みなさんは「別居調停」という言葉をご存じでしょうか?
よく「離婚調停」という言葉は耳にしますが、この別居調停も、裁判所で行われる調停の1つであり、いわば選択肢の1つと捉えていただけるとわかりやすいです。
というのも、離婚調停とは離婚を成立させるための調停です。
つまり、別居調停とは別居を成立させるための調停ということ。
今回は、この別居調停について詳しくご説明していきます。
こんな疑問にお答えします
Q.別居調停のメリット・デメリットを教えてください。
A.別居調停のメリットは、悪化しきってしまった夫婦仲を冷静に判断できるという点、別居の理由付けができるという点、婚姻費用についての取り決めができるという点です。一方で、デメリットは調停が成立してしまうという点、費用や手間がもう一度かかってしまう可能性がある点です。
別居するかどうかを含め、別居調停にはいくつか注意したいポイントがあります。場合によっては専門家に相談するなどして、どう判断すべきか意見を求めましょう。
正式名称は「夫婦関係調整調停」
冒頭にて、別居調停、離婚調停などという呼び名が出てきましたが、裁判所での夫婦仲に関する調停の正式名称は、「夫婦関係調整調停」と言います。
離婚もそうですし、夫婦仲を円満にする円満調停もすべて夫婦関係調整調停です。
そして、夫婦仲の改善において別居という選択肢を取るのも、夫婦関係調整調停というわけです。
すなわち、悪化しきってしまった夫婦仲をいったん冷静に判断するために、離婚をするわけでも、円満という取り繕いをするわけでもなく、お互い別居することに調停にて合意し、その後の夫婦関係について考えていこうという調停です。
では、この別居調停にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
別居調停の3つのメリット
別居調停のメリットといえば、上記でも触れたように、いったん悪化しきってしまった夫婦仲を冷静に判断できるという点。
別居の理由付けができるという点。
そして、婚姻費用(別居中の生活費のこと)についての取り決めができるという点です。
①夫婦仲を冷静に判断できる
よく付き合いのうまくいかなくなった恋人同士が、「いったん距離を置こう」といった仲を改善するための策を講じることがありますが、考え方としてはこれと同じです。
距離を置くことで夫婦仲を冷静に判断できるというわけです。
②別居の正当な理由ができる
夫婦には共同生活を送らなければならないという「同居義務」が生じているため、普通はそう簡単に別居ができるものではありません。
一方的な理由で、もしくは勝手に別居をしようものなら、同居義務違反という離婚原因を構成することになりますし、下手をすれば「悪意の遺棄」であるとして慰謝料請求を受ける危険もあります。
悪意の遺棄とは、簡単に言えば配偶者や子どもを放っておくことです。
夫婦が正当な理由もなく別居するというのは、これだけ複雑な問題を含んでいます。
よって、別居の正当な理由ができるというのはまさにメリットといえるでしょう。
③婚姻費用を取り決めてもらえる
これは収入がほとんどないという方のメリットと言えますが、別居するとなれば収入の無い側は生活費に困るのは当然です。
そこで、別居調停ではその間の婚姻費用についての取り決めもされるのが通常の取り扱いです。
お互いが生活していけるだけの収入がある場合、婚姻費用の問題はあまり出ませんが、そうでない場合は非常に重要な問題です。
別居調停の2つのデメリット
では、別居調停のデメリットといえば、どういった点になるのでしょうか?
こちらは、調停が成立してしまうという点。
そして、費用や手間がもう一度かかってしまう可能性がある点です。
①調停が成立してしまう
成立するのだから良いのではないか?とも感じられますが、後からやっぱり離婚したいと思い直した際、もう一度調停を経由しなければ離婚裁判を起こすことができないのです。
というのも、夫婦の離婚というのは、最初に必ず調停をしなければならないという「調停前置」の対象事件です。離婚はいきなり裁判を起こすことができません。
どうしても話し合いだけでは離婚が成立しなかった場合、最終的には裁判を提起し、相手と争うことで裁判官に離婚の訴えを認めてもらうというのが離婚の順序です。
調停というのは、双方の話し合いの延長を裁判所で行うというもの。
つまり、調停が不成立にならない限り、調停前置の条件を満たさないため裁判を起こすことができないのです。
②費用も時間もかかってしまう
上記のような理由から、もう一度調停を起こさなければならなくなった場合、当然、費用がかかってしまいますし、裁判所にも直接足を運んで、離婚についての話し合いを相手としなければならないため、時間もかかってしまいます。
つまり、別居調停を成立させる以上は、離婚についてはいったんリセットしなければならないのだと認識しておく必要があると言えます。
調停が成立する過程でどれだけ離婚について話し合っていても、手続き的にはすべてなかったことにされてしまう点はまさにデメリットといえるでしょう。
別居期間が指定されるわけではない
上記のように、別居調停にはメリットもデメリットもあります。
そして、もう1点注意しなければならないのが、別居期間の指定についてです。
別居調停成立後、その後の夫婦関係について考えていくのは当事者同士であり、その後の観察を裁判所が行うわけではありません。
また、別居調停が成立したからといって、別居期間が指定されるケースもほとんどありません。
通常は、「当分の間」といったような表現がされることが多いのです。
裁判所はなぜこういった表現をするかというと、夫婦仲についてどれだけの別居期間を指定すれば改善するといった根拠がまったくないため、裁判所は根拠のない明示をしたがらないのです。
よって、別居期間についてはどちらかが満足するまで、調停とは別にお互いに話し合うなどして、あらかじめ別居期間を定めておいたほうが将来的には良いかもしれません。
別居調停に向けての注意点
離婚前に別居調停をする際は、以下の2つのことに注意しましょう。
別居するかどうかの判断を理解しておこう
別居調停を成立しようと行動している時点で、すでに別居をしようと決めていることが多いでしょう。
ただ、中には別居をすべきかどうか判断に迷っている方もいらっしゃると思います。
すぐにでも別居をした方がいいとされる基準は、以下のようなケースです。
配偶者から身体的DVを受けている
配偶者からモラハラ(精神的虐待)を受けている
DV事案では、加害者である相手方と接触することは非常に危険な状況です。すぐに別居に踏み切った方がいいといえます。
上記以外の理由で別居を考えている場合は、先に述べたように別居後のお金に関して話し合えるよう要点を整理しておきましょう。
未成年の子どもがいる場合も注意しよう
未成年の子どもがいる場合も注意が必要です。
別居後にどちらが子どもを引き取って生活するのか話し合う必要があります。もちろん、別居調停でも話し合えますが、親権を確保する側が一緒に生活することが望ましいでしょう。
一般的に、子どもを連れての別居は生活面や金銭の負担も考慮しなければなりません。別居調停で婚姻費用を話し合う際に、子どもにかかる費用に関しても話し合うようにしましょう。
別居調停の合意は慎重に
上記のような理由から、別居調停は夫婦仲の問題をすべて解決してくれる手続きとは言い切れません。
悪い言い方をすれば、離婚問題をいったん保留にする程度です。
よって、別居調停を合意するかどうかの判断は慎重に行う必要があります。
場合によっては専門家に相談するなどして、どう判断すべきか意見を求めましょう。
夫婦仲の問題において、明確な1つの答えを導きだすのは簡単なことではありません。
まさにケースバイケースな対応が求められるため、専門知識や実務経験が豊富な弁護士に依頼するなどし、自身の判断を裏付けるアドバイスをもらうことをおすすめします。
別居調停を弁護士へ相談する方法
ただ、弁護士へ相談するといっても「どのように探せばいいのか分からない」と不安を抱える人も多いでしょう。
弁護士の相談ができる窓口は、以下の5つがおすすめです。
- 弁護士会による法律相談センター
- 法テラス
- 自治体の法律相談
- 弁護士保険
- 各法律事務所
それぞれの窓口の特徴や利用方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。
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弁護士保険の内容を知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
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記事を振り返ってのQ&A
Q.別居調停のメリットはありますか?
A.別居調停のメリットといえば、いったん悪化しきってしまった夫婦仲を冷静に判断できるという点。別居の理由付けができるという点。そして、婚姻費用(別居中の生活費のこと)についての取り決めができるという点です。
Q.別居調停のデメリットを知りたいです。
A.別居調停のデメリットは、調停が成立してしまうという点、費用や手間がもう一度かかってしまう可能性がある点です。
Q.別居調停では、別居期間が指定されますか?
A.別居調停が成立したからといって、別居期間が指定されるケースはほとんどありません。別居期間についてはどちらかが満足するまで、調停とは別にお互いに話し合うなどして、あらかじめ別居期間を定めておいたほうが将来的には良いかもしれません。
Q.別居調停で話し合っておいた方がいいポイントはありますか?
A.別居後の生活費や、子どもがいる場合は養育費等です。どちらが子どもと生活するかもしっかり話し合っておきましょう。