離婚調停において未成年者の子どもがいる場合、親権者を決めないことには離婚が成立することはありません。
どのような事情があろうとも、父親・母親のどちらが子どもを引き取るのかを必ず決めなければならないのです。
慰謝料や財産分与などは離婚の成立とは関係がないので、後からでも協議をすることが可能ですが、子どもがいる場合はそうはいきません。
離婚とは、未成年者の子どもの成長に著しく影響を及ぼすものなので、最優先で協議が成されることになります。
しかしながら、夫婦間における親権問題は話し合いがもつれることが多く、調停による話し合いだけでは決まらないことも多いのです。
お互いの合意があれば、どちらが親権者となっても構わないのですが、どちらも親権を譲れない、どちらも責任放棄をしているなど、なかなか決まらない事態も想定されます。
家庭裁判所調査官というキーマンの存在
そうなった場合、裁判官の判断により家庭裁判所調査官(以下、単に調査官といいます。)が介入し、過去や現在の子どもと当事者との関係や今後の見通しについてなど、様々な側面からの調査がなされることになります。
調査官は事実関係に加え、私感による意見を述べることができるので、担当となった調査官へのアピールは子どもの親権を獲得する上で非常に重要なものとなります。
今回は、離婚調停で相手に親権を取られないために必要となる知識をご紹介いたします。
調査官の裁判所における役割
家庭裁判所における調査官の役割は、一般的な家事調停や審判事件においての事実関係の調査に加え、少年の非行事件に関する調査や、親権者の指定に関する調査です。
今回は、この3つ目にあたる親権者指定に関する調査について詳しくご説明します。
上述したように、親権者がなかなか決まらない場合、当事者同士の意見だけではなく、実際の生活状況や家庭環境を踏まえたうえで第三者による意見が必要になります。
調査官は調査結果による事実関係を基準にし、第三者目線でどちらが親権者となるべきかを専門知識を交え裁判官や当事者へ促します。
このような役割があるため、調査官は心理学や教育学に精通しており、子どもの心情や周りの環境を分析した結果から、どちらが親権者として適格かを導き出します。
この専門知識があるために、裁判所における調査官の調査への信頼はかなり厚いものとなっており、裁判官も調査官の意見を重視していますし、調停委員も参考にしています。
調査官の調査内容
調査官の調査内容は、大まかには下記の通りです。
①現在の監護状況
現在の監護状況が子どものためになっているかを焦点に、現在の監護親や看護補助者(同居人など)を面接をしたり、場合によっては学校や保育所にも足を運び調査します。
②子どもの意向を確認する
子どもが15歳以上のときには、その子の意見を聞かなければならない規定があります。
また、裁判官が必要と判断すれば15歳未満の子であっても意向を確認することがあります。
③現在の非監護権者の受け入れについて
非監護権者が親権を主張している場合、子どもを受け入れられる状況が整っているかどうかを調査により判断します。
これには生活環境だけでなく収入に関する調査も行い、子どもを十分に養育していくことが可能かどうかを見極めます。
④子どもと他の親族との交流関係について
実際に、子どもがどのような交流関係を持っているのかを調査します。
子どもの監護親と非監護親にも他の親族らと関わりを持たせ、その際の言動を見ることもあります。
これらの調査内容は「調査報告書」として裁判官や調停委員へと提出されることになります。
裁判官はこの内容を鑑(かんが)みたうえで、場合によっては審判という形で親権者の決定を出すこともあります。
つまり、調査官との面接は子どもの親権を決める上で非常に重要となりますので、いい加減な気持ちで臨まないようにしましょう。
なお、調査官による調査は原則として非公開とされていますが、調査報告書に関しては当事者であれば閲覧謄写を申請することができます。
離婚調停で親権を獲得する2つのポイント
では、特にどのような点に気をつけていれば離婚調停において親権を獲得することができるのでしょうか。
まずは、面接時における子どもへの愛情の有無です。
どれだけ自分が子どもを大切に思っているのかを伝えましょう。
次に、子どものために割ける時間や、経済的な部分での余裕もポイントとなります。
子どもをしっかりと養育できることを伝えなければなりません。
有責配偶者(離婚原因を作った者)でも親権は得られる
仮に、有責配偶者(離婚原因を作った者)であっても、子どもの養育に関しては親権を得ることが可能です。
離婚原因は大きな判断のポイントにはならず、あくまでもポイントとなるのは、子どもを養育すべき環境がいかに整っているかです。
したがって、調査官には自分が親権者にふさわしいと必ず伝えるようにしましょう。
調査官は事実関係を調査することが仕事ですが、親権者となるべき気持ちを持っているか否かもしっかりと見ています。
ただし、あまり感情的になってしまうと逆にマイナスの印象となってしまいますので、冷静に面接を進めるようにしましょう。
調停委員へのアピールも忘れずに
また、調査官への印象はもちろん重要なポイントのですが、調停委員へのアピールも忘れてはいけません。
調査官の報告書も非常に重視されるのですが、裁判官が調停委員へと意見を求めることも多いので、調停委員への心証も大事にしましょう。
話し合いがまとまらない場合は審判手続きへ
調査官は必要に応じて調停期日にも同席し、当事者へ意見を促すこともあります。
あくまでも自主的な話し合いによる解決が調停の目的です。
しかしながら、一方がどうしても親権を譲らないとなってしまうと他の方法で判断するしかありません。
それが、裁判官による家事審判手続きです。
当事者からの申立により審判手続きに入ることもできますが、離婚調停内で解決がされない場合は移行という形を取られるのが一般的です。
家事審判手続きの流れ
家事審判手続きとは、裁判官が調停や調査報告書の内容を鑑み、どちらが親権者となるかを決定します。
これを審判決定といい、判決と同様の効力があるとされています。
ただし、この審判決定に不服がある場合は2週間以内に「即時抗告」をすることも可能です。
即時抗告がなされた場合、この審判決定は効力を失い、高等裁判所にて審理されることになります。
高等裁判所での決定に対しても不服がある場合、「特別抗告」をすれば最高裁判所まで審理をすることも可能なのですが、子どもの親権に関してはあまり一般的とはいえません。
抗告が繰り返されれば審理に1年以上かかってしまうこともありますので、通常は面会交流の調停を検討することがほとんどです。
子どもの利益を考えた審判決定がなされますので、よほどの事情でもない限り、即時抗告がされることは通常ありません。
それでもやっぱり母親が有利
親権のポイントについてここまで言及してきましたが、やはり子どもの親権については母親が有利です。
それが本来の形であるという認識も世間に浸透していますので、父親側が親権をとれることはよほど環境が整っていない限りは難しいといえます。
さらに、子どもが幼ければ幼いほど母親有利とされています。
母親側に特別悪い事情がない限りは、まず親権者は母親に指定されると考えていて間違いありません。
離婚トラブルが解決しない場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、相談者の権利を優先して解決を図ってくれます。
弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用を負担してくれるので助かります。