自転車事故で損害賠償1億円!?いま「自転車保険」が流行っているワケ

 

自転車事故で損害賠償1億円!?いま「自転車保険」が流行っているワケ
2015年10月から、自転車保険の加入を義務付ける全国初の条例が兵庫県で施行されました。

近年、損害保険企業を中心に自転車利用者を対象にした損害保険商品が展開されています。

そのきっかけは、とある自転車と歩行者の交通事故をめぐって下された衝撃的な判決でした。

加入義務化も!?広がる自転車保険ブーム

2015年10月1日、自転車利用者に対する損害賠償保険の加入を義務付ける条例が全国で初めて兵庫県で施行されました。

県は県交通安全協会と協力して、同年4月に「ひょうごのけんみん自転車保険」を新設し、県内各地で自転車利用者へ加入を勧めるなど啓発運動に力を入れてきました。

県内で自転車を利用する者なら県外在住でも加入可能で、年間1,000〜3,000円からの掛け金で上限5,000万〜1億円の賠償補償付き(対象は同居中の家族全員)とお手頃です。

保険加入者は9月15日現在で約37,000件。10月の義務化を控えさらに増加傾向にあるそうです。

ロードバイクブームの高まりと相まって、自転車利用者を対象とする損害保険商品(自転車保険)が近年注目を集めています。

その多くは上限1億円〜2億円と高額な賠償補償に対応していることが特徴です。

損保大手だけでなく通信・コンビニ業界などからも自転車保険が発表され、加入者が急増しています。

ここまで読んで「たかが自転車で損害保険なんて……」と感じたそこのアナタ。

じつは一連の“自転車保険ブーム”のきっかけは2013年に下された、自転車の運転手が加害者となった交通事故の裁判で、加害者側に巨額の損害賠償を命じた神戸地裁の判決でした。

その損害賠償額およそ9,500万円、しかも被告となった加害者は当時11歳の小学5年生でした。

いったいどうしてそんなことになってしまったのでしょうか。

自転車事故で1億円!?衝撃の判例

自転車事故の判例問題となった事故は2008年、冒頭で取り上げた自転車保険加入義務化条例が施行された兵庫県・神戸市で発生しました。

9月22日午後6時50分ごろ、神戸市北区の住宅街で自転車と歩行者が正面衝突しました。

マウンテンバイクを運転していた少年(当時11歳)は帰宅途中で、ライトを点灯した状態で下り坂を時速20〜30キロで走行していました。

歩行者は知人と散歩していた当時67歳の女性で、転倒して頭の骨を折るなどして病院に運ばれ、判決当時も意識が戻らない状態でした。

被害者と被害者に保険金を支払った保険会社が加害者側に計1億500万円の損害賠償を求めていました。

2013年7月4日の判決で神戸地裁は、少年の前方不注視が事故の原因だと認定し、さらに少年が事故当時ヘルメットを着用していなかったことなどを挙げ「監督義務を果たしていない」として、少年の母親に計9,500万円(女性側へ約3,500万円、保険会社へ約6,000万円)の賠償を命じました。

賠償額の内訳は、

(1)女性の介護費約:3,940万円(1日あたり8,000円の介護費に平均余命を掛けた額)
(2)事故で得ることのできなかった逸失利益約:2190万円(月額23万円の基礎収入を平均余命の半分の期間得られなかった、として算定)
(3)けがの後遺症に対する慰謝料:2800万円 など

 
とされています。

この判決は、自転車が加害者となった交通事故で1億円近くの高額賠償となった点、そして未成年者といえどもこのような重大な事故責任を免れることができない点で大きな注目を集めました。

「被害者が事故後も意識が戻らない状態で、慰謝料が跳ね上がった」ことも賠償額が高くなった要因の一つでした。

高額賠償判例は他にもあった!

自転車事故の高額賠償金例自転車側が加害者となった事故における高額賠償例は、実は他にも数多くあります。

賠償金4,746万円(2010年)

2010年1月10日、赤信号を無視して時速15〜20キロで走行していた競技用自転車が横断歩道を渡っていた75歳の女性に衝突し、転倒して頭を強く打った女性が死亡した事故では、自転車を運転していた46歳の男性に4,746万円の賠償命令が下りました(東京地裁2014年1月28日判決)

賠償金約5,000万円(2002年)

2002年9月4日には携帯電話を操作しながら運転していた当時16歳の女子高校生が乗っていた自転車が前を歩いていた当時54歳の女性に衝突しました。歩行者の女性は転倒して歩行困難になり仕事を辞めざるを得なくなりました。地裁は事故時携帯電話を使用しながら無灯火で運転していた女子高校生の賠償責任を認定し、約5,000万円の賠償を命じました(横浜地裁2005年11月25日判決)

高額賠償となってしまう背景

高額賠償となってしまう背景なぜ、自転車事故でこのように高額な賠償金が発生するのでしょうか。

大きな要因として、自転車の交通ルールに対する利用者の認識不足が考えられます。

道路交通法では、自転車は「軽車両」という車両の1種として扱われます。

事故を起こした場合は、自転車の運転者は自動車と同様に刑事上・民事上の責任を問われます。

これは運転者が未成年でも同じです。

交通ルールも、乗用車と同様に原則として車道の左側を走行する必要がありますし、一時停止・一方通行などの標識・標示に従わなければなりません(自転車を対象とする補助標識がある場合はこの限りではありません)。

ですが、この認識は日本の自転車利用者にあまり浸透していないようです。

自転車の運転には免許を必要せず誰でも気軽に利用できることもあり、交通違反があとを絶ちません。

2015年6月の道路交通法改正により自転車の交通違反に対する取り締まりが強化されることになりましたが、推定7,155万台とされる全国の自転車保有台数(平成25年現在、自転車産業振興協会調べ)はあまりに多く、交通違反の数に対して摘発が追いつかないのが現状です。

自転車事故の損害賠償をめぐる裁判の事例を振り返ると、自転車側の交差点手前での不減速・信号無視・安全不注視など加害者側に大きな過失がある例が目立ち、これが賠償額の高額傾向にある要因だと考えられます。

高額過ぎる賠償責任により自己破産も

また、自賠責(自動車損害賠償責任保険)の加入が法律で義務付けられている自動車と異なり、自転車には保険加入の義務がありません。

そのため、加害事故の高額な賠償額を支払いきれず自己破産に陥るケースが少なくないそうです。

自転車の普及推進や啓発活動をしている財団法人「日本サイクリング協会」(JCA)によると、全国の自転車の保有台数は7千万~8千万台で、うち約3千万台が日常的に利用されているとみられる。しかし、自転車の保険加入率について、JCAは「統計がないため把握し切れていないが、10%に満たないのではないか」との見解を示す。引用元:産経WEST

以前からよく知られている自転車保険としては、日本交通管理技術協会から「全国自転車安全整備店」の指定を受けた自転車屋さんで点検・整備を受けた自転車に貼られる「TSマーク」(青色・赤色)があります。

年間1,500〜2,000円の点検費用で、限度額1,000〜2,000万円の賠償責任保険が付帯しています。
TSマーク

自転車保険の発売

ところが前述の通り自転車事故の高額賠償判決が相次いだことで、より高額な対人補償をカバーした自転車保険が各社から発売されるようになりました。

掛け金の相場は大体3,000円〜6,000円前後、1ヶ月あたり250〜500円です。

ひと月コーヒー1杯分の値段で高額賠償のリスクを避けることができるなら安い投資かもしれませんね。
 

最後に

いかがでしたでしょうか。

この記事で取り上げた判例をきっかけに、自転車の運転をめぐる制度整備が現在急速に広がっています。

自転車利用者にとって自転車保険の選択肢が広がったことはありがたいですが、何より事故を起こさないことが一番です。

特にお子さんのいらっしゃる方は、我が子に交通ルールの遵守を徹底させることも必要です。

自転車は非常に便利な乗り物ですが、一歩間違えると自分だけでなく他の誰かの人生も台無しにしてしまう危険性もあります。

自転車運転のマナー向上や交通ルールがより広く浸透してくれることを願っています。

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山根浩

山根浩

フリーライター。東京都生まれ。2008年よりインターネットメディアを中心に法律、スポーツ、健康といった幅広いジャンルで執筆活動を開始。2010年以降は法律ジャンルに特化し、離婚、相続、交通事故、近隣トラブル、職場トラブルといった身近な法律トラブルに関する執筆を多く担当している。
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