別居中の夫婦に子どもがいる場合、必ず別居相手に子どもを会わせなければいけないのでしょうか?
別居相手が子どもに会わせてくれない場合、法的な手段を取ることができるのでしょうか?
今回は、「別居相手に子どもを会わせないと違法となるのか」という問題を、法的な観点から解説したうえで、別居相手が子どもに会わせてくれない場合の対処法を紹介します。
離婚後に子供に会わせてもらえないケースについては、下記の記事をご覧ください。
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別居中でも「面会交流権」が認められる
まずは、そもそも「別居中の親と子どもが会う権利」は、法律で認められているのでしょうか?
日本の法律には「子どもと離れて暮らしている人が、子どもと会って交流をする権利」がきちんと定められています。
この権利のことを、「面会交流権(めんかいこうりゅうけん)」や「面接交渉権(めんせつこうしょうけん)」と呼びます。
面会交流権は、子どもと離れて暮らしている人であれば、誰にでも認められる権利です。
既に離婚している場合はもちろんのこと、まだ別居中で離婚が成立していない場合であっても認められます。
実は、この権利は「親の権利」であると同時に、「子どもの権利」でもあります。
つまり、面会交流権は「親が子どもに会う権利」という意味と「子どもが親に会う権利」という意味の2つが存在するのです。
面会交流権はどうやって決めるのか
それでは、別居相手が子どもに会わせてくれない場合は、どのように対処したら良いのでしょう?
(1)まずは相手と話し合う
相手が話し合いに応じてくれる場合は、まずは直接相手と話し合います。
話し合う方法は、電話やメールでも構いません。
(2)裁判所の調停を利用することもできる
相手と冷静に話ができない場合は、裁判所の手続きを利用することができます。
裁判所で子どもの面会交流について話し合うことを、「面会交流調停(めんかいこうりゅうちょうてい)」といいます。
「面会交流調停」とは
面会交流調停は、「家庭裁判所」で行われます。
裁判所の調停委員が、公平な立場に立って両者の言い分を聞き取り、話し合いをまとめてくれます。
裁判所での話し合いですが、子どもを裁判所に連れて行く必要はありません。
基本的には、夫婦間での話し合いが中心になるからです。
ただし、裁判所が「親の意見だけでなく、子どもの意見を確認する必要がある」と判断した場合には、子どもを裁判所に連れて行くことが必要になるでしょう。
また、裁判所の調査官が自宅にやってきて、子どもの意見を聞くこともあります。
子どもを裁判所に連れて行くことについて、抵抗を感じる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、裁判所の調査官は、子どもの精神的なケアについて十分なトレーニングを積んだ専門家です。
子どもに怖い想いをさせないように十分に配慮したうえで、子どもの福祉を最優先に考え、接してくれます。
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別居相手と交渉をする際に気をつけるべきこと
面会交流について取り決めをする場合には、下記の2点に気を付けましょう。
(1)具体的にシミュレーションを行うこと
まず第一に、具体的に面会交流のシミュレーションをしてから話し合いを行いましょう。
例えば、離婚の原因が嫁姑問題である場合「子どもを夫に会わせてもよいが、姑には会わせたくない」と考える方がいらっしゃるでしょう。
この考えをきちんと伝えておかなければ、「夫の自宅に子どもを連れて行くと、姑が一緒に待っていた」ということが起こるかもしれません。
このようなトラブルは、決して珍しいことではありません。
このようなトラブルを避けるためには、「相手と子どもを会わせた場合に、どのようなことが起こりうるか」を具体的にシミュレーションすることが重要です。
もしも「こういう人には会わせたくない」「こういう場所には行ってほしくない」という希望がある場合には、事前に相手にきちんと伝えておきましょう。
(2)長期的な視野を持って取り決めをすること
別居期間が長引いたり、離婚協議がなかなかまとまらない場合には、面会交流の期間も長くなります。
面会交流が長期にわたると、お正月やお盆、父の日や母の日、子どもの誕生日、運動会や発表会、入学式や参観日など様々な家族行事が訪れます。
また、親戚の結婚式や法事などがあるたびに「親戚付き合いに子どもを連れて行くのか」という問題も生じます。
これらのイベントがあるたびに、いちいち相手と話し合いをしなければならないとすると、お互いにとって大きなストレスとなるでしょう。
このようなストレスを避けるためには「交渉をする際に、年間行事や季節のイベントを想定して取り決めをすること」が必要です。
例えば、「クリスマスは母親の元で過ごす代わりに、お正月は父親のもとで過ごす」というように、前もって取り決めをしておけば、逐一話し合いをする必要がありません。
約束を破って子どもに会わせないと違法になるのか
面会交流の約束をしたにも関わらず、相手が約束を無視したことで子どもに会わせてもらえない場合は、どのような法的手段を取ることができるのでしょうか?
(1)慰謝料を請求する
面会交流権は、法律で認められた権利です。
約束を破って別居相手に子どもを会わせないことは、相手の権利を侵害することになります。
面会交流について取り決めをしたにも関わらず、その約束を反故(ほご)にした場合は、違法行為として慰謝料の対象となります。
どれくらいの慰謝料が認められるかはケースバイケースですので、一概には言えません。
面会を拒否した回数が多ければ多いほど、子どもに会えない期間が長ければ長いほど、慰謝料が高額となる可能性があります。
過去の事例では、面会交流調停での取り決めを破った元妻に対して、金70万円という高額な慰謝料の支払いが命じられたことがあります。
このケースでは、元妻が既に再婚しており、再婚相手と結託(けったく)して子どもを会わせなかったという事情があるため、元妻の再婚相手に対しても慰謝料30万円の支払いが命じられました。
(2)間接強制金の支払い
調停や裁判できちんと面会交流を約束したにも関わらず、子どもを会わせなかった場合は、裁判所から「一度約束を破るたびに制裁金として金◯万円を支払うように」と命じられることがあります。
このような制裁金のことを「間接強制金(かんせつきょうせいきん)」といいます。
例えば、「月に2回子どもに会わせる」と約束した場合に、制裁金として5万円が課せられると、1ヶ月ごとに金10万円を支払うことになります。
間接強制金の金額は、当事者の生活状況を考慮して決定されます。
一般的には、5万円から10万円程度となるケースが多いのですが、収入が高い場合には10万円以上の金額となることもあります。
例えば、2017年の裁判では、高収入の父親に対して1回当たり30万円の間接強制金を支払うように命じたというケースがあります。
別居中の相手に子どもを会わせないことは、相手の権利を奪うだけではなく、子どもの権利を侵害する重大な行為であると考えられています。
面会交流権の重要性は年々高まっており、それに合わせ間接強制金は高額化する傾向にあります。
面会交流が認められない場合もある
面会交流権は、全ての親に認められる権利です。
ただし、下記のような例外的なケースに限っては、面会交流が制限されます。
(1)子どもの突然の病気やケガ
予期せぬ病気や怪我については、そのときに限って面会交流を拒否することができます。
例えば、「毎週土曜日の午後に子どもと会う」と取り決めをしていても、土曜日の午前中に突然子どもが熱を出した場合には、面会交流を拒否することができます。
(2)子どもに暴力をふるうおそれがある場合
過去に子どもに暴力をふるった人物に対しては、面会交流権そのものが否定されることがあります。
「暴力」とは、子どもに及ぼす危険を幅広く含みます。
子どもの身体を直接叩いた場合に限らず、子どもの近くに物を投げたり、子どもに暴言を吐いた場合なども広く対象となります。
このように子どもに危害を及ぼすおそれがある場合は、面会交流権そのものが否定されます。
(3)子どもを連れ去るおそれがある場合
別居中の親であっても、相手に無断で子どもを連れ去ることは犯罪です。
刑法上の「未成年者略取罪(みせいねんしゃりゃくしゅざい)」として処罰されます。
別居中の相手に子どもを会わせると、そのまま子どもを連れ去ってしまうおそれがある場合は、面会交流そのものを拒否することができます。
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(4)子ども自身が明確に面会を拒否している場合
子どもが十分に成熟しており、子ども自身の意思で「会いたくない」とはっきりと述べている場合は、面会交流を拒否することができます。
ただし、このようなケースは下記の点に注意しましょう。
一般的に、子どもは身近な人物からの影響を受けやすく、一緒に暮らしている親の意見に迎合(げいごう)する傾向があります。
例えば、子どもが母親と暮らしている場合、母親が「あなたの父親は最低の人物である」と毎日言い続けていると、その言葉に感化されて、子どもが「父親には会いたくない」と考えるようになるかもしれません。
子どもが幼ければ幼いほど、親の意見に影響される可能性が高くなります。
このため、子どもが「会いたくない」と言っているという場合であっても、必ず面会交流が拒否できるとは限りません。
片方の親の言葉に影響されて「会いたくない」と言っている場合は、面会交流を拒否することはできません。
反対に、子どもが十分な判断能力を持ち、かつ、本人の意思で「会いたくない」と言っている場合には、面会交流を拒否することができます。
「十分な判断能力があるかどうか」は、年齢によって一律に決まるわけではありません。
子どもの性格や生活状況などを考慮し、最終的には裁判所が決定します。
一般的には、中学生や高校生になれば自分自身で物事を判断できる能力が高いため、子ども自身の意見が尊重される傾向にあります。
反対に、子どもがまだ幼稚園児や小学校低学年である場合は、子ども自身が「会いたくない」と言っていても、片方の親に気に入られようとしてそのように述べている可能性が高いため、面会交流を拒否できる可能性は低くなります。
弁護士をつけるとスムーズに交渉が進む可能性がある
面会交流について相手と冷静に話し合いができない場合は、弁護士に交渉を依頼すると、スムーズに交渉を進めることができる可能性があります。
弁護士という第三者が入ることによって、相手が冷静になり、2人だけで話し合うよりも効率的な話し合いが期待できるでしょう。
「どのタイミングで弁護士に依頼すればよいのか」とお悩みの方がいらっしゃるかもしれませんが、子どもの面会交流に関するトラブルについては、できる限りお早めにご相談されることをお勧めいたします。
弁護士に依頼するタイミングが遅くなれば、子どもに会えない期間がその分だけ長くなります。
反対に、早めに弁護士に依頼しておけば、その分だけ早く子どもに会うことができる可能性が高くなるのです。
また、早い段階で弁護士に相談しておけば「どのようなタイミングで裁判所に調停を申し立てるか」「あと何ヶ月子どもに会えなかったら慰謝料を請求するか」など、長期的な視野に立ってアドバイスをしてもらうことができます。
面会交流に関する間接強制金の支払いや慰謝料の請求は、いずれも法律的に専門性の高い手続きです。
複雑なケースについては、準備に時間がかかります。
申立てをするまでに時間がかかるリスクを考慮すると、お早めに弁護士にご相談してくことが安心です。
別居中の子どもに会えないことは、精神的にとても辛いことです。
このような精神的なストレスを少しでも軽減するためにも、面会交流についてお悩みの方は、できる限りお早めに弁護士にご相談ください。
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