【相談事例あり】離婚調停の申立の費用と弁護士費用の相場

吉田美希弁護士(クロリス法律事務所)

この記事の執筆者

法律事務所クロリス代表弁護士
吉田 美希

離婚調停の申立の費用と弁護士費用の相場(相談事例あり)離婚調停にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。

裁判所での離婚調停なんて一体どのくらいお金がかかってしまうのか…と不安に思う方も多いことでしょう。

この記事では、離婚調停において実際にかかる費用について、ご説明をしていきます。

離婚調停の申し立てにかかる費用

まずは、離婚調停を申し立てるにあたり、必要書類を取り寄せるためにどの程度の金額が必要になるのでしょうか。

前述しましたが、申立書に添付をする主な書類としては、戸籍謄本と年金分割のための情報通知書です。

戸籍謄本(450円)

最初に、戸籍謄本は本籍地のある役所の窓口で請求することができ、交付手数料は一律で450円です。

郵送で請求をする場合は、現金をそのまま封筒に入れるのではなく、定額小為替を使って請求をします。

郵送請求の場合、往復の切手代に加え、定額小為替は1枚につき100円の手数料がかかってしまいますので、交通費によっては、窓口で交付してもらう方が費用が安く済むかもしれません。

年金分割のための情報通知書(無料)

次に、年金分割のための情報通知書です。

交付手数料等はかかりませんが、交付のための必要書類として戸籍謄本が含まれる場合がありますので、戸籍謄本を請求する際には2通分を請求しておいた方がいいです。

また、取得には1か月程度かかると考えてよいでしょう。

調停の申し立てを急いでいる時には、まずは戸籍謄本のみ添付をして調停を起こし、次の期日までに情報通知書を準備するという方法もあります。

申立書の添付書類の費用は、以上となります。

もし、裁判所から追加で補てんの書類をお願いされ、取得の方法がわからない場合はすぐに担当の書記官に聞きましょう。

わからないことは裁判所の書記官に遠慮なく相談してみましょう。

弁護士にお願いをしている場合は、全て弁護士頼みでいいわけですが(弁護士に代理人を頼むメリットの一つです)、1人で申立をする場合は、裁判所の書記官が唯一手続きについて相談できる相手だと思ってよいでしょう。

とはいえ、彼らは裁判所の職員であり、あくまでも中立な立場なので、私的なことを私的な意見で答えるようなことは当然ありません。

共感的に話を聞いてもらうということも難しいでしょう。

しかしながら、裁判手続きに関してはプロ中のプロですし、一般的にはどの書記官も親切なので、手続き上わからないことをしっかりと質問することができれば、離婚調停もよりスムーズに進めることができるようになります。

少し話がそれてしまいましたが、次は、裁判所へ提出する申立書に貼付する収入印紙についてです。

収入印紙(1,200円)

収入印紙は、郵便局等で切手と共に窓口で購入することができますし、裁判所の売店でも売っています。

離婚調停の場合は1,200円分の収入印紙を貼付することになります。

切手(1,000円弱)

最後に、切手代ですが、こちらは裁判所によって運用が違いますので、事前に必ず確認しましょう。

とはいっても、大体1,000円もかかりませんので心配はいりません。

このように、離婚調停の申立の費用は、3,000~5,000円もあれば十分といえます。

離婚調停そのものには、あなたが思っているほどお金はかからないのです。

弁護士に依頼する場合の費用の相場

さて、上記はあくまでも1人で申立をするときに実際にかかる費用です。

では、弁護士に依頼をした場合はどの程度の金額がかかるのでしょうか。

これは、弁護士報酬も様々であり、いくらかかるとは一概に言えません。

従来弁護士は弁護士報酬について規定があり、その規定に沿った報酬でしか金額設定をすることができませんでした。

しかし、現在では弁護士の報酬基準は個々の自由となっており、弁護士費用がどの程度かかるのか、という説明をするのが非常に難しいです。

さらにいえば、地域によっても金額に差がありますが、弁護士費用の相場は着手金・報酬共に30万円ほどです。

もちろんこれより低い設定の法律事務所もありますし、離婚に絶対の自信を持っているような事務所であれば、これより高いところもあるかもしれません。

※関連ページ→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由

ただ、元々あった弁護士報酬基準の離婚における報酬額は30~50万円と規定されていましたので、旧規定だけをみれば、全国平均額は最低ラインの金額設定といえます。

しかし、離婚調停の場合は、何回調停期日が設定されるのか決まっているわけではありませんし、設けられた期日回数に応じて料金が変化する場合もありますので、弁護士に依頼をする際には、よく確認をしておく必要があります。

実際にあった離婚調停案件と弁護士費用①

ここで、離婚調停を申し立てたものの調停では解決せず、離婚裁判まで及んだ事例をご紹介します。

相談者は、生活費も入れず暴力を振るう配偶者(DV夫)と、どうしても離婚をしたいという42歳のTさん(女性)です。

ご相談内容

Tさんの夫は、婚姻直後に刑事事件の被疑者として拘束され、結果的に1年近くの実刑判決が下されたことがありました。

その間の生活費はすべてTさんが負担し、出所してからも十分な生活費を家計に入れてくれることはありませんでした。

Tさんは、自身の両親から生活費の援助を受けていたのですが、夫にそれを知られると持ち出されてしまい、夫がすべてギャンブルに使ってしまっていたようです。

また、Tさん夫妻には子どもが1人おり、夫は子どもが泣きやまないと暴力を振るうだけでなく、Tさんが制止に入ると今度はTさんに暴力を振るうこともあったそうです。

Tさんはこの生活に耐えられなくなり、現在は夫と別居、そしてご相談へと来られました。

弁護士介入後

弁護士介入後、まずは夫との話し合いを試みましたが、夫側はこれを拒否。

このままでは埒が明かないと判断し、離婚調停を申し立てることになりました。

しかし、夫側は数回指定された期日にすべて出頭せず、離婚調停は不成立になってしまいました。

その後、しばらく期間をおいていたのですが、Tさんはそれでも離婚は諦められないとのことで、離婚裁判を提訴することになりました。

訴状(訴え提起時に裁判所と相手へ提出する書類)には以下のことを請求し、裁判所に判決を求めています。

・離婚の請求
・子どもの親権者をTさんに指定する請求
・養育費の請求
・慰謝料の請求

提訴後、被告(裁判では原告・被告といいます)である夫側も弁護士に依頼をしたようで、被告側の代理人弁護士から答弁書が届きました。

答弁書には、生活状況はいたって健全であったこと、暴力を振るったことはないこと、慰謝料を支払うのはこちらではなく、むしろ不貞を繰り返した原告側にあること、という主張がなされました。

親権について争われることはありませんでしたが、Tさんとはまったく逆の主張です。

しかし、裁判所側からは何が真実かはわからないため、それぞれの主張と証拠によって裁判は争われていくことになります。

もちろんTさん側も反論をしていきます。

その後、半年間に渡って数回の裁判期日が開かれ、Tさんはこれ以上裁判が続くようであれば、親権の指定と離婚さえできれば良いと考えるようになっていきました。

また、被告側も慰謝料の支払いさえなければ離婚には合意すると主張しており、最終的にはTさんの考えを尊重する形で、裁判は和解にて終了することになりました。

結果

結果的に、Tさんが最も希望していた離婚は成立し、子どもの親権も得ることができたため、Tさんは大変満足されていました。

また、養育費についても1ヶ月6万円の確保ができたので、当面は生活もしっかりとやっていけそうだと笑顔で仰っていました。

慰謝料については残念でしたが、事前に慰謝料請求のための証拠集めをしていたわけではなく、それはまた被告側も同様であったため、このままでは事実の認定にさらに長期間要することが想定されていました。

しかし、Tさんは精神的にも、これ以上裁判が継続することを望んでいなかったため、和解という結果で良かったと言えるでしょう。

かかった弁護士費用

今回の場合、離婚調停前の交渉、離婚調停、離婚裁判といった業務を行っており、トータルしてかかった費用は40万円ほどです。

依頼が継続していたこともあり、個別に依頼をした場合の一般的な相場よりも安くなっています。

また、Tさんに一括の支払いを求めるのは酷であるため、毎月1万円ずつ分割にでお支払いをいただいております。

実際にあった離婚調停案件と弁護士費用②

ご相談内容

次にご紹介する相談者は、子どもの教育方針についてひどく揉めてしまい、妻の行動に耐え切れず、子どもを連れて家を出てきたという35歳のHさん(男性)です。

Hさんの妻は、いわゆる教育ママと呼ばれる熱心な母親でした。

しかし、子どもが小学校に入学すると行き過ぎた教育をするようになり、毎日のように習い事と勉強を強要するばかりか、子どもが外で遊ぶことも認めず、しばしばHさんと教育方針について意見の対立が生じていました。

子どもにはのびのびと自由に成長してもらいたいHさんとは違い、Hさんの妻はまさに強要と言えるに等しい行為をしてきたとのこと。

Hさんは子どものことを思い、別居や離婚はなるべく避けたいと考えていましたが、ついには妻が子どもに手を上げるようになり、これ以上は限界だと感じ離婚を決意しました。

Hさんは、妻に対する離婚請求と子どもの親権を争いたいとのことで、今回のご相談へと来られました。

弁護士介入後

弁護士介入後、妻に対して、Hさんが突然家を出てしまった理由とHさんが求める請求について説明したところ、ヒステリーのような状態になってしまい、これ以上の交渉は困難と判断しました。

そこで、次の策として離婚と親権者指定の調停を申し立てたところ、妻側も代理人を立ててきたため、代理人同士での交渉が可能となりました。

調停はお互い主張を譲らず、平行線となっていましたが、調停外では代理人同士による両者が妥協できるポイントの詮索が行われ、精神的にも金銭的にも負担が大きくなってしまう裁判を避けての調停成立を目指してきました。

両者で主張が食い違った点は、やはり親権についてです。

双方、離婚については合意をしていたのですが、どちらも親権を譲る気はなく、定期的な面会交流の案も出たものの納得することはありませんでした。

これを見かねた裁判官の指示により、調査官による調査が行われ、今年で12歳になる子どもの意見を聞いてみたところ、母親とは一緒にいたくないと強く訴えたため、最終的に離婚調停は成立、親権については審判にてHさんを親権者と定める決定が出されました。

結果

結果的に、調停期日10回という長丁場となってしまいましたが、無事に離婚は成立し、Hさんが親権者に指定されることになったため、最高の結果になったと言えるでしょう。

妻は子どもの意見に大変ショックを受けていたようですが、反省をし、今後はできれば面会交流を実施してほしいと、Hさんに懇願しているようです。

面会交流に関しては介入していませんので、今後どうなるかはわかりませんが、離婚したとはいえ、父母共に力を合わせて良い子育てができることを願っています。

かかった弁護士費用

今回の場合、離婚と親権者の指定が無事に成立ということで、併せて40万円ほどの報酬をいただいております。

弁護士費用を確認する際に気をつけること

特に、離婚は調停のみで決着がつかない可能性が非常に高く、調停が不成立となった後の裁判手続きの費用までが込みなのか、裁判となった場合は別途費用がかかってしまうのか、その点も注意して確認しなければなりません。

よくわからないうちに話が進み、そのままの勢いで依頼をしてしまい、後から高額の報酬金を請求されてしまった…なんてことにならないために、依頼をする前に納得がいくまで確認をする必要がある、ということを忘れないでください。

以上のように、離婚調停にかかる費用は、1人で全てをやる場合は少額で済みますが、弁護士に依頼をした場合には高額になる可能性が高いので、事前によく確認しておくことが必要です。