ある日突然、内容証明郵便が届いた場合、どうしたら良いのでしょうか?
内容証明は、無視しても良いものなのでしょうか?もし無視した場合、どうなるのでしょうか?
今回の記事では、「内容証明を無視したらどうなるのか」について、内容証明の効力・効果の解説とともにご紹介いたします。
また、後半では、「内容証明を無視された場合はどうしたら良いのか」についても説明いたします。
※関連記事→「訴状を無視して裁判も欠席するとどうなるのか」
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こんな疑問にお答えします
Q: 内容証明を無視したらどうなるのか?
A:川島 浩(弁護士)
内容証明は手紙の一種ですので、内容証明が送られてきたからといって、相手の請求に応じる法的義務が生じるわけではありません。 しかし、内容証明を無視すると、相手方が裁判を起こす可能性が高くなります。 裁判を起こされる前に、なるべくお早めに弁護士に相談しておきましょう。
弁護士に相談をする際には、弁護士の費用がかかるケースに備えて、弁護士保険に加入しておくこともおすすめです。
実際に訴訟などになった際の弁護士費用を軽減することが可能です。
また、法人・個人事業主の方には、法人・個人事業主向けの弁護士保険がおすすめです。
Q::内容証明を送ったのに返事がない場合、どうしたらいいですか?
A:川島 浩(弁護士)
内容証明郵便に返事がない場合でも、まず冷静に状況を確認しましょう。内容証明自体には法的な強制力はないため、受け取った相手が返答をしない場合があります。しかし、返答がないからといってそのまま放置するのはおすすめできません。以下の手順で対応を検討してください。
内容証明の受領確認: 内容証明郵便には配達記録が残るため、相手が確実に受け取ったかを確認します。相手への再連絡: 念のため、メールや電話などで連絡を取り、内容証明について確認します。対応期限を設ける: 明確な期限を設け、返答を求める再通知を行うと効果的です。
Q: 次の手はどのように進めれば良いですか?
A: 返答がない場合、法的手段を検討することが一般的です。
内容証明の無視は相手方がトラブルを深刻に捉えていない可能性を示すため、以下の行動を検討してください。
弁護士に相談: 具体的な状況を専門家に伝え、法的手段が適切かどうか判断してもらいます。
裁判の準備: 相手との交渉が困難な場合、調停や訴訟などの法的措置を準備します。
第三者機関の利用: 必要に応じて、消費者センターや行政機関などの調停サービスを利用する方法もあります。
補足:
相手が内容証明を無視したからといって即座に法的義務が生じるわけではありません。しかし、無視は誠意がない対応とみなされ、裁判の際に不利になる可能性があります。したがって、速やかに専門家に相談し、最適な解決方法を選択することが重要です。
そもそも「内容証明」とは?
内容証明とは、「郵便局が内容を記録してくれる特別な手紙」です。
通常の手紙であれば、郵便局員が文書の内容を確認することはありません。
これに対し、 内容証明の場合は、手紙を差し出す際に、郵便局員が文書の内容を確認して、「手紙にどのようなことが書かれているのか」を記録してくれます。
また、内容証明には、「配達証明」を同時に利用することが一般的です。
配達証明とは、「何月何日に相手方が受け取ったのか」ということを郵便局が証明してくれる制度です。
つまり、内容証明が届いた場合、「あなたがいつ受け取ったのか」ということが郵便局に記録されています。
あなたが「そのような手紙を受け取った覚えはない」と主張しても、郵便局に記録が残っているため、そのような主張は一般的に認められないことになります。
内容証明を無視するとどうなる?効力・効果とは?
それでは、内容証明を受け取った場合、無視したらどうなるのでしょうか?
内容証明郵便にはその内容によって様々な法的な効力・効果が生じえます。
たとえば、時効を中断する効力のある「催告」や、「時効の援用」の意思表示、「解除」の意思表示などです。
とはいえ、内容証明が送られてきたからといって、相手の要求に応じなければいけない法的義務があるわけではありません。
ただし相手が内容証明を送ってきたということは、「相手が本気で裁判を考えている」ということです。
内容証明を無視すると、近いうちに裁判を起こされる可能性が高いでしょう。
内容証明には、「何月何日までにご連絡してください」「何月何日までにお金を振り込んでください」と書いてあることがあります。
このような期限が書いてあっても、法的に返事をする義務やお金を支払う義務が生じるわけではありません。よって、その日までに返事を出す義務はありません。
しかし、内容証明に期限が書いてある場合は、その日までに対応しなければ、相手方が裁判の準備を始める可能性が高くなります。
裁判を起こされてしまうと、時間も費用もかかります。
裁判を起こされた後に、あわてて裁判に対応しようとしても、時間が足りないかもしれません。
相手から裁判を起こされる前に、弁護士に相談しておきましょう。
つまり、「内容証明を無視したからといって、法律的な効力・効果があるわけではないが、早めに弁護士に相談をしておいた方がよい」ということです。
内容証明を受け取ってすぐに弁護士に相手との交渉を依頼すれば、裁判に巻き込まれずに済む可能性があります。
相手方としても、「内容証明を送ってすぐに返事が来たから、裁判を起こさずに、話し合いで解決しよう」と穏和に考えるかもしれません。
内容証明を受け取ったら、どうしたら良い?
それでは、内容証明を受け取った場合、具体的にはどのように行動したら良いのでしょうか?
時系列によって説明していきます。
(1)内容証明に書かれている文章をきちんと確認する
まずは、内容証明に書かれている相手方の主張を、きちんと理解しましょう。
内容証明を受け取った方の中には、慌ててしまい、中身をゆっくり確認しない方がいらっしゃいます。
まずは落ち着いて、内容証明をきちんと読み直してみましょう。
書かれている内容に納得できるのであれば、基本的には問題はありませんが、多くの場合、納得できない場合が多いと思います。
そのため、すぐに要求には応じず、法的な観点からみると実は理由がなかったり、理由があったとしても、請求額の減額や、分割払いなど、交渉の余地があるかもしれません。
慌てて要求に応じず、冷静になってじっくりと考えてから回答するようにしましょう。
書かれている内容に納得できないのであれば、慎重に対応しなくてはいけません。
内容証明を何度も読み直して、「この部分は納得できる」「ここは納得できない」など、どの部分に齟齬があるのか、整理してみましょう。
(2)内容が間違っているものだったらどうすればいいの?
内容証明に記載されている内容を確認して、それがデタラメだったらどうすればいいのでしょうか。
内容証明は正当か不当かを証明するものではなく、差出人の認識によって記載されるものです。受け取った側が認識していない事実である可能性もあるため最後まで目を通す必要があるでしょう。
内容証明に記載された内容が明らかにデタラメで不当なものであれば、仮に無視して訴訟を起こされても、こちらが不利になるリスクは低くなるかもしれません。
ただ、訴訟を起こされて裁判所から通知が来た場合は、無視せず対応するようにしましょう。
(3)無視せず対応したほうがよい内容証明はあるの?
内容証明は必ず返信しないといけないという法律はありませんが、無視しないほうがいいものもあります。
対応したほうがよい内容証明は、以下のものが挙げられます。
- 事業者から契約の可否を求められる場合
- 商取引の申し込みがある場合
- 遺言による相続財産の受取人になっていて、相続を受けるか否かを選択する場合
このように、受取人の意思表示を求められる内容証明は、無視せず返答したほうがいいでしょう。
(4)早めに弁護士に相談しておく
ご自身で整理できない場合や、整理してみたけれども不安が残る場合には、内容証明を持って弁護士に相談に行きましょう。
内容証明を受け取った方の中には、「裁判を起こされてから、弁護士に相談すればいいのではないか」と考える方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、裁判を起こされてしまうと、裁判のスケジュールに合わせて急いで準備をしなければいけなくなります。
内容証明を受け取った段階であれば、まだ裁判が始まっていないことが一般的ですので、ゆっくりと裁判に備えることができます。
また、内容証明を受け取ってすぐに弁護士に相談していれば、話し合いで解決するかもしれません。
話し合いで解決すれば、裁判所に出向く必要はなくなります。
裁判は時間もお金もかかります。裁判ではなく話し合いで解決できれば、時間とお金の節約になります。
何よりも大きなメリットとしては、「早めに弁護士に相談しておけば、今後相手方との関係が悪化することを防ぐことができるかもしれない」ということです。
裁判になると、お互いに相手を批判、非難し合うことは避けられません。
相手方との関係が悪化するおそれがあります。
しかし、話し合いで解決することができれば、「裁判をしなくて済んだ」ということになり、わだかまりが残らずに済むかもしれません。
以上のように、内容証明を受け取ってすぐに弁護士に相談すると、たくさんのメリットがあります。
裁判を起こされるまで放置するのではなく、内容証明を受け取った場合には、なるべく早い段階で弁護士に相談しておきましょう。
(5)弁護士を交えて相手方と交渉を行う
内容証明を持って弁護士に相談に行くと、弁護士が相手方の主張を整理してくれます。
また、こちらの言い分も法律的に整理して、「どのような権利を主張できるか」、「今後どのような方針を取るべきか」についても、アドバイスをしてくれます。
内容証明に対する返事の方法 としては、「きちんと書面で返事をする」ことが得策です。
もちろん書面は記録に残りますので、慎重に文面を考えなければいけません。
内容証明の返事を出す前に、必ず弁護士に相談しておきましょう。
内容証明の返事を電話で済ませることは危険です。
口頭で話した言葉は記録に残らないため、後になって「言った言わない」の争いが勃発するリスクがあります。
内容証明の返事の作成は、弁護士に依頼することもできます。
返事を書面で出すということは、相手方の手元に文章が残ります。
弁護士に依頼しておけば、弁護士が法的に不利にならないように文章を構成してくれるので安心です。
相手方に内容証明を無視されたらどうしたら良い?
それでは、反対に、あなたが内容証明を送ったのに無視された場合は、どうしたら良いでしょうか?
以下では、「内容証明を無視された場合、どのように対応したら良いか」について解説します。
(1)まずは内容証明に記載した期限まで待つ
内容証明を送る場合、通常文末に回答期限を記載しておきます。
例えば、金銭の支払いを催告する場合には、「本書面到達後2週間以内にお振り込みをしてください」などと記載します。
内容証明を送ると、日本国内であれば2、3日で相手方が受け取ることになりますが、通常は相手方がすぐに動くことはありません。
相手方としても、まずは内容証明を読んで、どうするべきかを数日間は検討するでしょう。
内容証明を送った側としては、相手方からすぐに連絡が無いと心配になりますが、まずは回答期限までは様子をうかがうのが一般的です。
(2)期限内に相手方から回答があった場合
相手方から回答があった場合、どのように対応したらよいでしょうか?
あなたが内容証明に書いた要求を全て相手方が受け入れるのであれば、そこで紛争は終了です。
問題は、相手方が反論してきた場合です。
今後の対策を練らなくてはいけませんので、弁護士に相談に行きましょう。
相手方が内容証明の一部に反論してきた場合でも、必ず弁護士に相談しておきましょう。
一部に反論してきただけであっても、法律的には重要なポイントかもしれません。
例えば、金銭の支払いを請求したケースで、「なるべく早くお金を支払うつもりだが、今は手持ちのお金が無いので、あと半年ほど待ってほしい」と言われることがあります。
このような場合、黙って半年待ってしまうと、半年後に相手方が「そんなことは言っていない」と言い出すかもしれません。
このような事態を防ぐために、きちんと相手方の主張を書面の形で残しておくことが重要です。
金額が大きい場合は、公正証書にまとめておくことも有用です。
以上のように、相手方が一部に反論してきた場合であっても、必ず弁護士に相談しておきましょう。
(3)期限を過ぎても相手方が連絡をしてこない場合
相手方が期限を過ぎても返事をしてこない場合、次の手を考えることが必要となります。
内容証明は手紙の一種なので、相手方が無視したからといって、すぐに相手方の財産を差し押さえるなどの法的に強制力のある手続きを行う効力・効果はありません。
相手方の財産を差し押さえるなどの法的に強制力のある手続きを利用するためには、裁判を起こさなければいけません。
裁判を起こすには、タイミングが重要です。
裁判を視野に入れているのであれば、内容証明の期限を過ぎた段階で、速やかに弁護士に相談しましょう。
「裁判をするかどうか」「裁判をするとしたらいつ裁判を起こすのが良いか」について、弁護士と入念に相談をしましょう。
【まとめ】内容証明を無視したら?されたら?
内容証明は手紙の一種ですので、内容証明が送られてきたからといって、相手の請求に応じる法的義務が生じるわけではありません。
しかし、内容証明を無視すると、相手方が裁判を起こす可能性が高くなります。
裁判を起こされる前に、なるべくお早めに弁護士に相談しておきましょう。
反対に、内容証明を送ったのに無視された場合にも、財産を差し押さえる効力・効果なありません。
裁判を視野に入れている方は、弁護士と今後の方針について相談しましょう。
訴訟における弁護士費用が不安な場合に備えて
弁護士の費用がかかるケースに備えて、弁護士保険に加入しておきましょう。
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弁護士保険に加入しておくことで、予期しない法的リスクに備えるとともに、裁判を起こす際にも必要な費用を抑えることができるので、早期に加入しておくことを強くおすすめします。
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ケース別内容証明のテンプレート集
記事を振り返ってのQ&A
Q:そもそも「内容証明」とは?
A:「郵便局が内容を記録してくれる特別な手紙」です。内容証明の場合は、手紙を差し出す際に、郵便局員が文書の内容を確認して、「手紙にどのようなことが書かれているのか」を記録してくれます。
Q:内容証明の効力・効果とは?
A:時効を中断する効力のある「催告」や、「時効の援用」の意思表示、「解除」の意思表示など。相手が内容証明を送ってきたということは、「相手が本気で裁判を考えている」ということです。
Q:内容証明を無視するとどうなる?
A:内容証明は手紙の一種ですので、内容証明が送られてきたからといって、相手の請求に応じる法的義務が生じるわけではありません。 しかし、内容証明を無視すると、相手方が裁判を起こす可能性が高くなります。 裁判を起こされる前に、なるべくお早めに弁護士に相談しておきましょう。
Q:内容証明を受け取ったら、どうしたら良い?
A:(1)内容証明に書かれている文章をきちんと確認する、(2)早めに弁護士に相談しておく、(3)弁護士を交えて相手方と交渉を行う
Q.返答したほうがいい内容証明はあるの?
A.あります。対応したほうがよい内容証明は、以下のものが挙げられます。
- 事業者から契約の可否を求められる場合
- 商取引の申し込みがある場合
- 遺言による相続財産の受取人になっていて、相続を受けるか否かを選択する場合
このように、受取人の意思表示を求められる内容証明は、無視せず返答したほうがいいで
Q:相手方に内容証明を無視されたらどうしたら良い?
A:(1)まずは内容証明に記載した期限まで待つ、(2)期限内に相手方から回答があった場合には、今後の対策を練らなくてはいけませんので、弁護士に相談に行きましょう。(3)期限を過ぎても相手方が連絡をしてこない場合、裁判を視野に入れているのであれば、内容証明の期限を過ぎた段階で、速やかに弁護士に相談しましょう。
・内容証明郵便の書き方と出し方のルール【文例テンプレート付き】
内容証明郵便は、明確な証拠を残したい場合など、トラブルの予防や解決において、とても有効な手段となることがあります。われわれ弁護士も、相談者のトラブルの予防や解決のために動き出す時、内容証明郵便の作成から始めることが多いです。とはいっても、内容証明郵便は弁護士のように法的な専門家だけが作成できるものではありません。
簡単な書き方・出し方のルールやポイントを押さえれば、あなたも作成できるものです。この記事では、内容証明郵便の書き方・出し方を紹介するとともに、文例のテンプレートについてもご紹介していきます。現在、内容証明郵便をトラブルの相手に送ろうと考え始めているものの、「内容証明郵便の細かい書き方や出し方などのルールがイマイチわからない」「自分が遭遇しているトラブルで内容証明郵便が使えるのかを知りたい」とお考えの方の参考になれば幸いです。
※安易に内容証明郵便を送ってしまったために、相手の逆鱗に触れてしまったり、逆に不利な証拠を与えてしまった、という事例もあります。不安なことがある場合はできることなら、一度弁護士に相談してから作成することをおすすめします。
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