離婚後の面会交流の拒否理由により、慰謝料が発生するケースと違法にならないケース

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この記事の執筆者

福谷 陽子(元弁護士)

慰謝料

離婚すると子どもは父母のどちらか一方と一緒に暮らします。

別居している親には子どもと会う「面会交流権」が認められるため、面会を不当に拒否すると「違法行為」となり「慰謝料」を請求される可能性があります。

今回は離婚後の面会交流を拒否したことによって慰謝料が発生するケースとしないケースについて、解説していきます。

こんな疑問にお答えします

Q.面会交流を拒否できるケースはどのような場合ですか。また、相手と子どもを面会交流させなかったら慰謝料を請求されるのかも知りたいです。

A.面会を拒絶できるケースは、以下の場合です。

  • 相手が過去に子どもを虐待していた場合
  • 子どもと会うと暴力を振るう、暴言を吐くおそれがある場合
  • 遠方にも関わらず毎日会いたい、子どもの予定をすべてキャンセルしてでも会いたい、など無理な条件を押し付けてくる場合
  • 子どもに危険行為や犯罪・違法行為をさせるおそれがある場合
  • 面会交流の話し合いがまとまったいない場合
  • 面会交流の裁判の最中

また、相手と子どもを面会交流させなかった場合、慰謝料を請求される可能性もあります。
慰謝料とは、相手が不法行為をしたことによる損害賠償金のこと。つまり、精神的苦痛に対して支払われるものです。
面会交流権があるにもかかわらず不当に拒絶され続けると、別居親は大きな精神的苦痛を負います。
また、会わせるべき義務があるにもかかわらず拒絶し続けた相手の行為は、不法行為に該当し、慰謝料を請求される可能性が高まります。慰謝料の相場は数十万からが一般的で、高額になると500万円の事例もあります。

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面会交流で違法になるケースと違法にならないケースの区別

面会交流権の重要性

面会交流は、子どもと一緒に暮らしていない親が子どもと面会したり連絡を取り合ったりする権利です。

離婚した場合や未婚のまま子どもが生まれた場合、子どもはどちらか一方の親としか一緒にいられないので、他方の親は子どもと常には会えない状態となります。

しかし、離れて暮らしていても「親子」であることには違いありませんし、子どもにとっても親と接触して「愛されている」と実感しながら成長できることは良いことです。

そこで別居親には面会交流権が認められます。

離婚後に親権者や監護者にならなかった親だけではなく「子どもを認知した父親」や「離婚前の別居」のケースの別居親にも面会交流権は認められます。

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面会交流は「原則拒絶できない」

面会交流権は親子の自然なかかわりを維持するための権利であり、親だけではなく子どもにとっても必要なものです。

面会交流は「基本的に拒絶できません」。

・子どもが会いたくなさそうな場合
・再婚して子どもと新しい夫との関係を作りたい場合
・今子どもが落ち着いているからあえて心をかき乱したくない場合

等いろいろ事情はありますが、このようなことは基本的に面会交流を拒絶する理由にはなりません。

面会交流を拒絶できない具体的な例

以下のようなケースでは面会交流を拒絶できません。

面会を拒否できないケース①

子どもが「会いたくない」と言っている、嫌がって泣く

面会交流するかしないかは、子どもの一存で決まるわけではありません。

たとえ、子どもが表面上嫌がっていても、会えばけろっと楽しむケースもあります。

家庭裁判所の調査官が現状を調査した上で、可能であれば面会交流が認められます。

面会を拒否できないケース②

子どもが「パパと会わなくていい」と言っている

同じく子どもの意思では面会交流の実施の可否を決められません。

子どもは同居親に遠慮して「会わなくていい」というケースが多いので、このような言葉は重視されないのです。

面会を拒否できないケース③

子どもが相手と会わない状態で平穏に繰らしているので、かき乱されたくない

離婚後子どもが新しい環境(住環境や学校など)に馴染んでいるので、相手と会うことによって精神状態を悪化させたくないと考える方もいます。

しかし、それだけでは面会交流の拒絶理由と認められません。

面会を拒否できないケース④

再婚したので、子どもを新しい家庭環境に馴染ませたい

自分が再婚して子どもを新しい配偶者との家庭に早く馴染ませたいので、以前の父親(母親)と会わせたくない方も多いですが、このような事情も面会交流拒絶の理由になりません。

面会を拒否できないケース⑤

離婚後長年子どもに会いたいなどと言っていなかったのに、いきなり面会を求めてくるなど身勝手で許せない

離婚後、相手からは一切面会の申し入れ等がないまま何年も経過するケースもあります。

そのような場合、いきなり「面会させてほしい」と言われても困惑してしまうでしょう。

しかし、年月が経過していても面会交流権は認められます。

「今更認められない」と拒絶することはできないので注意しましょう。

面会を拒否できないケース⑥

養育費を払ってもらっていない

「相手から子どもの養育費を払ってもらえていないので面会交流させない」と主張される方も非常に多いです。

しかし、養育費と面会交流は引換ではないので、養育費を払ってもらえていなくても面会交流をさせる必要があります。

面会を拒否できないケース⑦

相手の不倫で離婚した、相手が現在別の女性(男性)とつきあっている

相手の不倫が原因で離婚した場合「なぜ会わせなければならないのか」「子どもにも悪影響」と思う方が多いのも当然です。

また、現在相手が新しいパートナーと一緒にいるので、子どもに悪い影響を与えたくないと考えることもあるでしょう。

しかし、相手の不倫や新しいパートナーは、子どもと相手の親子関係に無関係と考えられるので面会交流拒絶の理由になりません。

面会を拒否できないケース⑧

相手の父母(子どもの祖父母)に会わせたくない

「相手とは親子だから会わせても良いけれど、相手の親(子どもの祖父母)に絶対会わせたくないので面会させない」というケースも多々あります。

確かに相手の親には面会交流権がありませんが、相手自身には権利がありますので、これは面会拒絶理由になりません。

祖父母に会わせたくないならば、相手と話をして面会の方法を詳細に取り決めることによって対処しましょう。

面会を拒否できないケース⑨

子どもを受け渡すときに相手と会うのが嫌

「相手との関係が悪化しているので絶対に顔を合わせたくない」「相手と会うのが怖い」など受け渡しの際に相手と顔を合わせられないケースもあるでしょう。

この場合には、第三者を介して受け渡すなどの工夫によって面会交流すべきであり、断る理由にはなりません。

面会交流を拒絶できるケースとは

以上のように、面会交流はほとんどのケースで認めなければならないものであり、拒絶は違法です。

ただし、例外的に以下のような場合には拒絶が認められます。

面会が拒否できるケース①

相手が過去に子どもを虐待していた

相手が婚姻時や同居中に子どもを虐待していた過去がある場合には、面会交流を拒絶する理由となります。

ただし、婚姻時に「子どもに対する虐待」があったことが要件であり、「妻に対する暴力(DV)」があったことは子どもとの面会交流拒絶の要件になりません。

面会が拒否できるケース②

子どもに会うと暴力を振るったり暴言を吐いたりするおそれがある

同じく、現在子どもと会うと暴力を振るったり暴言を吐いて子どもを傷つけたりするおそれがある場合には、面会を拒絶できます。

たとえば、一度面会交流を実施してみたけれど、その際に相手が子どもに暴力を振るって子どもが怪我をした場合などには、次の面会は拒絶しても違法とならないでしょう。

面会が拒否できるケース③

無理な条件を突きつけている

たとえば、子どもが乳児で自分が世話できないにもかかわらず「一日中一緒に過ごす。土日は2人きりで過ごしたい」と主張している場合。ほかにも、小学生の子どもなどに対して「毎日会いたい、学校が終わったら毎日家まで連れてこい」と主張するケースです。

遠方に居住しているのに「毎週土日に泊まらせに来い、交通費はそっちで払え」と主張する場合など、無理な条件を突きつけてきて話ができない場合にも面会交流を拒絶できます。

面会が拒否できるケース④

子どもに危険行為、犯罪行為や違法行為をさせるおそれがある

相手の精神状態が極めて不安定な場合や、素行不良で子どもと一緒にいると犯罪行為や違法行為を行わせるなど、子どもに対する悪影響が大きい場合には面会交流を拒絶できる可能性があります。

たとえば、過去に子どもと一緒に心中しようとしたことがある場合、これまで子どもに犯罪行為に加担させたことがあった場合などには面会交流の実施に慎重になるべきです。

ただし、「相手がうつ病」「相手が前科者」というだけでは、子どもに対する危険性があまりにも抽象的ですので、面会交流拒絶の理由になりません。

面会が拒否できるケース⑤

面会交流の前向きな協議中で、まだ話がついていない

現在相手と面会交流の話し合いを行っており、前向きな協議中であれば協議が成立するまで会わせなくても違法ではありません。

面会が拒否できるケース⑥

面会交流の調停や審判の最中

面会交流の調停や審判を行っており結論が出ていない段階であれば、結論が出るまでは会わせなくても違法ではありません。

義務者が明らかに嘘をついている時や、拒否が続く場合は?

面会交流は「基本的には行わねばならない」ものであり、相手が不当に拒絶するなら強制的に実現するしかありません。

そのための方法や流れは以下の通りです。

面会交流調停を申し立てる

面会交流の実施方法はできれば親同士が話し合って決めるのが一番ですが、相手が不当に拒絶して合意できない場合もあります。

そのようなケースでは家庭裁判所に間に入ってもらい、面会交流方法を取り決めることが可能です。

まずは、相手の住所地の家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てましょう。

調停をすると家庭裁判所の調停委員2名があなたと相手の間に入り、面会交流実施について話を進めてくれます。

相手が法律上認められない理由によって面会交流を拒絶しているなら、調停委員が相手を説得してくれます。面会交流についての理解を深めるためのビデオを観せたり、当事者同士が歩み寄るきっかけも作ってくれます。

また、「子どもが会いたくないと言っている。泣いて嫌がる」などと相手が主張しているケースでは、家庭裁判所の調査官が家庭訪問をして子どもと会い、子どもの本心を聞き出して対処方法を検討します。

このようにしてお互いが譲り合い、子どものことも考えながら面会交流の実施方法を取り決めることができます。

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面会交流審判となる

調停で話し合いをしても、相手がどうしても「会わせない」と主張する場合、調停で無理矢理面会を実現することは不可能です。

その場合には「面会交流審判」となり裁判官が面会の方法を決定します。

審判では家庭裁判所の調査官が子どもの現状を調べ、そもそも面会が可能か、どのような精神状態でどういった生活環境にあるのかなどを確認します。

それに加え、これまでの当事者の主張内容なども踏まえて、裁判官が子どもと別居親の面会交流方法を決定します。

ただし、この場合裁判官が自分の判断で面会交流方法を指定するので、必ずしも当事者が望む結果になるわけではありません。

仮に面会が認められるとしても、あなたが希望した方法より限定された条件になる可能性もあるのです。

履行勧告をする

調停や審判の結果が出ても相手が従わない場合には、家庭裁判所に申し立てて「履行勧告」をしてもらう方法があります。

履行勧告とは、裁判所から「調停や審判で決まった内容を守ってください」と促す手続きです。

家庭裁判所に申し立てをすると、裁判所から相手に履行勧告の連絡書を送ってくれます。

ただし、履行勧告には強制力がないので、相手が無視すればそれまでになってしまいます。

間接強制の申し立てをする

履行勧告を行っても相手が従わない場合や、履行勧告する意味がないと思われる場合には「間接強制」の申し立てをしましょう。

間接強制とは、金銭取り立ての間接的な方法による強制執行です。

そもそも金銭債権ではない権利を実現するために、相手に金銭を払わせることによって間接的に履行を促すことが可能です。

面会交流権は、お金を支払わせる権利ではありません。

強制的に権利を実現しようとすると、裁判所の職員が無理矢理子どもを連れてきてあなたと会わせることになります。

そのようなことをすると、子どもは恐怖におびえるでしょうし、あなたへの拒否感も強まります。

当然楽しい面会など実現できず、次回からは本当に「会えない」状態になってしまうでしょう。

そこで、面会交流については直接的な強制方法は認められていません。

そうではなく義務者に金銭を払わせてプレッシャーを与え、自ら面会交流の実施をさせるのが間接強制です。

間接強制が認められた場合の支払い金額は、ケースによってさまざまです。

面会拒絶1回について5万円~10万円程度となるケースが比較的多いですが、中には1回の面会拒絶について100万円という高額になった事例もあります。

強制執行(間接強制)ができるケース

面会交流を拒絶された場合でも必ずしも間接強制が認められるとは限らないので、注意が必要です。

間接強制が認められるかどうかは、最高裁までもつれ込んだ事例が多く、その中で以下のような基準が確立されています(最高裁平成25年3月28日)。

判断基準

面会交流で間接強制を認めるには、面会交流の方法が「具体的に特定されている」ことが必要です。

その際、以下の要素が考慮されます。

・面会交流の日時又は頻度
・各回の面会交流時間の長さ
・子の引渡しの方法等

これらが具体的に取り決められていたら、間接強制の決定をしてもらいやすいと考えましょう。

具体例

●間接強制が認められやすい例

「毎月第2日曜日、午前10時から午後5時まで、〇〇駅の改札で子どもを受け渡し、帰りは家まで送る」など具体的に決まっていたら間接強制が認められます。

●間接強制が認められにくい例

一方「毎月1回、その都度話し合って決める」「毎週面会する」「夏休みに3日間面会する」などの抽象的な取り決めでは、間接強制が認められません。

間接強制の方法

間接強制をするには、家庭裁判所で「間接強制の申し立て」を行う必要があります。

その際には収入印紙2,000円分と連絡用の郵便切手、申立書、調停調書や審判書が必要です。

間接強制の決定が出たら強制執行が必要

家庭裁判所で間接強制命令が出たとしても、相手がそれに従うとは限りません。

相手が金銭支払いをしない場合には、相手の資産を差し押さえる(強制執行)必要があります。

その際には通常の金銭債権に基づく差押えと同様に、相手の預貯金や生命保険、給料などを差し押さえて不払いになっている金額を差し押さえることが可能です。

面会交流が拒否されたら養育費は払わなくても良いのか

「相手によって不当に面会交流を拒絶されたら、養育費を払わなくても良いのでは?」と考える方が多くいらっしゃいます。

しかし、面会交流と養育費は引換えではありません。

あなたが養育費を払っていなくても相手が面会交流を断れないように、相手が面会交流に応じなくてもあなたは養育費支払を拒絶できません。

養育費を支払わないで放置していたら、相手から養育費の調停や審判を申し立てられて支払い命令を出されます。

そうなると給与差し押さえをされる可能性もあります。

また、あなたの方が養育費を支払っていなかったら、相手も気分的に面会交流に積極的になれないものです。

お互いに譲り合い、義務を履行し合ってスムーズに子どもと会える環境を作っていきましょう。

自分達だけで話し合うと解決が難しい場合には、家庭裁判所の「面会交流調停」と「養育費調停」を利用して調停委員に間に入ってもらって、同時並行で話し合いを進めていくことをお勧めします。

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面会交流の慰謝料について


相手が不当に面会交流を拒絶するとき「慰謝料」を請求できる可能性もあります。

以下、慰謝料の意味や金額の相場、請求できるケースなど説明していきます。

間接強制と慰謝料は異なる

一般に面会交流の「間接強制」と「慰謝料」が同じものと思われているケースがありますが、間接強制と慰謝料は異なります。

間接強制は、上記のように「面会交流の決定があったにもかかわらず、相手が従わないので法的に強制するための金銭払い」です。

これは相手に義務を果たさせるための強制執行の一種です。

一方、慰謝料は「相手が不法行為をしたことによる損害賠償金」です。

慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金です。

加害者が不法行為を行ったとき、被害者は大きな精神的苦痛を負います。

そこで、加害者は被害者に対し、精神的苦痛に対する弁償金を払わねばなりません。

それが「慰謝料」です。

面会交流権があるにもかかわらず不当に拒絶され続けると、別居親は大きな精神的苦痛を負います。

また、会わせるべき義務があるにもかかわらず拒絶し続けた相手の行為は、不法行為に該当します。

つまり、あなたは相手に対し、慰謝料を請求できるのです。

面会交流拒絶で慰謝料が発生するケース

ただし、面会交流を拒絶したからと言って、常に慰謝料が発生するわけではありません。

確かに「子どもと会わせてもらえない」親には大きな精神的苦痛が発生しますが、それだけでは慰謝料が発生するほどの違法性が認められないケースもあるためです。

慰謝料が発生するためには、ある程度強い違法性が必要となります。

たとえば、以下のような場合には慰謝料が認められやすいです。

慰謝料が認められやすいケース

・調停や審判で面会交流の方法が具体的に決まっている
・虚偽を述べて子どもとの面会を妨害していた
・面会を申し入れられているにもかかわらず、長年拒絶し続けた

「離婚後に面会交流させてほしいと言ってみたけれど拒絶された」という初期段階であれば、いきなり慰謝料請求をしても認められにくいです。

その場合、まずは面会交流調停を申し立てて話し合いを進めるのが良いでしょう。

慰謝料の請求方法

相手が面会交流をさせてくれないため慰謝料を請求したい場合、地方裁判所で相手に対し「慰謝料請求訴訟」を起こす必要があります。

その際には、相手の違法行為(面会拒絶の経緯や妨害行為)についてもきっちり「証拠」で立証せねばなりません。

また、費用として請求金額に応じた「印紙代」も必要です。

印紙代は請求金額が高くなるほど高額です。

このように慰謝料請求の手続きは家庭裁判所で行う「間接強制の申し立て」とは全く異なるので注意しましょう。

慰謝料の強制執行

裁判所から慰謝料支払い命令が出ても相手が従わなかったら、強制執行(差押え)によって取り立てることが可能です。

面会交流拒否に対する慰謝料の相場

相手が面会交流を拒否したために慰謝料支払い命令が出る場合、相場の金額は数十万円~100万円程度です。

ただし、事案によっては500万円もの高額な慰謝料支払い命令が出たケースもあります。

慰謝料が高額になりやすいのは、以下のような事情があるときです。

慰謝料が高額になりやすいケース①

面会交流の協議に応じる態度が一切なかった

面会させてほしいと言われたのに、無視し続けて話し合いにすら一切応じなかった場合などです。

慰謝料が高額になりやすいケース②

面会交流させていない期間が長い

面会を実施できなかった期間が長いと権利者が受ける精神的苦痛は大きくなるため、慰謝料が高額になります。

慰謝料が高額になりやすいケース③

面会交流拒絶の理由が不当

面会交流拒絶に対し、不当で身勝手な理由により拒絶すると慰謝料は上がります。

たとえば「自分と再婚相手の生活を優先したい」とか、「離婚した旦那と関わりたくない」などです。

慰謝料が高額になりやすいケース④

虚偽を告げて騙した

本当は子どもが嫌がっていないのに「子どもが嫌がっている、泣いている」などと言って面会を妨害したり、「子どもが病気」「忙しくなった」などと嘘をついたりして騙し続けた場合には、悪質なので慰謝料が高額になりやすいです。

慰謝料が高額になりやすいケース⑤

面会交流の約束をしたのに、一度も守っていない

協議、調停などによって面会方法を約束したにもかかわらず、一度も守っていない場合には「始めから守る気がなかった」とも考えられ、悪質なので慰謝料が高額になります。

面会交流拒否に対する慰謝料の判例

熊本地裁平成28年12月27日

母親が再婚して、子供と前夫との面会を認めなかった事例です。

調停では母親の再婚相手が面会交流の連絡役となる約束をしていました。

母親らが調停での約束に反し面会を認めなかったため、裁判所は母親に対して70万円、再婚相手に対して30万円(母親との連帯債務)の慰謝料支払いを求めました。

静岡地裁平成11年12月21日

父母の間で面会交流に関する調停が行われ、2か月に1回、2時間程度会わせる内容の取り決めをしました。

ところが、調停後に義務者が面会を拒否し、裁判所が履行勧告をしても応じなかったので、権利者は慰謝料請求訴訟を提起しました。

裁判所は「子の福祉に反する事情もなく面会を妨害したこと、妨害の経緯や期間が長かったこと、義務者の態度に問題が大きかったこと」などを重視して、500万円もの慰謝料支払いを命じました。

慰謝料請求の注意点

面会交流させてもらえていない場合、「慰謝料請求しよう」と考えるのも当然ですが、慰謝料請求したからと言って「子どもに会えるわけではない」ことを忘れてはいけません。

慰謝料はあくまで「これまで子どもと会わせてもらえなかった精神的苦痛に対する賠償金」であり「今後子どもと会わせてもらうための方法」ではないからです。

もちろん慰謝料請求によって相手がプレッシャーを感じ、態度が変わって面会に応じるようになるケースもありますが、反対に関係が悪化して面会が難しくなる例もあります。

そもそも慰謝料が認められるかどうかの問題もありますので、まずは離婚や男女問題に詳しい弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

面会交流の拒否をされた場合に弁護士に相談するメリット

面会交流の拒否で慰謝料を請求する場合、当事者同士では解決が困難になるため、弁護士への相談をおすすめします。
ここからは、面会交流に関するトラブルが発生した場合、弁護士へ相談するメリットを紹介します。

冷静な話し合いができる

第一に、弁護士を通す事で冷静な話し合いができる点です。
当事者同士で話し合うと、感情的になってしまい話がうまくまとまりません。

交渉の場に弁護士を同席させることで、冷静な対応ができ、スムーズな解決ができます。
また、弁護士は代理人として相手との交渉が可能です。
もし、相手と直接顔を合わせたくないと希望する場合は、弁護士が代理として交渉を進められます。

無理な要求を拒否できる

無理な要求を拒否できることも、弁護士へ相談するメリットです。

面会交流を要求する内容として、「子どもの予定を全てキャンセルして会わせろ」など無理難題を押し付けてくるケースもあります。

弁護士を通すことで、拒否できる範囲の基準や、無理な要求に対する拒否方法を教えてもらえます。

トラブルを未然に防ぐための公正証書を作成してもらえる

面会交流の方法が定まったら、交流後のトラブルを未然に防ぐための公正証書を作成してもらえます。
公正証書の申し込みや作成にかかる流れは、すべて弁護士に任せることができます。

裁判となった場合の対応を一任できる

面会交流の話し合いがまとまらず裁判となった場合は、弁護士に対応を一任できます。
裁判所での手続き、書面の作成、主張や反論はすべて弁護士が代わりに行います。

まとめ

子どもと面会させてもらえていないなら、まずは面会交流調停を申し立ててそれでも会わせてもらえないときに、間接強制や慰謝料請求などを検討しましょう。

自分一人でできることは限られているので、専門の弁護士のサポートを受けることをお勧めします。

弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.相手と子どもを面会交流させなかったら慰謝料を請求されるの?
A.不当に面会交流を拒絶するときは、「慰謝料」を請求できる可能性もあります。
慰謝料とは、相手が不法行為をしたことによる損害賠償金のこと。つまり、精神的苦痛に対して支払われるものです。
面会交流権があるにもかかわらず不当に拒絶され続けると、別居親は大きな精神的苦痛を負います。
また、会わせるべき義務があるにもかかわらず拒絶し続けた相手の行為は、不法行為に該当し、慰謝料を請求される可能性が高まります。

Q.面会交流を拒絶できるケースはどのような場合?
A.面会を拒絶できるケースは、以下の場合です。

  • 相手が過去に子どもを虐待していた場合
  • 子どもと会うと暴力を振るう、暴言を吐くおそれがある場合
  • 遠方にも関わらず毎日会いたい、子どもの予定をすべてキャンセルしてでも会いたい、など無理な条件を押し付けてくる場合
  • 子どもに危険行為や犯罪・違法行為をさせるおそれがある場合
  • 面会交流の話し合いがまとまったいない場合
  • 面会交流の裁判の最中

Q.面会交流拒否の慰謝料の相場はどのくらい?
A.面会交流拒否の慰謝料の相場は、数十万から100万円程度です。
ただし、事案によっては500万円など高額になるケースもあります。

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