【事例あり】相続争い・遺産分割の弁護士費用相場と弁護士に相談すべきケース

 

藤井弁護士

この記事の執筆者

藤井 寿(弁護士・公認会計士)

相続争い・遺産分割の弁護士費用相場と弁護士に相談すべきケース誰もがいつかは必ず経験することになる「相続」。
近年、この「相続」をめぐるトラブルが急増しています。

下記は「家事手続案内」という家庭裁判所に寄せられた相続に関する相談件数の推移です。

平成14年と平成24年を比較すると、件数が2倍近くにまで増えています。
家庭裁判所に寄せられた相続に関する相談件数の推移

相続争いは、他人同士と違い、血を分けた家族同士だからこそ抱えている、その家族の歴史や微妙な人間関係にまつわる感情が複雑に絡み合って起こるトラブルです。

相続争いはお金持ちだけの話ではなかった

相続トラブルといえば、「お金持ちの人たちだけの話でしょ?」と思う方もいらっしゃると思います。

実は富裕層で多いのは相続税に関するトラブルであって、一般的な家庭では、遺産分割の金額や割合で、遺族同士が揉めるケースが急増しているのです。

下記のグラフのように、相続争いの約8割弱は遺産の金額が5000万円以下の一般家庭なのです。
2014年1月~9月の遺産額別の調停などの成立件数

それでも比較的大きなお金が絡むこともあり、それまで物静かな優しい人だった兄弟や親戚が、その配偶者などの影響もあいまって、まるで別人のようになってお互いの主張を曲げず、全く話がまとまらないケースがとても多いです。

また、誰でも必ず経験することであると分かっていながらも、いざ相続が発生するまでその法律手続きや中身についてじっくり学ぶ機会がなかなかないということも、準備不足からトラブルを引き起こす原因の一つとなっています。

そういった時に頼れる存在が、弁護士や税理士といった相続の専門家。
いわゆる「士業」と呼ばれる人たちです。

しかし、一口に士業といっても、その取扱業務内容の違いは一般の方にはわかりにくく、自分の場合は一体どの士業に相談したらよいのかわからないという話も多く聞きます。

そこでまず、その役割の違いについてご説明します。

誰に相談すればいいの?弁護士、税理士、司法書士、行政書士の役割の違い

まず、それぞれの士業が扱える業務を表で確認してみましょう。

項目弁護士司法書士税理士行政書士
相続に関する調査(戸籍の収集など)
遺産分割協議書の作成
代理人として交渉
相続登記
相続税の申告

このように士業ごとにその取り扱える範囲が異なっています。
ではもう少し詳しくご説明します。

相続の専門家、それぞれの業務

弁護士

紛争となっている事案、つまりトラブルになっている相続を扱えるのは弁護士だけです。

すでに相続人同士の間で対立が起きていたり、家族の間で複雑な事情があって、とてもではないが相続人同士では円満な話し合いが見込めないという場合は、弁護士に相談するのがベストでしょう。

司法書士

司法書士は、登記手続きのスペシャリストです。
日本の場合、代表的な相続財産といえば持ち家といわれる土地建物を指すことが多いでしょう。

相続人同士の間でもめているわけではないが、相続により引き継ぐことになった土地や建物の登記変更の手続きを一体どうしたらいいのかわからないという場合は、司法書士に相談するとよいでしょう。

また、司法書士は、裁判所へ提出する書類の作成も行うことができますので、相続放棄や限定承認といった家庭裁判所での手続きが必要な場合にも力になってくれます。

税理士

税金に関する相談を受けたり、税務申告の代行ができるのは税理士だけです。

相続の関しての税金といえば、まずは相続税のことを考慮しなければなりません。

相続税がかかりそうな場合は、できれば相続人の生前から税理士に相談しておくと、税の専門家の観点から節税対策を考えてくれるでしょう。

行政書士

行政書士は、行政機関への手続き代行や書類作成のスペシャリストです。

特にトラブルになっているわけでないが、細かくて面倒な役所への手続を自分でするのが大変だという場合に比較的リーズナブルな費用で対応してくれます。

近年、高齢化が進み、被相続人と呼ばれる亡くなられる方だけでなく相続人の方もご高齢になっておられることも多いですし、また、現役世代の場合も仕事に忙しく、役所への手続のために仕事を休めなかったりします。

そういった場合に行政書士に相談するとよいでしょう。

弁護士に相談・依頼した方がいいケースとは?

相続争いをする兄弟ここまでで、相続争いにはなっておらず、手続きだけを専門家に依頼したい場合には、用途に応じて司法書士、税理士、行政書士に依頼をする。

一方で相続トラブルを抱えている場合の相談先は、弁護士のみということがお分かりになったかと思います。

次に、具体的にどういった場合に、弁護士に相談した方がいいのかということについて詳しくご説明します。

遺産の分け方について話し合いがまとまらない場合

遺言書が作成されていない場合は、相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合い、全員の合意のもとで遺産分割協議書を作成する必要があります。

しかし、相続人がみな現預金を取得することを希望するなどして、話し合いがまとまらないことがあります。

このような場合は、弁護士に代理人として交渉にあたってもらったり、家庭裁判所に遺産分割調停を起こしてもらうとよいでしょう。

他の相続人にすでに弁護士がついている場合

遺産分割協議と呼ばれる相続財産を分けるための話し合いが始まっているいないにかかわらず、すでにほかの相続人が弁護士を付けている場合は、こちらも弁護士に依頼した方が、法律のプロ同士が法律にのっとって協議をしますのでスムーズに進みます。

また、法律の素人の相続人が弁護士を相手に協議をするよりも、結果として納得のいく協議内容になることでしょう。

他の相続人が相続財産を独占している場合

例えば、被相続人と同居していた相続人が相続財産をすべて管理しており、他の相続人がどんなに要求しても相続財産を明らかにしない場合は、弁護士に代理人として交渉にあたってもらうとよいでしょう。

遺言の内容に納得がいかない場合

相続財産の分け方は、基本的には遺言書に示された被相続人の意思が尊重されますが、一方で、相続人にも遺留分といった形である程度の権利が認められています。

例えば被相続人の配偶者や子供には法定相続分の2分の1の遺留分が認められています。

これをあまりにも無視した遺言書の内容であり、とても納得がいかないという場合は、その権利を守るためにも弁護士に相談されるとよいでしょう。

他の相続人が話し合いに全く応じようとしない場合

相続財産は、相続が始まった時点で法律的には相続人同士での共有ということになっています。

これを速やかに、遺産分割を行ってそれぞれに分けないと、相続価額の大きさによっては、相続税の申告の問題が発生しますし、また、いたずらに時間が過ぎて相続人の誰かが死亡した場合は、さらに相続人が増えてしまい、話し合いがさらに困難になる可能性があります。

他の相続人が話し合いに応じようとせず、こういったことが懸念される場合は、速やかに弁護士に代理人として、話し合いの席に着くよう要求してもらうのがよいでしょう。

こちらには寄与分があるはずなのに、他の相続人が認めない場合

被相続人の生前に、その事業を一緒に営み、相続財産を増やすことに貢献したり、被相続人の介護を一身に引き受けて相続財産が介護費用に消えるのを防ぐことに貢献したりしたのに、他の相続人がそのことを認めないということがあります。

他の相続人にとってはそのような貢献を認めることは自分の相続分が減ることにつながるので、寄与分についての話し合いは相続人同士ではなかなかうまくいかないことが多いものです。このような場合は、弁護士に依頼するとよいでしょう。

※関連ページ→「寄与分の理想と現実-介護などの貢献分は相続時にどれだけ評価されるのか

他の相続人は、特別受益があるのに、自分と同じかさらにそれ以上相続するのは納得がいかない場合

例えば、兄弟姉妹のうちの一人だけが、学費を著しく多く出してもらったり、マイホームの頭金費用を出してもらったりということがあった場合、そのことを無視して、現在残っている相続財産を一律に均等に相続するということは、かえって不公平感を招くことになります。

このような特別受益に伴う不公平感について、納得いかない場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。

相続トラブルの弁護士費用の相場

相続トラブルの弁護士費用の相場ここからは相続トラブルを弁護士に依頼した時の費用についてご説明します。

現在は、法律での報酬規程はなくなり、それぞれの弁護士が自由に価格を設定できます。

弁護士費用の内訳というのは、「着手金」+「成功報酬」+「日当」という3つの要素で成り立っていますので、それぞれについて見ていきましょう。

着手金

まず着手金ですが、これは、弁護士が依頼に取り掛かったことに対して必ず発生する費用です。

すなわち、相手方との交渉の成功・不成功に関わらず必ず必要となる費用です。

相続トラブルに関する場合、その目安は最低でも30万円以上は必要で、遺産分割の請求する相続財産の金額によって異なります。

今なお多くの法律事務所で報酬の参考にされている、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準の場合、下記の通りとなります。

請求金額着手金
300万円以下8%
※200万円の場合→16万円
300万円を超え3,000万円以下5%+9 万円
※1000万円の場合→59万円
3,000万円を超え3億円以下3%+69 万円
※5000万円の場合→219万円
3億円を超え2%+369 万円
※3億円の場合→969万円

※関連ページ→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由

成功報酬

これは結果に応じて発生する費用です。

成功報酬は、結果的に得られた経済的利益によって異なります。

(旧)日本弁護士連合会報酬等基準によると、下記のとおりです。

経済的利益成功報酬金
300万円以下16%
※200万円の場合→32万円
300万円を超え3,000万円以下10%+18万円
※1000万円の場合→118万円
3,000万円を超え3億円以下6%+138万円
※5000万円の場合→438万円
3億円を超え4%+738 万円
※3億円の場合→1938万円

そして、この二つの金額を考える際もととなるのは、経済的利益と呼ばれるものです。

これは、例えば弁護士が依頼を受け解決した相続トラブルで、結果として依頼人が5000万円の遺産を相続できた場合は、その5000万円が経済的利益ということになります。

日当

弁護士が、遠方の交渉相手先や裁判所に出向くといった場合にかかってくる費用です。
往復2~4時間までを半日として3~5万円、往復4時間を超えれば1日として5~10万円程度が相場といわれています。

※上記の金額は、執筆者の所属事務所の価格ではなく、一般的な相場になります。詳細な価格は事務所により異なりますのでご注意下さい。

実例に見る相続トラブルと弁護士費用


最後に相続トラブルと弁護士費用の実例についてご紹介します。

遺言書の記載に不満があるケース

<事例>
相談者は、兄と本人の2人兄弟(法定相続人も兄と本人のみ)であるが、被相続人である父親の死後、生前に父親と同居していた兄から「父の遺言に全財産4000万円を長男(兄)に相続させるという内容が書かれているので、お前には相続する財産は無い」と言われた。

X弁護士に相談をしたところ、

「遺言の有効性(遺言者の自筆でない箇所や、ワープロで作成した箇所が一部でもあれば遺言書は無効)」

「遺留分(遺言によっても奪うことができない各相続人の最低限の取り分)」

という2つの法的な観点から検証。

その結果、遺言の有効性は認められたものの、法定相続分(2分の1)の2分の1である1000万円を、遺留分減殺請求権を行使して取得できることとなった。

その対価として必要となったのが、以下の弁護士費用です。

<弁護士費用>

合計130万円
着手金40万円
成功報酬80万円
※経済的利益の8%
日当10万円
※5万円×2日間

特別受益が問題となったケース

<事例>
相談者は、妹と弟と本人の3人きょうだい(法定相続人もこの3人のみ)であるが、被相続人である父親の死後、生前に父親から弟が、事業上の借り入れ2400万円の返済を肩代わりしてもらっていたことが判明した。

父親の遺産は預貯金と自宅土地建物の合計6000万円である。

Y弁護士に相談をしたところ、

父親が行った弟の借金の返済の肩代わりは、「生計の資本としての贈与」として、特別受益(遺産の前渡しのようなもの)に該当することを主張することとなった。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて話し合いを行った結果、相談者の主張が認められ、2800万円((6000+2400)/3)の遺産を取得できることとなった。特別受益の主張を行わなかった場合に取得できた遺産は2000万円(6000/3)であったことから、遺産の取得額が800万円増加した。

その対価として必要となったのが、以下の弁護士費用です。

<弁護士費用>

合計200万円
着手金60万円
成功報酬140万円
※経済的利益(2800万円)の5%(特に主張を行わなくても相続できる分があることを考慮して低率としている)

財産の使い込みが問題となったケース

<事例>
相談者は、妹と本人の2人きょうだい(法定相続人もこの2人のみ)であるが、被相続人である母親の死後、認知症であった母親の財産を妹が5000万円ほど使い込んでいたことが疑われているが、妹は預金通帳などを相談者に見せず、使い込みを否定している。

Z弁護士に相談をしたところ、

妹が母親の財産を使い込んでいた場合は、民法上の「不法行為」に該当することから、使い込みの事実を調査の上、使い込まれた金額の半額である2500万円について損害賠償請求をすることとなった。

地方裁判所に損害賠償請求の訴えを起こして、審理を行った結果、相談者の主張が1500万円について認められた。

その対価として必要となったのが、以下の弁護士費用です。

<弁護士費用>

合計300万円
着手金134万円
※経済的利益(2500万円)の5%+9万円
成功報酬166万円
※経済的利益(1500万円)の10%+16万円

まとめ

相続トラブルにおける弁護士の仕事は、依頼者が正当な遺産の受け取りができるようにすることだけではありません。

紛争化した当事者間の関係を円滑に保ちながら、円満な相続、揉めない相続も、弁護士によって実現しやすくすることが可能になります。

すでに相続トラブルが発生している場合はもちろんのこと、話し合いが揉める前の段階でも、専門家に相談することで、早期解決が可能になりますので、是非弁護士をうまく活用してください。

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藤井 寿(弁護士・公認会計士)

藤井 寿(弁護士・公認会計士)

東京大学教養学部卒。リンクパートナーズ法律事務所所属。弁護士と公認会計士の両資格を保有する数少ない「ハイブリッド法曹」として活躍中。企業法務から個人の相続問題、交通事故等幅広い案件を扱う。桐蔭横浜大学法科大学院客員教授。防衛省再就職等監察官(非常勤)。
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