ネットでオークション詐欺に遭ったら、速やかに相手に対して契約の取消や代金の返還請求をしなければなりません。
そのとき、証拠を残すために内容証明郵便によって請求書を送る必要があります。
また、内容証明郵便によって相手にプレッシャーを与え、返金に応じさせやすくなる効果も期待できます。
しかし、具体的にどのような内容を記載すれば良いのか、わからないという方もいらっしゃるでしょう。
以下では、オークション詐欺の相手に対して内容証明郵便を送るときの書き方と、テンプレートをご紹介します。
なお、内容証明の細かいルールは「内容証明郵便の書き方とルール」にてご確認下さい。
文例・テンプレート
前略 私は、平成〇〇年〇月〇日、インターネットオークションサイト「〇〇」にて、貴社ご出品にかかる〇〇(商品名・メーカー名・型番。以下「本件商品」と言います。)を金○○万円にて落札し、その後貴社に対し、上記商品を購入する旨の連絡を行いました。そして同年同月○○日、お約束とおり、本件商品の代金を貴社ご指定の銀行口座に振り込む方法にて、お支払いしました。
貴社とのお約束によると、貴社は私による代金支払後〇〇日以内に本件商品を発送し、私に対し、その引き渡しをすることになっていましたが、貴社は本件商品の発送を行っておりません。私は再三にわたって本件商品の引き渡しを請求いたしましたが、貴社はまったく応じていない状況です。
こうした貴社のご対応は、民事上の債務不履行になることはもちろん、刑法上の詐欺罪(刑法246条1項)に該当する可能性もある悪質なものです。
そこで、私は、本書面をもって、貴社との本件商品の売買契約を解除します。
つきましては、本書到着後1週間以内に、私が本件商品の代金としてお支払いしました金〇〇円のご返還をいただけますよう請求しますので、上記金額を、下記の私名義の口座宛に送金する方法にてお支払い下さい。
万一上記期間内にご返金を頂けない場合、詐欺罪(刑法246条1項)にもとづく刑事告訴や民事訴訟等の厳重な法的措置をとる可能性がありますので、予めご了承下さい。記○○銀行○○支店
口座の種類 普通預金
口座番号 ○○○○○○
口座名義人 ○○○○○○
オークション詐欺の相手に内容証明を作る際のポイント
インターネットオークションでは、詐欺が行われることが非常に多いです。
この場合、売買契約が成立し、こちらが代金を支払ったにもかかわらず、約束した日までに商品が送られていないため、相手は債務不履行の状態となっています。
まずは、相手に商品を送るように再度請求します。
それでも、相当な期間が経過しても相手が全く商品を送ってこないのであれば、こちらは契約を解除することができます。
契約を解除したら、契約は初めからなかったことになるので、相手から支払い済みの代金を返金してもらうことができます。
そこで、オークション詐欺に遭った場合、内容証明郵便内には「相手方が必要な債務の履行をしていないこと(商品の発送をしていないこと)」「相手に債務の履行を催告した後、相当な期間が経過したこと」「売買契約を解除すること」「支払い済みの代金を請求すること」を記載しなければなりません。
また、返金先の口座の表示も必要です。
ここが抜けてしまうと、相手から「支払いたくても支払えなかった」などと言われるおそれもあります。
さらに、オークション詐欺は刑法上の犯罪(詐欺罪)に該当する可能性があります。
相手が支払に応じない場合には、刑事告訴する可能性もあることを書くと良いでしょう。
実際に、オークション詐欺に遭った場合に警察に被害届や告訴状を出そうとすると「内容証明郵便による通知書をもってきて下さい」と言われることがあります。
警察でも、内容証明郵便を証拠として取り扱っているためです。
また、オークションサイトで未着トラブル御見舞制度などが用意されていることがありますが、それを利用するためにも、やはり内容証明郵便による解除通知や督促が必要です。
なお、相手が悪質な人ではなく、単に遅れている場合や忘れている場合などには、内容証明郵便を送ることによって、相手が驚いて商品を送ってくれたり、代金を返金してくれたりすることもあります。
内容証明郵便による解除通知や督促は、相手が詐欺業者であってもなくても有効な対処方法となります。
まとめ
今回は、内容証明郵便によって、オークション詐欺の相手に通知書を送る方法をご紹介しました。
内容証明郵便を使うと、オークション詐欺の被害に遭ってしまった状況でも、解決につながることがあります。
また、後に訴訟となったときにも利用できる可能性があるので、状況の打開のためには非常に役立つツールと言えます。
ただし、通知書内にはきちんと必要な内容を過不足無く記載しておく必要もあります。
今回のご紹介例を参考にして、内容証明郵便を上手に使い、オークション詐欺への対処に有効な通知書を作成しましょう。
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福谷 陽子(元弁護士)

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