離婚における調停調書の内容に法的効力はあるのか

離婚調停で決まったことに法的効力はあるのか「離婚調停といっても結局は話し合いの延長戦」

「決められたことも口約束みたいなもので、守られるようなものではない」

このようにお考えの方、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、離婚調停にて決められた内容については、しっかりと法的な効力が発生します。

離婚調停が成立すると、裁判所から「調停調書」という書面が作成されます。

この調停調書というのは、裁判による判決とほぼ同じ法的効力を持つものです。

たとえば、調停調書に記載されている離婚成立の事実だけでなく、親権財産分与養育費慰謝料といったものまで、すべての事項に法的効力が及ぶことになります。

こんな疑問にお答えします

Q:配偶者との調停離婚を検討しています。調停離婚の際に残す「調停調書」には、強い効力があるのでしょうか?

A:調停調書には法的な効力があります。これにより、戸籍にも離婚を反映することや相手が約束を守らなかった場合に行う「強制執行」を実施できます。

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調停調書があれば戸籍上も離婚が反映

離婚調停による離婚の成立というのは、法律上の離婚が成立したということです。

しかし、いくら法律上の離婚が成立したからといって、何もしなければ戸籍上に離婚が反映されることはありません。

この2つは別々の手続きになりますので、十分注意しましょう。

戸籍上も離婚を反映させるためには、裁判所から作成された離婚調書が必須です。

この離婚調書と離婚届、その他の必要書類を添付したものを市区町村役場に提出することよって、戸籍上も離婚が反映されることになります。

つまり、調停調書は離婚を戸籍に反映させる法的効力があると言えるのです。

ただし、この離婚届は調停成立から10日以内に、調停を申し立てた者が提出をしなければなりません。

これがなされないままでいると、罰金規定もありますので、必ず行うようにしてください。

なにかしらの都合でどうしても期限までに間に合わないような場合は、事前に提出が遅れてしまう旨を役所側にしておくことをおすすめします。

協議離婚と調停離婚の大きな違い

協議離婚においては、離婚協議書を公正証書にして残しておかなければ、すべての離婚条件に対する法的な効力を得ることはできませんが、離婚調停であれば成立と同時に法的効力のある調停調書を受け取ることが可能です。

公正証書とは、「公証人」という方が公証役場で作成する公文書のことです。

協議離婚の際に作成するのが「公正証書」で、調停離婚の際に作成するのが「調停調書」であることを、頭に入れておいてください。

公正証書でない離婚協議書は、いわばただの紙と言い換えることもできます。

協議離婚の場合、後から法的効力を得るために、調停や裁判などを経なければならない点に注意しましょう。

なお、裁判所にて交付される調停調書正本は1度しか受け取ることができないため、大事に保管するようにしてください。

紛失してしまった場合は、調停調書謄本の交付が可能ですが、多少の手数料がかかってしまいますので注意しましょう。

謄本というのは、正本とほぼ同様の効力が生じる書面のことです。

調停調書を取り寄せる手続き

調停成立後、調停調書が家に届くまではどのような流れになるのでしょうか。

調停調書の内容を裁判所で確認する

離婚調停が成立した際は、裁判所の書記官が調停調書を作成します。

その後は当事者と裁判官、書記官が立ち合って書面内容を確認します。

合意した場合はそれ以降、簡単に内容を修正できません。

そのため調停調書を読み合わせる際は、「決定事項が漏れなく反映されているか」「全員の理解内容に間違いがないか」を念入りにチェックしておきましょう。

調停調書の正本を取り寄せる

調停調書の正本を取り寄せるためには、裁判所に申請する必要があります。

離婚届の提出時は謄本(写し)でも認められますが、相手が約束を守らない時に行う「強制執行」の手続きをする際は正本が必要になります。

そのため、忘れないように調停調書の正本を取り寄せておきましょう。

調停調書の正本を請求するのに必要な書類などは、以下になります。

  • 申請書
  • 収入印紙(手数料支払いのため)
  • 切手と返信用封筒(裁判所で直接受け取る場合は不要)
  • 調停調書を手元で保管する

取り寄せの手続きをした調停調書は、申請書が裁判所に届いてから2日~1週間程度で送られてくるのが一般的です。

手元に届いた調停調書は法的効力を持つ重要書類であるため、大切に保管してください。

万が一、1週間以上待っていても届かない場合は裁判所に問い合わせてみましょう。

調停調書の効力とは

調停調書には戸籍上の離婚も成立させる効力がある点は、先述した通りです。

また、調停調書は「確定判決と同一の効力を有する」と定められています。(家事事件手続法第268条第1項)。

調停調書があれば別途訴訟を起こすことなく、直接的に強制執行手続きへの移行も可能です。

お金に関する事項にも法的効力は及ぶ

調停調書にお金に関する事項が記載されていれば、もちろん法的効力が及ぶことになります。

すべての離婚に共通していえることですが、たとえ離婚が成立したとしても、お金の問題がすべて解決していることは非常に少なく、離婚後に揉めてしまうというのはよくある話です。

ここで効果を発揮するのが、調停調書の存在というわけです。

調停調書があれば、家庭裁判所に履行勧告や履行命令の申立てをすることが可能です。

どちらも裁判所から相手方に対して支払いを促す手続きです。

こちらの手続きに関しても離婚届の場合と同様、しっかりと守られない場合は罰金の規定もあります。

しかしながら、相手がそれでも支払いをしてこない場合、履行の手続きではこれ以上の強制をさせることができないため、お金の回収は確実とはいえません。

履行勧告や履行命令でも支払いをしてこない相手に対しては、強制執行による差押えを検討することになります。

強制執行は有効な手続きではあるが・・・

履行勧告や履行命令というのは、間接的にしか強制をすることができないため、間接強制と呼ばれている手続きです。

間接強制にてお金の回収ができない場合は、直接強制である強制執行による給与の差押えなどを検討することになるのですが、実はこちらも回収が必ず約束されているものではありません。

相手が職についていなかったり、そもそも財産を持ち合わせていなかったり、生活保護費を受給していたりと、様々な事情が想定されますが、支払い能力がない相手に対して支払いを強制することはできないということです。

こうしたことから、金銭問題における離婚調停の法的効力はあまり期待できるものではありません。

こちらはたとえ離婚公正証書や裁判所による判決書があった場合でも、同様のことが言えます。

結局は相手次第となってしまうことを覚えておきましょう。

よって、後々になって回収できない事態に巻き込まれないためにも、最初の支払いの段階で一括での回収、または頭金を高額に設定するなどして、相手から出来る限りの支払いを受けておくようにしましょう。

法的に有効な書面さえあれば、いつでもお金の回収ができるわけではないとうことを、頭に入れておいてください。

離婚調停を検討する場合は弁護士への相談も視野に

離婚調停の際、「調停調書に離婚条件の記載漏れがないか」などは弁護士に確認をとるのが有効です。

調停調書の記載内容に誤りがあったとしても後から変更を申し入れることは困難なため、調停成立の場面で内容を十分確認する必要があります。

また、調停手続きに弁護士が同席することにより、調停委員に対して自らの主張を理路整然と伝えられます。

なお、弁護士に相談すれば調停調書のサポートだけでなく、離婚条件の交渉なども依頼できます。そのため、調停離婚を考えている方は最初から弁護士のサポートを受けることで安心して諸手続きを進められます。

弁護士費用が不安なら弁護士保険の活用も検討しよう

ただ、弁護士へ相談するとなると費用に関して不安になる方も多いでしょう。そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。

弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。

通常、弁護士を通してトラブルを解決しようとすると、数十万から数百万単位の弁護士費用がかかる場合があります。

しかし、弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に、弁護士に支払う費用を抑えられます。

調停離婚での不安がある場合は、弁護士保険の加入も視野に入れましょう。

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記事を振り返ってのQ&A

Q:調停調書とは何ですか?
A:調停が成立した際に発行される、法的効力を持つ書類です。

Q:調停調書の正本はどのように取り寄せるのですか?
A:裁判所に申請書を送る必要があります。
裁判所に申請書が届いてから1週間以上経っても送付されない場合は、裁判所に確認を入れましょう。

Q:調停調書はお金のことに関しても法的効力を持ちますか?
A:はい。家庭裁判所に履行勧告や履行命令の申立てをすることが可能です。
それでも相手が応じない場合は、差押えなどの強制執行手続きへと移行することもできます。ただし、相手に支払い能力がない場合は回収できないリスクもあります。

Q:離婚調停の際は弁護士に相談する方が良いでしょうか?
A:弁護士に相談すれば調停調書のサポートはもちろん、離婚条件の交渉なども依頼できます。
調停離婚を検討しているのであれば最初から弁護士のサポートを受けることで、安心して諸手続きを進められるでしょう。