・反省しているのであればそれを相手方に伝えたか
離婚調停相手方の場合
※上記と重複する点もあります。
・調停を申し立てられてどう感じたか
・離婚を申し立てられるまでの経緯
・夫婦関係や離婚についてはどう考えているのか
・話し合いの機会があったのであればその時の様子や気持ち
・離婚するとしたらどういう条件がよいか
離婚は、離婚を決意した側にとっても、離婚を求められた側にとっても、大きな変化をもたらす問題です。
しかも、子どもがいる夫婦の場合は、子どもにとっても大きな変化であることを忘れてはいけません。
離婚後、親権がなくとも、子どもが自立するまでは親として成長を支え、見守る必要があります。
子どもの側からみても、両親の離婚は自分の力ではどうにもできない大きな出来事であり、さらに自分のせいなのではないかと自分を責め、その後の心の発達に大きな影響を与えうる問題です。
それらを含めて、「離婚」という重大な出来事について、十分な検討ができているのか、覚悟ができているのか、調停はそのようなことを試される場でもあります。
予定外のことを聞かれることも
上述のとおり、裁判所によって、調停委員によっても調停の進行方法は様々ですし、個別の事情によって配慮すべき点が異なりますので、想定外のことは必ず起こるという気持ちで臨んだ方がよいでしょう。
しっかりと準備していくことも大切ですが、準備したとおりにいかなくても、冷静に対応できれば問題ありません。
そもそも調停は訴訟とは異なり、話し合いの場です。
真摯な態度で話し合いに参加していることが伝われば、うまく話すことができなくてもそれほど大きな問題にはなりません。
ただ、一つ注意してほしいのは、嘘をつかないということです。
とっさに出まかせを口にするのではなく、あくまでも事実に基づいた発言をするように心がけましょう。
嘘をつくと、後々矛盾が生じる可能性が十分にあるのみならず、嘘が発覚した時、それまで調停委員や裁判官から得た信頼を失います。
誠実に話し合うことを心がけ、事実はどうだったのか?をよく思い出し、考えてから発言をするようにしましょう。
(嘘をついてしまった場合のリスクについては、「離婚調停で相手が嘘ばかりつく時の2つの対処法」をお読み下さい)
自ら積極的に発言する必要はない
緊張するとうまく思い出せないこともありますので、前もって用意した回答をメモなどにまとめておく、メモを見ながら話をすることは問題ありません。
ただ、注意すべきは、調停委員から聞かれてもいないことについて、自ら積極的に話しをしてしまうことはないようにしたほうがよいということです。
調停委員は他にもたくさんの調停を同時に受け持っており、過去にも調停を何件も成立に導いたことがある経験のある人たちです。
ですから、調停委員によっては、ある程度自らのやり方や進行方法をイメージしていて、それに則って進めていきたいという方もいます。
そのペースを乱すような話し方をしてしまうと、好印象を与えることができなくなります。
また、話し方のマナーの箇所でもお伝えしましたが、人の話を聞くことはきちんと聞こうとすればするほど労力のいる作業ですから、あまりにヒートアップして話をしてしまうことは避けた方がよいです。
ほとんどの調停では、調停委員が一通り話を聞いた後に、「申立人(相手方)から何かありますか?」と聞いてくれますので、どうしても伝えておきたい内容は、そのような問いかけがなされた時に初めて回答するのがベストでしょう。
緊張のあまり話したい内容の半分も伝えることができなかったという方もたまにいらっしゃいます。
また、調停委員とうまが合わなかったり、先入観を抱かれてしまい、以降ご自身の話をうまく展開することができないという状況になる方もいらっしゃいます。
このような状況を打開する一つの方法としては、2回目以降からでも代理人をつけて一緒に調停に赴き、代理人からきちんとフォローをしてもらうという方法も一案です。
調停が始まってからの注意点
まず、調停中、裁判官や調停委員はしきりにメモを取ることがありますが、ご自身もなるべく調停の流れは簡単でもよいのでメモを取るようにするとよいでしょう。
メモがあれば、後でどんな話題が出たのか、どんな話し合いがされたのかということを整理するのに有効です。
そして、今後話し合いがどのような展開になっていくのかを考え、聞かれるであろうことを予想しておくこともできるかもしれません。
不安があれば弁護士に相談を
どうしても今後の展開に不安を覚えるようでしたら、そこはやはり離婚についてのプロである弁護士に相談をしたほうが良いでしょう。
ほとんどの方が離婚調停は初めてかと思いますが、弁護士であれば既に何十件、何百件と離婚調停の経験があるでしょう。
もともと持っている法的知識に加え、さらに経験があるとすれば、今後の流れをご本人以上に具体的に予想し、必要な対応策を提案することができます。
そのような弁護士と二人三脚で進めていくという方法も、今後の人生のことを踏まえると一考に値するのではないでしょうか。
依頼をすれば費用負担という問題はありますが、相談だけであればそこまで費用は高くありません。
※関連記事→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由」
上記のとおり「離婚」という出来事の重大さを考えると、費用負担のことを考慮したとしても、さらに大きな何かを得ることができるかもしれません。
また、そのような場合に備えて弁護士保険に加入しておけば、保険でカバーすることもできますので、安心です。
吉田 美希(法律事務所クロリス代表弁護士)

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