離婚時に養育費を支払ってもらう約束をしていても、その後支払いが止まってしまうケースが非常に多いです。
そのような場合には、まずは相手に支払いをするように言うものですが、相手が無視する場合や連絡がとれない場合には、内容証明郵便を使って養育費の支払い請求書を送る方法が効果的です。
ただ、「内容証明郵便」と言われても、具体的にどのような文面にしたら良いかわからない、ということもあるでしょう。
今回は、相手が養育費を支払わない場合に、内容証明郵便を使って支払い請求する方法を、テンプレートと共に解説します。
尚、内容証明の細かいルールは「内容証明郵便の書き方とルール」にてご確認下さい。
こんな疑問にお答えします
A.内容証明郵便には、「差出人の氏名・住所」「差出日」「相手方の氏名・住所(相手が法人の場合は社名・住所・代表名)」「文書の表題(養育費支払い請求の場合は催告書)」「通知内容」を記載しましょう。内容証明郵便を送付しても相手が支払いに応じない場合は、調停・審判へと移行できます。
養育費は子どもの未来をつくる上で重要なお金であり、相手は支払う義務があります。支払いが滞ってしまうと、親権者の生活に負担もかかってしまいます。
もし、養育費に関する不安を抱えているのであれば、専門家へ相談するようにしましょう。
養育費を請求する内容証明郵便の書き方
まず、内容証明の書き方を解説します。
養育費を請求するには、内容証明郵便に必要な項目を記載する必要があります。
内容証明郵便に記載すべき内容
内容証明郵便には、以下のことを必ず記載しましょう。
内容証明郵便の記載必須事項
- 差出人の氏名・住所
- 差出日
- 相手方の氏名・住所(相手が法人の場合は社名・住所・代表名)
- 文書の表題
- 通知内内容
文書の表題はシンプルかつ明確に記載しましょう。養育費請求の場合は「催告書」と書くのが一般的です。
文書には、相手に養育費を支払う義務があることや支払いが滞っていること、今回の通知は支払いを求めるものであることも記載します。
ここで注意しなければならないのは、脅迫文書にならないよう事実だけを述べることです。例えば、「支払わないと命の危険があるぞ」「このままだと勤め先に嫌がらせするぞ」といった文言を加えてしまうと、恐喝行為と見なされ不利となります。
文字数・行数に注意
内容証明では、文字数や行数が制限されているので注意が必要です。縦書き・横書きそれぞれで異なるため、以下を参考に作成しましょう。
縦書きの場合の字数・行数の制限
行20字以内で、1枚26行以内
横書きの場合の字数・行数の制限
1行20字以内、1枚26行以内
1行13字以内、1枚40行以内
1行26字以内、1枚20行以内
このように、内容証明郵便は厳格なルールが決まっています。内容を訂正する際も都度押印が必要となるので、手順に沿って作成しましょう。
内容証明郵便のルールについて更に詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
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文例・テンプレート
一例として、実際に作成するためのテンプレートを紹介します。養育費の内容証明を作成するための参考にしてみてください。
前略 私は、あなたと平成〇〇年〇月〇日、協議離婚しましたが、その際、あなたは私とあなたとの間の子〇〇及び〇〇が成人するまで、1人あたり毎月3.5万円、計7万円の養育費を支払い続ける旨、約束されました。
ところが、その後、あなたは平成〇〇年〇月以降の養育費を一切お支払いされていません。そこで、私はあなたに対し、本書をもって、現在にいたるまでの滞納養育費合計〇〇円及び、今後毎月7万円ずつの養育費の支払いをご請求いたします。
つきましては、本書面到達後1週間以内に、上記金額を下記の私名義の口座あて送金する方法にて、ご入金ください。万一ご入金が確認できない場合には、家庭裁判所における養育費請求調停などの法的手続きを取る予定ですので、お含みおき下さい。
草々
記○○銀行 ○○支店
普通預金 口座番号 ○○○○○○○
口座名義人 ○○○○○○○以上
養育費を請求する内容証明を作る際のポイント
養育費請求を内容証明郵便によって行う目的は、元夫に対し、精神的プレッシャーを与えることです。
養育費の支払をしていない人でも、内容証明郵便によって請求をされたら、事が大きくなることを嫌がって支払いをしてくる人がいます。
また、後に調停や審判になったときに内容証明郵便があると、その時点で養育費の請求をしたことの証拠として使うことができます。
また、調停や審判で養育費の金額を決めるときに、内容証明郵便による請求時からの遡及分を認めてもらえる可能性も出てきます。
一般的には、養育費の支払い請求が認められるのは、養育費請求の調停申立時からになります。
これに対し、先に内容証明郵便で請求しておけば、内容証明郵便における請求時から調停申立時までの分についても支払い命令が出るので、その分多く養育費を支払ってもらえることが期待できます。
ただ、内容証明郵便を送っても、相手が無視するケースがあります。
その場合には、早めに養育費調停を起こすことをお勧めします。
調停を申し立ててから解決するまでにはそれなりの時間がかかるからです。
調停申立後、実際に支払いを受けられるまでには、約3、4ヶ月程度は見ておいた方が良いでしょう。
すでに離婚公正証書があり、養育費の支払についての定めがある場合には、養育費請求調停をしなくても、いきなり相手の財産を差し押さえることが可能です。
その際には、「家庭裁判所で養育費請求調停などの法的手続きをとる」とは記載せず、「あなたの給料を差し押さえる可能性がある」などと記載します。
このように書いておくと、相手も焦って自ら支払いをしてくるケースが大半です。
そして、既に養育費の支払についての合意が記載された公正証書があるなら、早めに強制執行をしてしまうと良いでしょう。
相手がサラリーマンの場合には、毎月の給料を差し押さえる方法がもっとも効果的です。
給料を差し押さえると、相手が会社を辞めない限り、毎月確実に取り立てができますし、賞与からの取り立てもできるのです。
また、相手が会社員ですと、給料の差押えをされると会社にも知られてしまう上に、社内での立場を心配するので、給料差押えをされると「自分からきちんと支払うから、差押えを取り下げてほしい」と申し出てくることも多いです。
そのような場合には、実際にきちんと支払ってもらえるならば、取り下げをすることもできます。
相手がサラリーマンではない場合や勤務先がわからない場合には、預貯金や生命保険などを差し押さえると良いでしょう。
まとめ
今回は、離婚した相手が養育費を支払わないときに、内容証明郵便を使って支払い請求する方法をご紹介しました。
養育費請求をするときに内容証明郵便を使うと、相手がプレッシャーを感じて支払いに応じてくることも多いので、大変効果的です。
ただ、内容証明郵便を送っても無視されたり、支払いを受けられなかったりする場合には、早めに養育費調停を申し立てると良いでしょう。
離婚時に離婚公正証書を作っていた場合には、早めに相手の給料や預貯金などを差し押さえるのが得策です。
今回ご紹介した方法を参考に、きちんと子どもが成人するまで確実に養育費を支払ってもらえるように対処しましょう。
また、養育費に関するトラブルが起きた際は弁護士への相談もおすすめです。
養育費は子どもの未来をつくる上で重要なお金であり、相手は支払う義務があります。支払いが滞ってしまうと、親権者の生活に負担もかかってしまいます。
弁護士へ相談することで、適切に請求・回収ができ生活を保護できます。
養育費を受け取れずに悩んだ場合は、弁護士への相談も視野に入れると良いでしょう。
弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用の負担をしてくれるので助かります。
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記事を振り返ってのQ&A
Q.養育費を請求するために内容証明郵便に何を記載すればいいですか?
A.内容証明郵便には、「差出人の氏名・住所」「差出日」「相手方の氏名・住所(相手が法人の場合は社名・住所・代表名)」「文書の表題(養育費支払い請求の場合は催告書)」「通知内容」を記載しましょう。
Q.内容証明を作成するときの注意点はありますか?
A.まず、脅迫文書とならないよう注意しましょう。〇〇しないと不利益をもたらすぞ、など相手を脅す内容は恐喝と見なされてしまいます。
Q.内容証明を出すことでどんな効果が期待できますか?
A.内容証明を出すことで、相手に精神的プレッシャーを与えられます。また、後に調停や審判になった際に、内容証明郵便があることで養育費の請求をした証明として扱えます。
Q.内容証明郵便を送っても相手が支払いに応じないときはどうすればいいでしょうか?
A.その場合は、早めに養育費調停を申し立てましょう。調停を申し立ててから支払いが受けられるまで3ヶ月以上かかると想定されます。養育費は子どもと親権者の生活にも関わることなので、早めに行動するようにしてください。
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