離婚の事情は人それぞれではありますが、いわゆる法的な離婚原因(浮気など)といわれるものがない離婚も、決してありえない話ではありません。
その一つに挙げられるのものとしては、愛情がなくなってしまったことによる離婚です。
「愛情が冷めてしまったので離婚をしたい」では納得しない
夫へ「愛情が冷めてしまったので離婚をしたい」と申し出たところで、大抵の場合は納得してもらえません。
お互いに不満があったならばともかく、いきなり何の原因もなく離婚を申し出られたのでは、突然のことに驚くでしょうし、簡単に納得できるはずがありません。
しかし、一方からすれば愛情のない相手と今後も夫婦関係を継続し続けるのは、苦痛でしかないのです。
このようなすれ違いによる離婚は、本当によくある話です。
子育ても一段落して、もう一度新しい自分を見つけたいという熟年離婚も、昨今では決して珍しい話ではなくなりました。
離婚問題のすべてが慰謝料や養育費を争っているわけではないのです。
相手に納得してもらえないなら離婚調停
では、相手に離婚を納得してもらえない場合、どのように離婚を進めればよいのでしょうか。
自分の気持ちを伝える努力をした上で、どうしても納得してもらうことができないのであれば、協議離婚の成立はもう諦めるしかありません。
こうなったときに利用する裁判手続きが、離婚調停なのです。
今回は、愛情が冷めてしまったが夫がどうしても離婚に応じてくれない場合の離婚調停について、お話していこうと思います。
協議離婚ができないならば離婚調停が有効な手段
相手が協議離婚に応じてくれないのであれば、裁判手続きを利用するしか方法はありません。
離婚問題は調停前置主義の関係からも、必ず調停手続きから始めることになります。
離婚調停とは、簡単に言えば裁判官と調停委員をともなった裁判所での話し合いのことをいいますが、これでは話し合いの場が裁判所へ移っただけではないのか?と捉えることもできます。
果たして離婚調停へ発展させることによって、協議離婚にはなかったどんなメリットがあるというのでしょうか。
離婚調停のメリット
①自分の考えが伝わりやすい
まずは、自分の考えをより伝えることができるようになります。
これには調停委員の存在が大きく影響しています。
調停委員は話し合いを円滑に進めるために、裁判官とともに調停の場に立ち会ってくれますので、調停委員には包み隠さず自分の考えを伝えるようにしましょう。
自分が夫へ抱いている現在の感情、考え方や今後の見通しなど、協議離婚の段階では無碍にされてしまい夫に伝えることができなかった内容であっても、調停委員ならば必ず聞いてくれます。
調停委員という第三者を通すことによって、夫側もその気持ちを受け止めてくれる可能性が高くなるでしょう。
当事者同士では納得がいかないことでも第三者からの発言によって心が動き、話し合いが進展するというのはよくある話です。
さらに、裁判所から選任されている調停委員は様々な分野の有識者ですので、内容をかみ砕いたうえで、相手にとって説得力のある表現をしてくれます。
自分の言葉ではうまく伝えることができなかったとしても、有識者である調停委員にならば理解してもらうことができるかもしれません。
このようなことからも、離婚調停における調停委員の存在は話し合いをする進めていく上で、非常に重要なのです。
②やり直す方向に話が進むこともある
ただし、必ずしも離婚を勧められるわけではありません。
今の状況であれば、もう一度やり直すべきだとアドバイスをされることもあります。
あくまでも調停委員は双方のために、これがベストであるという意見を出してくれます。
法的な離婚原因がないような離婚調停の場合は、どちらに原因があるともいえませんので、妥当だと考えられる方向性で話し合いが進められていくことになります。
いくら愛情が冷めてしまったからといって、感情だけで今後の見通しもまったくないまま離婚を要求しているようでは、調停委員に反対をされてもおかしくありません。
夫婦の今後について、総合的な目線で判断をされますので、離婚だけが必ず認められるわけではないのです。
さらに、調停委員には、離婚問題に経験豊富な弁護士などが選任されることもありますので、自分たちにはなかった新しい意見をもらうこともできます。
調停委員の意見によって、離婚問題が解決となった事例は数え切れないほどあります。
③お互いが冷静になれる
離婚調停の最大のメリットは「冷静さ」です。
今まで寄り添ってきた相手と離れるというのは、そんなに簡単なことではありません。
お互いの合意があればスムーズに進むかもしれませんが、先述しているとおり一方が反対しているとなれば話し合いは難航を極めます。
『言ってもわからないじゃないか!』『どうしてわかってくれないの?』
このような言い争いにどうしてもなってしまうわけです。
しかし、離婚調停を利用するとなれば、話し合いの場は裁判所です。
心強い第三者の意見もありますし、別席調停であれば顔を合わすこともありませんので、お互いが冷静になって話し合いをすることができるはずです。
本当に良い結果というのは、冷静な判断の先に生れるということを忘れてはいけません。
離婚調停によってお互いが冷静になった結果、自らの気持ちを理解してもらい、新しい人生を歩みだすきっかけを掴むこともできるかもしれません。