家庭裁判所に離婚調停を申し立てる!手続き方法や必要書類一覧

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この記事の執筆者

森本 由紀(行政書士・夫婦カウンセラー)

夫婦間の話し合いで離婚ができない場合、裁判所に離婚調停を申し立てるという方法があります。

今回は、離婚調停の申し立て手続き方法や必要書類についてご説明します。

こんな疑問にお答えします

Q.離婚調停を申し立てるときに必要な書類を教えてください。

A.離婚調停申し立て時に用意しなければならない書類には、次のようなものがあります。

  • 調停申立書
  • 戸籍謄本
  • 年金分割のための情報通知書
  • 資料・証拠等
  • 収入印紙(1200円)
  • 連絡用郵便切手
  • その他各裁判所で用意されている付属書類

離婚調停の申立は、裁判所とのやりとりが必要になります。必要書類の収集や調停でのやりとりに不安を抱える方もいるでしょう。そうした場合は、弁護士の力を借りてもいいでしょう。

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そもそも、家庭裁判所での離婚調停とは?

離婚調停はどんなときに行う?

日本では夫婦が離婚をするときには、「協議離婚」と言って話し合いだけで決めることができます。

しかし、一方が離婚を希望しているのに他方が応じなかったり、夫婦間で離婚の話し合いができなかったりすることがあります。

また、お互い離婚する意思はあるけれど、条件面での折り合いがつかないというケースもあります。

夫婦間で離婚の話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合には、協議離婚ができません。

このような場合には、裁判所に離婚調停を申し立てることが可能です。

離婚調停が成立すれば、「調停離婚」という形で離婚ができます。

離婚調停は裁判ではなく話し合い

離婚調停は裁判所で行いますが、裁判とは違ってあくまで話し合いになり、非公開で行われます。

離婚調停では当事者である夫婦が直接顔を合わせて話し合うわけではなく、裁判官と民間から選ばれた調停委員(通常男女1名ずつ)が間に入って調整を行います。

調停期日には、夫婦は交代で調停室に入り、調停委員と話をします。

調停委員は内容を整理して相手に伝えたり、問題解決に向けた助言やあっせんを行ったりします。

調停中の雰囲気画像引用元http://www.courts.go.jp/niigata/about/koho/l4/Vcms4_00000160.html

調停中の雰囲気
画像引用元:新潟家庭裁判所

このようにして話し合いを進め、最終的にまとまれば調停成立となります。

調停が成立すれば、裁判所でまとまった内容を「調停調書」という書面にします。

調停調書が作成されると、調停が成立した日から、裁判で決まったのと同じ効力を持つことになります。

※関連ページ→「離婚調停委員ってどんな人?資格は?変更は可能?

調停が成立しないこともある

家庭裁判所で離婚調停を行っても、必ず離婚が成立するわけではありません。

司法統計によると、家庭裁判所に申し立てられた離婚調停が成立する割合は50%前後となっていますから、約半分しか成立していないことになります。

なお、調停申し立て後に夫婦間で協議離婚が成立し調停を取り下げるケースもありますから、残り半数の調停が全部不成立になっているわけではありません。

しかし、「裁判所で調停すれば必ず離婚できる」というわけでは決してなく、特に一方が離婚を断固拒否しているような場合には、調停しても無理矢理離婚させるようなことはできません。

調停が成立しなかったらどうなる?

夫婦間で離婚自体には合意しているけれど、ごく一部の条件で折り合いがつかないような場合には、調停不成立とするのではなく、裁判所が職権により離婚の決定(審判)を出すことがあります。

この場合には、「審判離婚」という形で離婚が成立することになります。

もし調停不成立となった場合、どうしても離婚したければ再度協議離婚を試みるか、それも無理であれば裁判を起こして離婚裁判」をする必要があります。

なお、裁判になっても最終的に判決までいくとは限らず、裁判所で当事者同士が歩み寄り、「和解離婚」という形で離婚が成立することもあります。

※関連ページ→「離婚裁判の流れや期間と弁護士費用を実例とデータを交えて解説

家庭裁判所への離婚調停申し立ての必要書類

離婚調停は、家庭裁判所に調停申立書等の書類を提出することにより申し立てます。

離婚調停申し立て時に用意しなければならない書類には、次のようなものがあります。

調停申立書

離婚調停を申し立てるには、調停申立書を作成する必要があります。調停申立書の書式は、最寄りの家庭裁判所で入手することもできますが、裁判所のホームページからもダウンロードすることもできます。

書式例を参考に、パソコンを使って自分で一から作成してもかまいません。

なお、申立書での表示は、夫婦のうち調停を申し立てる側が「申立人」、他方が「相手方」となります。

戸籍謄本

離婚調停申し立ての際に必ず提出しなければならないのが、当事者(夫婦)の戸籍謄本(こせきとうほん)です。

戸籍抄本(こせきしょうほん)と勘違いする人も多いですが、戸籍謄本は同じ戸籍に入っている人全員が表示されているもですから、夫婦の場合には1通でよいことになります。

戸籍謄本は住所地ではなく、本籍地の役所に請求します。

郵送で請求することも可能です(※郵送による請求方法はそれぞれの役所のホームページに記載されています)。

年金分割のための情報通知書

離婚の際に年金分割を希望する場合には、あらかじめ「年金分割のための情報通知書」という書面を日本年金機構から取り寄せる必要があります。

お住まいの地域の年金事務所に行って「年金分割のための情報提供請求書」(※書式は年金事務所にあります)を提出すれば、自宅に「年金分割のための情報通知書」が郵送されてきますので、これを申立書に添付します。

「年金分割のための情報通知書」は、取り寄せのために3~4週間程度かかることがありますから、早めに準備しましょう。

資料・証拠等

調停で必要になると思われる資料等を申し立て時に提出しておくとスムーズに調停が進むことが期待できます。

たとえば、不動産の財産分与について話し合う場合には、不動産登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産評価証明書を添付します。

また、養育費の額を決めたい場合には、夫婦双方の収入がわかる書面(源泉徴収票、所得証明書等)を提出しておくとよいでしょう。

その他、暴力を理由に離婚を要求する場合には診断書等、不貞を理由に離婚を要求する場合にはその証拠等を提出することもできます。

こうした資料・証拠等は、申し立ての際に必ず提出しなくてもかまいません。必要な資料については随時裁判所から指示があります。

収入印紙(1200円)

離婚調停の申し立て費用は1200円になっており、収入印紙で納めます。

収入印紙は、郵便局のほかコンビニでも購入できますから、1200円分購入し、申立書に貼付します。

連絡用郵便切手

調停申し立て時には、裁判所からの連絡に使う郵便切手(予納郵券)を前もって提出しておくことになっています。

必要な切手の額や組み合わせは裁判所によって違いますから、提出先の家庭裁判所に確認しましょう。

予納郵券の合計金額は1000円程度になります。

なお、調停終了時に余った切手は返してもらえます。

その他各裁判所で用意されている付属書類

調停申し立ての際には、申立書以外に、「事情説明書」「進行に関する照会回答書」「連絡先等の届出書」等、各裁判所が独自に用意している付属書類に必要事項を記入するのが一般的です。

こうした付属書類の書式は提出する家庭裁判所で申立書の書式と一緒にもらうことができます。

申立書をダウンロード等で自分で用意した場合には、家庭裁判所に申立書を持ち込んだ際に、その場で記入すればOKです。

家庭裁判所での離婚調停では陳述書が必要?

陳述書を出すメリット

離婚調停の際には、自分の考えや言い分を書面にし、「陳述書」という形で提出することができます。

調停期日には、調停委員に直接言いたいことを伝えられますから、陳述書は必ず出さなければならないわけではありません

ですが、実際に調停の場になると、言いたいことをうまく言えなかったり、調停委員にきちんと趣旨が伝わらなかったりすることがあります。

あらかじめ書面にすることで、内容を整理して伝えることができるだけでなく、事前に調停委員に読んでもらえますから、調停の時間を有効活用できます。

陳述書を提出するタイミング

陳述書は申立書と一緒に出してもかまいませんが、申し立て後に出してもかまいません。

なお、陳述書は裁判所を通じて相手にも送られることになりますから、次の調停期日の1週間くらい前までには出しておいた方が良いでしょう。

提出は持参、郵送のほか、FAXでもOKです。調停期日当日に持参してもかまいませんが、可能な限り事前にFAXしておくのがおすすめです。

陳述書の書き方

タイトルは「陳述書」または「主張書面」とし、申立後に裁判所で付される事件番号(※申立書と同時に出すときには不要)、作成日付を書き、自分の氏名を書いて押印します。

陳述書の書き方に細かいきまりはありませんが、内容をできるだけ整理して分かりやすく書くことを心がけましょう。

相手に対する恨みつらみを書き連ねて陳述書が膨大な量になってしまうということもありがちですが、長くなってしまうと言いたいことが伝わりませんし、心象も悪くなってしまいます。

陳述書は長くても5ページくらいまでにしておくのが無難です。

離婚調停の申し立て先は家庭裁判所

相手が住んでいる近くの家庭裁判所に申し立てる

離婚調停は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになっています。

離婚調停になるようなケースでは、住民票上は夫婦とも同じ住所になっているけれど実際には別居しているということもありますが、住民票上の住所ではなく相手が実際に住んでいるところの家庭裁判所に申立書を提出します。

なお、夫婦双方が「この家庭裁判所で調停をする」と決めて合意していれば、本来の管轄以外の家庭裁判所に申し立ててもかまいません。

この場合には、申立書と一緒に「管轄合意書」(※書式は裁判所のホームページなどにあります)を提出することになります。

自分の住んでいる近くの家庭裁判所で調停をしたい場合

離婚調停の管轄は原則として相手方の住所地の家庭裁判所ですが、たとえば、小さい子どもを連れて別居している妻が申し立てをするような場合、もし夫が遠方に住んでいれば、調停のたびに子どもを連れて移動しなければならなかったり、子どもの預け先を探さなければならなかったりしますから、大きな負担になってしまいます。

そこで、やむを得ない事情がある場合には、自分の住んでいる近くの家庭裁判所に対して「自庁処理」(その裁判所で事件を処理してもらうこと)をお願いすることができます。

自庁処理を希望する場合には、調停を行いたい家庭裁判所に、申立書と一緒に「自庁処理上申書」(※書式は裁判所のホームページなどにあります)という書面を提出します。

自庁処理は必ず認められるわけではありませんが、事情を考慮して希望する裁判所で調停を行ってもらえる場合もあります。

離婚調停申立書の提出方法

家庭裁判所に持参

調停申立書は申し立て先の家庭裁判所に持参して提出することができます。

家庭裁判所が開庁している時間は平日9時~17時ですが、申立書受付の窓口は混雑していることもありますので、できるだけ早い時間に持って行きましょう。

なお、提出時には、記入の訂正に備えて、印鑑(※認印で可)を持って行きましょう。

もし収入印紙や郵便切手を買って行くのを忘れた場合には、裁判所内や裁判所近くに購入できる場所があります。

郵送による提出も可能

平日になかなか家庭裁判所に行く時間がない場合や、遠方の家庭裁判所に申し立てる場合などには、郵送で調停申立書を提出することもできます。

郵送の場合には、記入漏れや書類漏れがあれば受け付けてもらえないことがありますので、事前に電話で必要書類等を確認し、漏れのないように気を付けましょう。

その他の注意事項

申し立ての際に相手方に知られたくない情報がある場合

提出した調停申立書等のコピーは、原則として相手方に送られることになります。

申立書には申立人の連絡先も記載しますから、暴力等を理由に相手方に連絡先を内緒にしている人などは、そのままでは連絡先を知られてしまう可能性があります。

また、その他にも相手方に知られては困る情報がある場合もあると思います。

相手方に開示してほしくない情報については、家庭裁判所に対し、資料非開示の申出をすることができます。

各裁判所で用意されている付属書類の中に「資料非開示の申出書」というのがありますから、それに記入して申出を行います。

婚姻費用分担の調停を同時に申し立てた方がいい場合も

別居中でも夫婦は婚姻費用を分担する義務があり、もし相手が生活費を払ってくれないようなら家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てることができます。

離婚調停を申し立ててもすぐに離婚となるわけではなく、調停が成立するまでには数ヶ月から1年程度はかかるのが通常ですから、その間は婚姻関係が続くことになります。

たとえば、妻が離婚調停を申し立てる時点で、別居している夫が生活費を払ってくれていないようなら、離婚が成立するまでの生活費を確保する必要がありますから、婚姻費用分担請求調停を同時に申し立てた方が良いケースがあります。

なお、婚姻費用分担請求調停を申し立てる場合には、申立書のほか、収入印紙1,200円分と指定された郵便切手が必要になります。

遠方の裁判所の場合には電話会議も可能

相手方が遠方に住んでいる場合、自庁処理が認められなければ、原則どおり相手方の住所地の家庭裁判所で調停が行われることになります。

そうなった場合、調停のために何度も遠方の裁判所まで出向かなければならない手間が発生してしまいます。

現在は、家庭裁判所の調停では電話会議が導入されており、調停期日に必ずしも遠方まで出向かなくてもよくなっています。

ただし、最終的に調停成立となった場合、調停調書を作成する日には、夫婦双方が裁判所に出頭する必要があります。

離婚調停を弁護士に依頼する場合には?

離婚調停を弁護士に依頼した場合には、弁護士が代理人となって申立書の作成、必要書類の取り寄せ、申立書の提出等を行ってくれます。

また、弁護士は調停期日に一緒に家庭裁判所に行き、調停室にも一緒に入ってくれます。

弁護士への依頼は、調停の途中からでも可能です。

申し立て後に調停を弁護士に依頼する場合には、弁護士が用意してくれる手続代理委任状に署名捺印すれば、弁護士の方で家庭裁判所に対して受任の手続きを行ってくれます。

離婚裁判の流れや期間と弁護士費用を実例とデータを交えて解説

離婚調停を弁護士に依頼した際の弁護士費用

では、離婚調停の手続きを弁護士に依頼した場合、どれくらいの弁護士費用が必要になるか気になる方もいるでしょう。

離婚調停を弁護士に依頼すると、「着手金」と「報奨金」の2つの費用がかかります。

着手金とは、離婚調停を弁護士に依頼したときに支払う費用です。着手金は、解決内容に関係なく必要となる費用と覚えておきましょう。

一方、報奨金とは解決時に支払う費用です。どのような解決に至ったかで金額が異なります。

離婚調停でかかるそれぞれの費用相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:15万〜30万円程度
  • 報奨金:30万円程度

報奨金については、法律事務所によって異なるでしょう。詳しい費用を知りたい方は、いくつか見積もりをとってみることをおすすめします。

離婚調停を弁護士に一任するメリットは、こちらの記事を参考にしてください。

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家庭裁判所への離婚調停申し立て手続きと必要書類まとめ

離婚調停の申し立て時には、上記を参考に必要書類等の準備をしましょう。

なお、離婚調停申し立て時の注意事項や書式については、各家庭裁判所でも配布されています。

予納郵券の額や付属書類の書式は各裁判所で違いますから、申し立て先の裁判所で配布されているものを入手してから申し立てを行うとスムーズです。

また、離婚調停を弁護士に依頼したいという方、もしくは弁護士費用の見積もり次第で依頼しようと考えている方は、弁護士に相談してみるといいでしょう。

法律事務所や窓口によっては、初回相談を無料で行っているところがあります。

それぞれの窓口の特徴や利用方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。

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弁護士保険の内容を知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.離婚調停ってどんなときに利用するものですか?
A.夫婦間で離婚の話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合に、裁判所に離婚調停を申し立てることが可能です。離婚調停が成立すれば、「調停離婚」という形で離婚ができます。

Q.離婚調停を申し立てるときに必要な書類を教えてください。
A.離婚調停申し立て時に用意しなければならない書類には、次のようなものがあります。

  • 調停申立書
  • 戸籍謄本
  • 年金分割のための情報通知書
  • 資料・証拠等
  • 収入印紙(1200円)
  • 連絡用郵便切手
  • その他各裁判所で用意されている付属書類

Q.離婚調停では陳述書が必要ですか?
A.必ず必要ではありませんが、あらかじめ書面にすることで内容を整理して伝えることができます。また、事前に調停委員に読んでもらうことで、調停の時間を有効活用できるメリットがあります。

Q.離婚調停はどこに申し立てればいいですか?
A.離婚調停は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになっています。離婚調停になるようなケースでは、住民票上は夫婦とも同じ住所になっているけれど実際には別居しているということもありますが、住民票上の住所ではなく相手が実際に住んでいるところの家庭裁判所に申立書を提出します。

Q.離婚調停を申し立てる際の注意事項はありますか?
A.暴力等を理由に相手方に連絡先を内緒にしている人などは、そのままでは連絡先を知られてしまう可能性があります。相手に自分の住所や知られたくない情報があれば、家庭裁判所に対し、資料非開示の申出をすることができます。
婚姻費用分担の調停を同時に申し立てた方がいい場合もあるので、注意しましょう。

Q.遠方の裁判所に出向くことができません。どうすればいいでしょうか?
A.遠方の裁判所の場合には電話会議も可能です。ただし、最終的に調停成立となった場合、調停調書を作成する日には、夫婦双方が裁判所に出頭する必要があります。