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別居調停の3つのメリットと2つのデメリット

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投稿日:2016年12月13日 更新日:

別居調停の3つのメリットと2つのデメリット
みなさんは「別居調停」という言葉をご存じでしょうか?

よく「離婚調停」という言葉は耳にしますが、この別居調停も、裁判所で行われる調停の1つであり、いわば選択肢の1つと捉えていただけるとわかりやすいです。

というのも、離婚調停とは離婚を成立させるための調停です。

つまり、別居調停とは別居を成立させるための調停ということ。

今回は、この別居調停について詳しくご説明していきます。

正式名称は「夫婦関係調整調停」

冒頭にて、別居調停、離婚調停などという呼び名が出てきましたが、裁判所での夫婦仲に関する調停の正式名称は、「夫婦関係調整調停」と言います。

離婚もそうですし、夫婦仲を円満にする円満調停もすべて夫婦関係調整調停です。

そして、夫婦仲の改善において別居という選択肢を取るのも、夫婦関係調整調停というわけです。

すなわち、悪化しきってしまった夫婦仲をいったん冷静に判断するために、離婚をするわけでも、円満という取り繕いをするわけでもなく、お互い別居することに調停にて合意し、その後の夫婦関係について考えていこうという調停です。

では、この別居調停にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

別居調停の3つのメリット

別居調停のメリットといえば、上記でも触れたように、いったん悪化しきってしまった夫婦仲を冷静に判断できるという点。

別居の理由付けができるという点。

そして、婚姻費用(別居中の生活費のこと)についての取り決めができるという点です。

①夫婦仲を冷静に判断できる

よく付き合いのうまくいかなくなった恋人同士が、「いったん距離を置こう」といった仲を改善するための策を講じることがありますが、考え方としてはこれと同じです。

距離を置くことで夫婦仲を冷静に判断できるというわけです。

②別居の正当な理由ができる

夫婦には共同生活を送らなければならないという「同居義務」が生じているため、普通はそう簡単に別居ができるものではありません。

一方的な理由で、もしくは勝手に別居をしようものなら、同居義務違反という離婚原因を構成することになりますし、下手をすれば「悪意の遺棄」であるとして慰謝料請求を受ける危険もあります。

悪意の遺棄とは、簡単に言えば配偶者や子どもを放っておくことです。

夫婦が正当な理由もなく別居するというのは、これだけ複雑な問題を含んでいます。

よって、別居の正当な理由ができるというのはまさにメリットといえるでしょう。

③婚姻費用を取り決めてもらえる

これは収入がほとんどないという方のメリットと言えますが、別居するとなれば収入の無い側は生活費に困るのは当然です。

そこで、別居調停ではその間の婚姻費用についての取り決めもされるのが通常の取り扱いです。

お互いが生活していけるだけの収入がある場合、婚姻費用の問題はあまり出ませんが、そうでない場合は非常に重要な問題です。

別居調停の2つのデメリット

では、別居調停のデメリットといえば、どういった点になるのでしょうか?

こちらは、調停が成立してしまうという点。

そして、費用や手間がもう一度かかってしまう可能性がある点です。

①調停が成立してしまう

成立するのだから良いのではないか?とも感じられますが、後からやっぱり離婚したいと思い直した際、もう一度調停を経由しなければ離婚裁判を起こすことができないのです。

というのも、夫婦の離婚というのは、最初に必ず調停をしなければならないという「調停前置」の対象事件です。離婚はいきなり裁判を起こすことができません。

どうしても話し合いだけでは離婚が成立しなかった場合、最終的には裁判を提起し、相手と争うことで裁判官に離婚の訴えを認めてもらうというのが離婚の順序です。

調停というのは、双方の話し合いの延長を裁判所で行うというもの。

つまり、調停が不成立にならない限り、調停前置の条件を満たさないため裁判を起こすことができないのです。

②費用も時間もかかってしまう

上記のような理由から、もう一度調停を起こさなければならなくなった場合、当然、費用がかかってしまいますし、裁判所にも直接足を運んで、離婚についての話し合いを相手としなければならないため、時間もかかってしまいます。

つまり、別居調停を成立させる以上は、離婚についてはいったんリセットしなければならないのだと認識しておく必要があると言えます。

調停が成立する過程でどれだけ離婚について話し合っていても、手続き的にはすべてなかったことにされてしまう点はまさにデメリットといえるでしょう。

別居期間が指定されるわけではない

上記のように、別居調停にはメリットもデメリットもあります。

そして、もう1点注意しなければならないのが、別居期間の指定についてです。

別居調停成立後、その後の夫婦関係について考えていくのは当事者同士であり、その後の観察を裁判所が行うわけではありません。

また、別居調停が成立したからといって、別居期間が指定されるケースもほとんどありません。

通常は、「当分の間」といったような表現がされることが多いのです。

裁判所はなぜこういった表現をするかというと、夫婦仲についてどれだけの別居期間を指定すれば改善するといった根拠がまったくないため、裁判所は根拠のない明示をしたがらないのです。

よって、別居期間についてはどちらかが満足するまで、調停とは別にお互いに話し合うなどして、あらかじめ別居期間を定めておいたほうが将来的には良いかもしれません。

別居調停の合意は慎重に

上記のような理由から、別居調停は夫婦仲の問題をすべて解決してくれる手続きとは言い切れません。

悪い言い方をすれば、離婚問題をいったん保留にする程度です。

よって、別居調停を合意するかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

場合によっては専門家に相談するなどして、どう判断すべきか意見を求めましょう。

夫婦仲の問題において、明確な1つの答えを導きだすのは簡単なことではありません。

まさにケースバイケースな対応が求められるため、専門知識や実務経験が豊富な弁護士に依頼するなどし、自身の判断を裏付けるアドバイスをもらうことをおすすめします。

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永瀬 優(パラリーガル)

永瀬 優(パラリーガル)

1986年生まれ。高校卒業後、東洋大学法学部法律学科へと進学し、2011年からパラリーガルとして法律事務所に勤務開始。法律事務所という環境化での経験を活かし、債務整理や離婚、相続といった法律関連の文章を得意としている。 たくさんの人に法律を身近に感じてもらいたい、誰もが気軽に法律を知る機会を増やしたい、という思いから本業の合間を縫う形で執筆活動を開始した。 現在もパラリーガルを続ける中、ライティングオフィス「シーラカンストークス」に所属するwebライター。著書に「現役パラリーガルが教える!無料法律相談のすすめ。お金をかけず弁護士に相談する方法と良い弁護士・良い事務所の探し方。」がある。
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