有責配偶者からの離婚請求はできるのか

有責配偶者からの離婚請求はできるのか自身が離婚の原因を作ってしまった場合、法的には「有責配偶者」として取り扱われることになります。

たとえば、自身の不貞行為により婚姻関係が破綻してしまったとなれば、不貞行為をした者は有責配偶者になるのです。

では、自身が離婚の原因を作ってしまったにもかかわらず、自ら離婚請求することは可能なのでしょうか?

この答えは、『原則として有責配偶者からの離婚請求は認められていない』です。

離婚原因を作っておきながらの離婚請求を裁判所は認めていないのです。

しかし、条件を満たすことがあれば、有責配偶者からの離婚請求であっても認められることはあります。

数十年前にはまず見られませんでしたが、時代の流れに応じて裁判所の判断も変わってきており、原則を覆すとまではいかないまでも、現実には数多くの有責配偶者からの離婚請求を認める判例が出てきています。

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婚姻生活に回復の見込みがない場合

過去に、有責配偶者からの離婚請求が認められた実例としては、主に婚姻生活に回復の見込みが見られない場合に離婚が認められてきました。

こうした傾向を「破綻主義」といい、たとえ有責配偶者からの離婚請求であっても、離婚を認めたほうがより夫婦のためになるのでは?と考えられた結果、このような判断が下されています。

こうした考え方は、実際の裁判にも浸透してきており、現実に多くの裁判所にて有責配偶者からの離婚請求を認めています。

ただし、いずれも一定の条件を満たした場合に限るため、あくまでも原則は、有責配偶者からの離婚請求は認められないと覚えておきましょう。

有責配偶者は調停も起こせない?

これまで触れてきた、離婚を認めるというのは、離婚が裁判にまで発展してしまった場合をいいます。

では、裁判ではなく、離婚調停にて離婚請求することは可能なのでしょうか?

たとえば、自身が有責配偶者であり、相手が離婚に応じてくれないとなると、調停すらも起こすことができなくなってしまうのでしょうか?

結論から申し上げると、調停の申し立ては可能です。

ただし、離婚をするかどうかの決定権はあくまでも相手側にあるため、相手が離婚に応じないとなれば調停は不成立となってしまいます。

調停が不成立になってしまった場合、再度の協議による離婚を図るか、裁判によって離婚請求するしか選択肢はありません。

しかし、上記のように有責配偶者からの離婚請求は原則として認められていないため、相手が離婚に応じず、協議離婚・調停離婚が成立しないとなると、簡単に離婚はできなくなります。

過去に有責配偶者からの離婚請求が認められた実例とは?

有責配偶者からの離婚請求はできるのか
では、過去にはどういった場合に有責配偶者からの離婚請求が裁判所によって認められているのでしょうか?

下記にて3つほど実例を紹介いたします。

まずは、不貞行為と婚姻生活の破綻との関連性が認められなかった場合です。

たとえば、不貞行為は婚姻関係を破綻させる行為であり、有責配偶者にされる根拠にはなりますが、婚姻生活の破綻と不貞行為に関連性が認められなければ離婚請求は可能です。

次の例は、すでに別居期間が長期間(10年程度)にまで及んでいて、いまさら婚姻生活を継続、復帰させることが困難な場合です。

過去においては、別居期間は20年、30年以上必要だとする判断もありましたが、ここ最近では10年程度でも離婚が認められています。

最後の例は、婚姻生活の破綻が一方によるところでなく、双方に同程度の責任があると判断された場合です。

この場合、双方が有責配偶者となってしまい、どちらからも離婚請求できないといった事態に陥ってしまいます。

これを避けるため、双方に同程度の責任がある場合は、離婚を認める配慮がなされています。

なお、上記の実例はいずれも幼い子どもがいなかったため離婚請求が認められたという背景もあります。

現状、幼い子どもがいる場合は有責配偶者からの離婚請求は認められないと考えておいたほうが良いでしょう。

それほどに子どもの存在は大きなものなのです。

様々な事情と審理によって判断される

なお、上記の実例は簡単にまとめてはありますが、現実には様々な事情と十分すぎるほどの審理によって最終的な判断がされることになっています。

たとえば、別居期間中の婚姻費用、過去の双方の不貞行為、一方が専業主婦である場合の離婚後の生活保障、財産分与や慰謝料といった、離婚に関する様々な事情が取り上げられることになり、すべての事情を考慮した上で、離婚を認めるかどうかを判断します。

こうしたことからも、有責配偶者の離婚請求は容易にいかないのは間違いありません。

よって、有責配偶者の立場にあり、どうしても離婚したい場合、上記のように、裁判は必須となる可能性が強いことからも、可能な限り弁護士に相談することをおすすめします。