強要罪とは?成立しやすい具体例や被害に遭った際の相談先を解説

強要罪とは、暴行または脅迫を用いて人に義務のないことをさせたり、権利行使の妨害をしたりした際に問われる犯罪です。

強要行為は日常生活の中でも起こりやすく、被害を受けて悩んでいる方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、強要罪とはどのような犯罪かを具体例を交えて解説し、被害に遭った際の相談先を紹介します。

強要行為に悩んでいる方、またご自身が受けた内容が強要罪として成立するのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

こんな疑問にお答えします

Q.強要罪とはどんな犯罪ですか?成立する基準を教えてください。

A.強要罪とは、暴行または脅迫を用いて人に義務のないことをさせたり、権利行使の妨害をしたりした際に問われる犯罪です。

パワハラやセクハラ被害、土下座での謝罪要求を求められた場合にも、強要罪として処罰の対象にできる可能性があります。

「弁護士保険ミカタ」1日たったの98円で高額な弁護士費用を補償

強要罪とは?

強要罪とは、暴行または脅迫を用いて人に義務のないことをさせたり、権利行使の妨害をしたりした際に問われる犯罪のこと。

刑法では、次のように定められています。

第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

引用:法令検索e-Gov

強要罪における暴行は、殴る・蹴る・叩くなど身体や生命の危機に関わる害を与えることを指します。

脅迫においては、「従わないと痛い目をみるぞ」「すべてばらしてやる」などの自由や名誉、財産に対して害を加えるよう告げることによって怖がらせる行為が挙げられます。

被害の対象となるのは、被害者本人またはその親族のみです。

また、刑法に示されているとおり、強要罪は未遂であっても成立する可能性があります。

強要罪の罰則

強要罪の罰則は「3年以下の懲役」と懲役刑のみです。罰金刑がないことから、有罪となれば懲役が科される重い罪となります。

強要罪の罰則は、未遂においても同様に「3年以下の懲役」の対象となります。

脅迫罪との違い

脅迫罪との違いをみていきましょう。

脅迫罪とは、被害者本人やその親族の生命や身体、自由、名誉、財産に危害を与えるよう告げることで成立する犯罪です。

被害対象が被害者とその親族に限定される点では共通します。

しかし、強要罪においては人に義務のない行為をさせて行動の制限が加わるため、脅迫罪とは異なります。

脅迫罪の成立要件や被害に遭ったときの対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事

【判例つき】脅迫罪はどこから?成立要件と慰謝料、証拠について

他人を脅すと脅迫罪が成立しますが、具体的にどのようなケースで脅迫罪が成立するのかについては、正確に理解されていないことが多いようです。 たとえば、どのようなことを言ったら脅迫罪になるのか、電話やメール、ネット上の投稿など …

恐喝罪との違い

恐喝罪との違いも確認しておきましょう。

恐喝罪とは、脅迫や暴行を振るうなどで相手を恐がらせ、お金を巻き上げたり財産や財物を交付させたりする犯罪のことです。

強要罪との違いは、目的です。他者に義務のない行為をさせる強要罪に対し、恐喝罪は被害者からお金を巻き上げ不法利益を得ることが目的となります。

恐喝罪については、こちらの記事も併せてご覧ください。

関連記事

恐喝罪とは?成立要件や被害に遭った際の対処法を解説

恐喝罪とは、脅迫や暴力を手段として相手を怖がらせ、金銭や財産を脅し取る悪質な犯罪です。 被害を受けた方は非常に大きな精神的苦痛を受けるため、加害者を訴えて慰謝料を請求したいという気持ちがあるでしょう。 本記事では、恐喝罪 …

強要罪が成立する要件

強要罪は、以下3つを満たすことで成立します。

  1. 生命・身体・自由・名誉・財産に害悪を加える旨を告知すること
  2. 暴行・脅迫をもって強要行為をすること
  3. 義務のない行為の強要や、権利行使を妨害すること

生命・身体・自由・名誉・財産に害悪を加える旨を告知すること

一つ目に、生命・身体・自由・名誉・財産に害悪を加える旨を告知することです。

害悪の内容は、被害者やその親族に殴る・蹴る・叩くという直接的な暴行以外にも、財産に対して悪影響がある場合も含まれます。

告知の手段は、口頭だけでなく文章や態度、ネットへの書き込みも含まれます。

暴行・脅迫をもって強要行為をすること

暴行・脅迫によって強要行為をする点も、恐喝罪の成立要件のひとつです。

たとえば、「ここから突き落とすぞ」「殴るぞ」「この店から一歩も出さない」「会社にすべてばらしてやる」という脅しや、実際に暴行を手段として強要行為をすることが挙げられます。

義務のない行為の強要や、権利行使を妨害すること

義務のない行為の強要、また権利行使の妨害も成立要件のひとつです。

義務のない行為とは、他人から強制的に飲まされるお酒や土下座での謝罪などが挙げられるでしょう。

権利行使の妨害とは、仕事を継続したいのに退職を迫られたり、反対に退職を希望しているのに阻止されたりする行為です。

この要件では、脅迫や暴行によって被害者の行動の制限や権利行使の妨害が起きているという因果関係が重要となります。

強要罪になり得る具体例

強要罪は、日常生活において起こりやすい犯罪です。

「他人から脅されて従わざるを得なかった…」

そのような経験をした方もいるのではないでしょうか。

ここから紹介する具体例は、強要罪になる可能性のあるケースです。

被害を受けていると感じている方は、ご自身のケースと照らし合わせてみてください。

パワーハラスメント・アルコールハラスメント

パワーハラスメントアルコールハラスメントは、強要罪になる可能性があります。

パワーハラスメント(通称:パワハラ)とは、職場内において立場の強い者が権力を用いて弱い者へ嫌がらせをすることです。

アルコールハラスメント(通称:アルハラ)でよくあることが、お酒の一気飲みの強要です。

パワハラ罪やアルハラ罪という犯罪はないものの、嫌がらせの内容が脅迫や暴力を手段にして害悪の告知を行うと、強要罪となる可能性があります。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 「従わなければ減給か解雇だ!」
  • 「このお酒を一気飲みしなければ帰さないぞ」

退職や一気飲みは被害者にとって義務のある行為ではなく、脅しや財産に関わる害悪の告知を行うと、強要罪が成立し得るといえます。

パワハラについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事

パワハラは本当に訴えたもん勝ちなの?実情や訴える際の注意点も解説

パワハラは、上司が部下に対し通常の注意や叱責のレベルを通り越した苦痛を与える行為です。 昨今は「パワハラは訴えたもん勝ち」と考えている人も増えています。 しかし、果たしてそれは真実なのでしょうか。 結論から申し上げますと …

セクシャルハラスメント

性的な嫌がらせ行為となるセクシャルハラスメント(通称:セクハラ)も、強要罪が成立することがあります。

強要罪になる可能性のあるセクハラは、以下のようなケースです。

  • 「一緒に食事しないと殴るぞ」と、被害者を怖がらせてデートに誘った
  • 「付き合わないと解雇するぞ」など、拒否できない状況を作り出した

セクハラが強要罪として認められるポイントは、被害者の意に反して義務のない行為をさせ、権利行使を妨げることが論点となります。

土下座での謝罪要求

土下座での謝罪要求も、強要罪になる可能性があります。

単純に、「土下座して謝れ」と伝えただけでは強要罪にはなりません。

しかし、「ここで土下座しないと痛い目に遭わせてやる」「土下座しないとネットですべてばらしてやる」など、被害者に対して害悪の告知があるときは、強要罪が成立するといえます。

契約書へ無理やりサインを求める行為

契約書へのサイン要求も、強要罪となる可能性があります。

たとえば、被害者が押し売りをされたとします。

売り手側が暴行や脅迫を交えて契約書に無理やりサインさせた場合、強要罪に当てはまる可能性が高くなります。

また、暴行の告知や実際に危害を加えていなくても、「被害者が契約書にサインするまで帰らせてもらえなかった」「ドアに鍵をかけて拒否できる環境をなくされた」というケースも、強要罪として判断されることがあります。

強要被害を受けたときの相談先

日常の中で起こり得る強要被害。ここからは、実際に被害を受けたときの相談窓口を紹介します。

職場で被害を受けている場合は会社の相談窓口や人事部

職場で強要被害に遭った場合は、会社の人事部や法務部が適切な相談窓口です。

会社としては職場環境を良好に保つため、トラブル発生時は適切に対処する義務があります。

相談のしやすさは職場によって異なるかもしれません。

パワハラやセクハラを含め、違和感を持ったというケースでも、まずは相談してみるといいでしょう。

最寄りの警察署

最寄りの警察署への相談も、解決への手段のひとつです。

警察署に直接出向いても問題ありません。

ただ、先に相談したいという方は、以下の連絡先に電話してみてもいいでしょう。

警察に連絡する際は、できるだけ強要罪が事実であることを証明するものが必要となります。

たとえば、以下のような事実です。

  • 被害を裏付ける客観的証拠
  • 被害の悪質性を表す情報
  • 加害者の情報(わかる範囲)

警察が加害者を処罰するには、犯罪に該当することを100%立証しなければ立件することが難しくなるかもしれません。

特に、被害を裏付ける客観的証拠は、犯人を処罰するために有効なものとなります。

証拠収集に不安がある場合は、専門家の力を受けることを視野に入れてもいいでしょう。

弁護士

弁護士への相談も、解決に向けた有効な手段です。

弁護士は、法律的な知識や経験を持つことから、解決までの適切なアドバイスを受けられます。

  • 「自身が受けた被害が犯罪に該当するかどうか分からない」
  • 「そもそも犯罪として加害者を訴えられるのかどうか不安…」
  • 「被害を裏付ける証拠収集の方法が分からない」

このように悩んでいる方にとっても、弁護士が味方となってサポートしてくれるため安心して進められます。

また、慰謝料や示談金など民事上の責任にも対応してもらえるため、適切な対応策を立てられます。

強要行為に悩んだら?まずは弁護士への相談がおすすめ

強要罪は、懲役刑のみの非常に重い犯罪です。

被害に遭われた方は、精神的苦痛が大きくつらい思いをしているでしょう。

強要行為に悩んだ際の相談先をいくつか紹介しましたが、警察へ通報しても被害を裏付ける客観的な証拠収集や状況の違法性を立証する必要があり、精神的負担が重なる可能性があります。

そんなときに頼りになるのが、弁護士の存在です。

弁護士へ相談するメリット

弁護士に相談することで、以下のメリットがあります。

  • 法律をもとにした専門的なアドバイスを受けられる
  • 示談交渉の際もサポートしてくれる
  • 加害者への慰謝料請求にも応じてくれる

加害者への慰謝料請求も含め早期解決のサポートを求めるのであれば、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用を負担してくれるので助かります。

弁護士保険なら11年連続No.1、『弁護士保険ミカタ』

弁護士保険なら、ミカタ少額保険株式会社が提供している『弁護士保険ミカタ』がおすすめです。1日98円〜の保険料で、通算1000万円までの弁護士費用を補償。幅広い法律トラブルに対応してくれます。

>>弁護士保険ミカタの詳細はこちらから

経営者・個人事業主の方は、事業者のための弁護士保険『事業者のミカタ』をご覧ください。顧問弁護士がいなくても、1日155円〜の保険料で弁護士をミカタにできます。

>>事業者のミカタの詳細はこちらから

法人・個人事業主の方で法的トラブルにお困りの場合には、法人・個人事業主向けの弁護士保険がおすすめです。

経営者・個人事業主には『事業者のミカタ』がおすすめ!

『事業者のミカタ』は、ミカタ少額保険株式会社が提供する、事業者の方が法的トラブルに遭遇した際の弁護士費用を補償する保険です。

個人事業主や中小企業は大手企業と違い、顧問弁護士がいないことがほとんど。法的トラブルや理不尽な問題が起きたとしても、弁護士に相談しにくい状況です。いざ相談したいと思っても、その分野に詳しく信頼できる弁護士を探すのにも大きな時間と労力を要します。

そんな時、事業者のミカタなら、1日155円~の保険料で、弁護士を味方にできます!

月々5,000円代からの選べるプランで、法律相談から、事件解決へ向けて弁護士へ事務処理を依頼する際の費用までを補償することが可能です。

>>事業者のミカタの詳細はこちらから

弁護士保険の特徴について詳しくは、こちらの記事で解説しています。

関連記事

【2024年最新】弁護士保険の人気4社を徹底比較!補償内容や保険料、注意点を詳しく

「弁護士保険はいろいろあるけれど、何を基準に比較したらいいのか分からない」 弁護士保険に加入しようとしている方は、どこの保険会社を選んだらいいのか悩む方もいるでしょう。 本記事では、弁護士保険の人気4社の補償内容や保険料 …

記事を振り返ってのQ&A

Q.強要罪とはどのような犯罪ですか?
A.暴行または脅迫を用いて人に義務のないことをさせたり、権利行使の妨害をしたりした際に問われる犯罪です。

Q.強要罪の具体例にはどのようなものがありますか?
A.強要罪になる可能性のあるケースは、以下のようなものが挙げられます。

パワハラ・アルハラで、脅しや財産に関わる害悪の告知がある場合
セクハラに加え、害悪の告知がある場合
暴行や脅迫を交えて契約書に無理やりサインさせた場合

Q.強要被害を受けました。どこに相談すればいいでしょうか?
A.職場の場合は、まず人事部や法務部へ。そのほか警察、弁護士への相談も有効です。
ただ、警察の場合は、被害を裏付ける客観的証拠が必要となります。精神的負担を減らすためにも、まずは弁護士への相談をおすすめします。