焦ってはダメ!離婚調停で相手が嘘ばかりつく時の対処法

 


吉田美希弁護士(クロリス法律事務所)

この記事の執筆者

法律事務所クロリス代表弁護士
吉田 美希

焦ってはダメ!離婚調停で相手が嘘ばかりつく時の2つの対処法法律問題を扱っていると、相手方が根も葉もないような嘘を繰り返す場合があります。

そもそも、当事者同士の見解がまったく異なるからこそ法律問題にまで発展しているわけですから、あまり驚くことではありません。

ただ、これがことに家庭内の問題となると、厄介です。普段、私たちは生活するうえで、他人との間であれば、契約書や覚書といった正式な形でなくても、何等かのやり取りをし、そのやり取りを意図的にではないとしても、メールなどに残しておくことが多いでしょう。

しかしながら、家庭内の問題となると、夫婦で口頭の約束をしただけですとか、夫婦喧嘩の口論の末一応出た結論について双方がまったく違う解釈をしたまま放置されていたということがままあります。

そして、そういった場合、証拠といえるような資料がほぼ残っていないことが多いのです。

まず、相手方の主張がそもそも「虚偽」なのか冷静に考える

これは私の経験上、すべての夫婦が必ずしも離婚を完全に決意して調停を起こしているわけではなく、修復の余地があるケースもあるということを前提に説明させていただきます。

事実は人によってとらえ方が異なりますから、自分と相手方の主張が異なるからといって、それがすべて悪意に基づくとは限りません。

たとえば、妻が作った料理が夫の口に合わず、夫が「料理がおいしくない、もっとおいしく作れないのか」といったとしましょう。

このような言い方をされれば、妻は傷つきますし、その頻度が多ければ「モラハラ」と評価できる面もあります。

ただ、一方で、夫も残業続きでクタクタになっていて、そんな余裕がない時に、思わず放ってしまった一言であったらどうでしょう。

もちろん、長く夫婦生活を続けたいのであれば、夫の側は、まずは料理をつくってくれた妻に感謝し、その上で味については多めに見るか、せめて妻が傷つかないような言い方をすべきです。

言ってしまった後、心に余裕ができたときに謝ることも必要です。

しかし、人間そのような余裕が常にある時ばかりではありません。

食器の洗い方が妻の気に入る方法ではなかったというケースでは、夫婦で逆の立場になるかもしれません。

夫の方が、妻から粗末な扱いを受けていると感じ、モラハラと主張するかもしれません。

ずっと一緒にいる夫婦だからこそ、このようなことが起きます。

それでも、夫婦関係を継続していきたいという意思がお互いにあれば、大事にはなりません。長期的なスパンでまた関係を修復できるでしょう。

しかし、このようなことがちょうど育児が大変な時期に重なってしまったり、他方の親族トラブルと重なってしまったりすると、お互いのストレスが増え、大事になってしまうことがあります。

その結果、離婚話となり、調停まで進んでしまったという夫婦もいます。

こういった夫婦の場合、まだやり直す余地がある可能性もあります。

申し立てた側も冷静に考えるきっかけがなくかっとしたまま調停を申し立てているというケースもあります。

あるいは、相手方に対し、離婚という切り札を出すことで、自分との関係について最後真剣に考えてほしいという訴えであることもあります

あまり駆け引きは推奨されるものではありませんが、そういうコミュニケーションの取り方をする方もいるということです。

離婚調停(円満ではなく)の相手方代理人となり、苦渋の決断をして調停に出頭したら、申立人側から「本当に離婚という選択でいいのか?」という回答がかえってくるということも幾度も経験しました。

それだけ思い詰めていたということかもしれませんね。

さて、離婚調停の場であっても、もし、あなたがやり直したいと考えているのであれば、相手方の主張を虚偽だといって責め立てることは効果的ではありません。

上述のように、ある事実についてのとらえ方の違いの域を超えていない場合もあります。

上述のケースの場合、夫が自分の言い方が悪かったということを謝罪の上、妻とどうしていきたいのかについて、これから自分の態度を改めていく決意と一緒に伝えれば、修復の余地があります。

一方で、夫が「お前の言っていることは全部虚偽だ」と怒りにまかせて反論すればするほど、妻の気持ちは離れていってしまうでしょう。妻の態度がきっかけである場合も同じことが言えます。

まずは相手方の主張がそもそも「虚偽」なのかを冷静に見極めるべきです。

これは自分の態度の悪い面をも振り返る作業でもあるので、楽なことではありませんが、相手方との関係をまだ大切に思っているのであれば、やってみる価値は大きいことです。

訴訟となれば、このような話し合いは難しいでしょう。

闘いというより、あくまでも話し合いである調停の場であるからこそできることだと思います。

私は、このような経緯を経て、実際に修復したご夫婦も見ています。

もちろん、調停の後、お二人は夫婦としてお互いに努力していく必要があり、楽な道のりではないと思います。

それでも、修復余地のある夫婦が離婚せずに済むということは、弁護士としても人としてもうれしい気持ちになります。

相手方が本当に虚偽の事実を主張している場合

さて、一方でどんなに冷静に見極めても、相手方が虚偽の事実を主張しているとしか言えないというケースもあります。

例えば、典型的なのかDVやモラハラのでっち上げです。

上述したとおり、事実は人によってとらえ方が異なりますが、片方のとらえ方が極端に歪んでいたり、被害妄想的であったりする場合、DVやモラハラの主張をされてしまうことがあります。

また、稀にですが、離婚したいという気持ちが強く、かといって離婚後の生活保障がないため、慰謝料を請求するために、虚偽の主張をでっちあげるケースがあります。残念なことです。

そのような場合、ご自身で調停を進めていると、気付けば調停委員は相手方のその嘘を信じ、あたかも自分が悪いかのように見られてしまうようなこともあるかもしれません。

裁判官や調停委員は家庭内で起きていたことなど知る由もないため、実際には口がうまい人からうまく言いくるめられてしまうこともゼロではありません。

また、まだまだジェンダーバイアスが根強く残っていますので女性の方が被害を訴えているケースでは、調停委員は、特にその主張を信じやすいという傾向もあります。

家庭内に問題なので、これといった証拠が残っていることも少ないでしょう。ただむやみに反論しても、埒があきません。
冷静に対応策を見極めましょう。

まずは、相手方の主張に証拠があるのかどうかがポイントです。

日記を出してきたり、友人に相談したメールの内容を出してきたり、といったケースがありますが、日記やメールはあくまでも主観です。

もちろん、日記やメールが決め手になるケースもあるので、ケースバイケースですが、証拠が提出されたからといって、そこでもう終わりだと諦めるのは早いでしょう。本当に証拠として、信用性の高いものなのか、見極めるべきです。

また、一方で、自分の方に、相手方の主張を覆すことができるような証拠がないかを考えましょう。

仕事のスケジュール的にどうみても相手方の日記の内容は虚偽や誤解であるとか、同じ日に自分も友人に相談したりしていてその内容が全然相手方の主張と異なる等、何かしらの糸口が出てくる可能性があります。

話し合いの場である調停において証拠を出してよいのか

調停はあくまでも話し合いの場ですし、冒頭で書いたとおり、夫婦関係が修復するケースもあるので、いきなり臨戦態勢で応じることは確かにあまりお勧めできません。

とはいえ、相手方が明らかに虚偽の主張をしている場合、それを正す作業は誠実に話し合いを進める上で不可欠です。

また、調停が不成立に終わった場合、次は離婚訴訟に移行することとなりますが、その点では調停は裁判の前哨戦という意味合いも少なからずあります。

※関連記事→「離婚調停不成立の場合の選択肢と離婚訴訟を起こすメリット・デメリット

調停段階で提出することができたにも関わらず、その証拠を裁判まで提出しなければ、後に裁判となったときに裁判官から不信を抱かれる可能性もあります。

ですから、上述のように、明らかに事実と異なる主張を相手方がしている場合、調停委員や裁判官に正しく事実関係を把握してもらうためにも、証拠は提出してかまいませんし、むしろ積極的に提出すべきです。

相手が嘘をつけばつくほど、それが事実と異なると判明したとなれば、今まで嘘をついたぶんだけ、裁判官や調停委員の心証が悪くなります。

調停が終始相手側のペースで進んでしまうと焦りも出てきてしまいますが、すべての嘘に反論しようと躍起になっていても、それこそ相手の思う壺です。

一つ嘘をつき崩せばあっという間に崩れていきますので、その機会を冷静にうかがうよう戦略的に進めていきましょう。

調停で虚偽の主張をすることは偽証罪には問われないのか?

偽証罪(刑法169条)は、「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3ヶ月以上10年以下の懲役に処される」というものです。

刑法上の犯罪はそれにより罰せられる場合の不利益の重大性に鑑み、罪刑法定主義といって、法律で明確に構成要件(どのような場合に当該犯罪が成立するのか)と刑罰が明確に定められていなければなりません。

偽証罪は、上記のとおり、刑法169条で「法律により宣誓した証人」が「虚偽の陳述をしたとき」に成立します。

調停における当事者は、法律により宣誓した証人ではありませんから、離婚調停において虚偽の事実を述べることが偽証罪になるということはありません。

ただ、刑事罰にならなければよいというものではありません。

虚偽の主張をすれば、当然裁判所の心証は悪くなり、良い結果は見込めません。

また、それ以上に、長年連れ添った相手方や相手方の関係者、さらには調停進行に尽力している裁判所に対してあまりにも不誠実です。

※関連ページ→「【判例つき】民事裁判の証言や陳述書で嘘をついたら偽証罪に問えるのか

調停での解決を諦め訴訟提起をするという方法も

さて、どうにも相手の嘘に振り回されてしまい、それを崩すこともできず、どうやら調停委員もそれを信じ込んでいるというような場合、打つ手がないという事態も起こりえます。

そのような場合、無理して相手方の要求をのんでその後の生活で後悔するよりは、調停での解決を諦め、証拠とそれに裏付けられた主張で闘っていく訴訟での解決に希望を託すという選択肢もおかしなことではありません。

調停はあくまでも話し合いですから、双方の合意がなければ成立することはありません。

いくら検討しても応じることができないのであれば、Noといえばそれでいいのです。

勝手に調停調書が作成されてしまうようなことはありません。

ただ、訴訟に移行したからといって、必ず調停より有利な結果が得られるとも限りません。

また、訴訟には訴訟独自の負担があります。

※関連記事→「離婚裁判の流れや期間と弁護士費用をデータを交えて解説

少しの譲歩で済むのであれば、解決までの時間や精神的な余裕をお金で買ったと考えて、調停での早期解決を目指すという選択肢も長い目で見ると大切です。

一方で、相手方のDVや不貞等、証拠もあり、傷ついたことに対して慰謝料が支払われるのが当然なのに、無理して調停を成立させることは妥当ではありません。

ケースバイケースなのです。

調停を継続することができないとなれば、調停は不成立となります。

相手方の虚偽の主張がもとで調停が不成立になるようなケースでは、次は訴訟を起こすことになります。

冷静に見極めたいときは弁護士に相談を

本記事では、相手方が虚偽の主張を繰り返す場合の対処方法について検討してきました。

どの局面でも、まずは相手方の立場や主張、自分の置かれている状況について、冷静な見極めが必要です。

そもそも、相手方が本心から離婚を望んでいるのか、事実のとらえ方の違いがきっかけでの不和に過ぎないのか、決定的に修復困難なのか、相手方の主張が虚偽である場合にそれをどうやって崩していくか、自分の主張をどう展開していくべきか、調停の引き際はどこか等、冷静に見極めるべきことは多岐にわたります。

これらを全部ご自身だけで行うというのは非常にご負担でしょう。

ただでさえ、離婚問題というのは大きな精神的負担がのしかかります。感情的になってしまい、冷静な判断が難しいというケースもあるでしょう。

常に多くのケースと向き合い、その場その場に応じた判断をし経験を積んだ弁護士だからこそアドバイスできることがたくさんあります。

一緒に考え、判断をし、行動をしてくれる専門家の手をぜひ頼ってみていただきたいと思います。

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吉田 美希(法律事務所クロリス代表弁護士)

吉田 美希(法律事務所クロリス代表弁護士)

慶應義塾大学法務研究科修了後、司法試験に合格。司法修習を経て都内の大手法律事務所に勤務し、2年間で100件以上の離婚、男女問題を取り扱う。2015年5月に独立し、「法律事務所クロリス」を開設。開設以来、離婚・男女問題はもちろん、問題解決の困難さから従来弁護士が積極的に取扱わなかった「親子問題」に注力している。東京弁護士会「子どもの人権と少年法に関する特別委員会」委員としても活動。日本子ども虐待防止学会会員、NPO法人非行克服支援センター会員。
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